「ドローンを仕事にしたい」という声が、昨今ますます高まっています。ドローンの魅力は、技術の進歩とともに増大し、その可能性に多くの人が夢を抱いています。一方で初心者でもドローンを始めれば簡単にお金を稼げるようになる、といった誤った解釈が広がっているのも事実。本稿では、海外を中心に副業ドローンパイロットの仕事をしている筆者自身の意見を交えながら、ドローンビジネスの現実を正直にお伝えし、夢と現実のギャップに対する理解を深められるよう綴って参りたいと思います。
ドローンを仕事にしたい
「ドローンを仕事にしたいからドローンを始める」という初心者のスタートは、非常に多く見受けられます。ドローンに興味を持ってくれることは、一パイロットとして嬉しい限りです。しかし、ドローンを仕事にするという理想を持つだけでは、その道の厳しさに直面することになるかもしれません。
初心者にありがちな誤解の一つは、ドローンを手に入れただけで成功が約束されると考えることです。ドローンの操作技術はもちろん、ビジネスとして成り立たせるためには、営業、マーケティングや法規制、保険など多岐にわたる知識と経験が必要です。このような現実を知らずにスタートすると、夢見た未来とのギャップに苦しむことになるでしょう。
現代版、シニアの蕎麦打ち?
ところで、かつて「おじさんは定年後なぜそばを打ちたがるのか」というコラムが流行しました。高度経済成長を支え、定年後に第二の人生を楽しもうとするシニアたちの多くが、なぜかやたらと退職金で蕎麦屋を開業したがるという現象について触れられる中で、多くのシニアたちは漠然とした自信だけを頼りに大切な退職金を投じてお店を開き、その後結局先の見えない蕎麦屋運営に限界を感じて店を畳む羽目になっている、という悲しい現実を突きつけています。
少しは無し話が脱線しましたが、実はドローンビジネスに関して私自身に寄せられる相談の多くが、定年前後の準シニア~シニア世代によるものばかりです。中には、ドローンを片手にFIREしたいなんて声も。「定年後の蕎麦屋開業」現象の令和版こそが、ドローンビジネスに挑むシニアたちにも見受けられると言えるでしょう(もっとも、蕎麦屋開業と比較して、初期投資リスクは格段に低いと言えますが)。
無線技術に慣れ親しみ、手先の器用さや技術への興味を持つシニア世代は、ドローンに対する関心も高いです。しかし、ドローンビジネスにおいては、単に技術があれば成功するわけではありません。市場の動向や競争の激しさ、そして顧客ニーズを的確に捉える能力が求められます。シニア世代が「第二の人生をドローンで謳歌したい」と考えるのは素晴らしいことですが、そのためには現実的なビジネスプランと柔軟な思考が必要です。
ドローンビジネスは既に飽和状態
ドローンビジネスは、その急速な成長とともに多くの人が参入してきました。しかし、その結果として、ドローン業界は既に飽和状態にあります。新規参入者が直面する最大の課題は、この競争の激しさです。
空撮サービスや測量、農薬散布など、一般的なドローンビジネスの分野は既に多くの企業や個人が参入しており、新たな差別化が難しい状況です。市場の飽和状態を打破するためには、他と異なる付加価値を提供することが求められます。
ドローンビジネスの多様性
ドローンビジネスと一口に言っても、その分野は多岐にわたります。空撮、測量、農薬散布、狩猟、害獣駆除、商社、スクール運営など、様々な分野が存在します。各分野にはそれぞれの専門知識と技術が求められます。
例えば、空撮ビジネスでは、美しい映像を撮影するための技術とともに、編集スキルも重要です。測量や農薬散布では、正確なデータ収集と分析能力が不可欠です。営業力などのビジネスセンスはもちろんのこと、狩猟や害獣駆除では、動物行動の理解や適切なドローン操作が求められます。商社やスクール運営では、マーケティングや教育のスキルが必要です。
このように、ドローンビジネスは多様であり、自分がどの分野で何をしたいのかを明確にすることが重要です。
オリジナリティと専門性が大事
ドローンビジネスで成功するためには、オリジナリティと専門性が非常に重要です。他と差別化するためには、自分だけの強みや特化したスキルを持つことが必要だと言えます。また、特定の地域に特化したビジネスを営むことで、競争が少ない地域でのビジネスチャンスを得ることができるかもしれません。
しかし、このような戦略を取るためには、それ相応の覚悟と努力が求められます。市場のニーズを把握し、場合によっては骨を埋める覚悟で移住をし、自分のビジネスモデルを常に見直し、改善する姿勢が必要です。また、技術の進歩に伴い、新しい知識やスキルを習得することも欠かせません。
ドローンは趣味で使用するだけでも十分楽しい
これからドローンを始めようと考えている方々に対して伝えたいのが、ドローンは趣味で使用するだけでも十分に楽しいものであるということ。美しい風景を空から撮影したり、自分だけの映像作品を作り上げたり、など友人や家族と楽しんだりすることができます。趣味としてドローンを操縦することは、純粋な喜びと達成感をもたらし、技術の進歩を実感することができます。
また、趣味としてドローンを楽しむうちに、自然と技術や知見、そしてビジネス感覚が養われていくことがあります。日常的にドローンを操作することで、操縦技術が向上し、映像編集やデータ分析のスキルも磨かれます。さらに、ドローンに関する法規制や市場動向についても理解が深まることでしょう。
このような過程を経て、趣味が高じてビジネスに繋がる可能性も十分にあります。最初は楽しみとして始めたドローン操作が、次第にプロフェッショナルなスキルとなり、やがては仕事として成り立つようになることも珍しくありません。趣味から始めることで、ビジネスとしてのドローンに対する理解が深まり、現実的な視点で自分の可能性を見極めることができるのです。
いかがでしたでしょうか
ドローンビジネスは夢を追いかける魅力的な世界ですが、その背後には数多くの現実が存在します。初心者やシニア世代がドローンビジネスに挑戦する際には、理想と現実のギャップを理解し、現実的なビジネスプランを持つことが重要です。市場の飽和状態や競争の激しさを乗り越えるためには、オリジナリティと専門性を持ち続けることが求められます。皆様がドローン市場の現状を十分理解した上で、ドローンビジネスの多様性を理解し、自分自身の強みを活かして、成功への道を歩んでいくことを願っています。
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