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形そのままに現存する古代の円形軍港—カルタゴ「Punic Ports」遺構を巡る旅【チュニジア旅行記】

古代カルタゴのシンボル、円形軍港
https://www.romanports.org/

カルタゴの円形軍港。世界史の教科書でその独特なドーナツ状の形を目にしたことがある人も多いだろう。その形は、かつて地中海を制覇したカルタゴ帝国の象徴として歴史の記憶に刻まれている。歴史に詳しくない人でも、この軍港の形は印象的で、頭の片隅に残っているのではないだろうか。

そんな古代カルタゴの軍港が、今もなおその輪郭をとどめ、チュニス郊外にひっそりと存在しているという話を耳にし、現地を訪れることにした。

出発前のひとときと道中の風景

Carthage Hannibal駅周辺は意外にもサードウェーブコーヒー店が並ぶ

Carthage Hannibal駅から歩いて港へ向かう前、まず駅付近にあるお洒落なカフェで一息ついた。モダンで洗練された内装のカフェで、現代的なコーヒー文化が静かに息づいている。豊かなアロマが漂う中、アイスコーヒーを味わいながら、これから向かう軍港の歴史を想像して心が高鳴るのを感じた。

コーヒーでリフレッシュした後、港へと向かって歩き出す。駅からおよそ7分の道程だが、その道中には、名もなき古代カルタゴの遺構がいくつも点在している。風化した石積みや壊れた柱が道端にぽつりぽつりと残っており、現代の街並みにさりげなく溶け込んでいるのが印象的だった。歴史が日常の風景の一部として存在しているこの地域ならではの独特の空気感が漂っている。

静寂の中の軍港

地上からの写真のため伝わりづらいが、今でもドーナツ型の輪郭は健在だった。

現地に到着すると、まずその静寂に心を打たれた。かつては軍事拠点として多くの兵士や艦船がひしめいていたであろうこの場所が、今では穏やかな漁港として佇んでいる。透き通るような青空の下、波は静かに港を撫で、数隻の青色のボートが揺れるだけだ。そこには、釣り人が腰かけてのんびりと魚釣りを楽しむ姿も見られる。この場所に流れる時間は、まるで過去の喧騒を封じ込めたかのように、ゆっくりとしたものであった。

現在はすっかり地元民憩いの釣りスポットに。

この穏やかな風景を見ながら、かつての軍港がどれほど壮大であったかを想像せずにはいられない。ここでかつて準備が進められていた戦闘、命を賭けた航海、そして野心に満ちたカルタゴの兵士たちの姿が、今もこの静寂の中に影のように残っているように感じられる。

岸には小型のボートが何隻も停っている。

時を超えて残るカルタゴの輪郭

かつての司令部に代わり、現在は小ぢんまりとした海洋生物博物館が佇むドーナツ中央部

現在、この場所は「Carthage Punic Ports」として知られている。だが、他の観光地、例えばアントニヌスの大浴場やカルタゴの劇場と比べると、整備はほとんど進んでおらず、遺跡の大部分は消え去っている。それでも、ドーナツ型の輪郭はしっかりと残り、古代の栄光を静かに語り続けている。

港の周囲には緑が生い茂り、かつての隠しドックの名残を想像するのは難しい。それでも、今もなおこの場所に立つと、時を超えた歴史の響きが耳元で囁くような感覚に襲われる。周辺に広がる住宅街との対比が、その異世界的な雰囲気をさらに引き立てているようだ。日常と歴史が交錯するこの地で、かつてのカルタゴの栄光を垣間見るのは、まさに時空を超えた旅である。


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また、この円形軍港がチュニジアの2ディナール硬貨に描かれているのは、地元の人々にとってこの場所が特別な意味を持っている証だ。訪れる観光客は少ないが、この港がチュニジアの歴史とアイデンティティを象徴する重要なシンボルであることに変わりはない。静かでありながら、その背後にある歴史の厚みを感じさせる場所である。

地中海へと続くカルタゴの海

歩みを北に進めると、海の青さと猫の多さに驚かされる

港から少し北へ進むと、目の前に広がるのは紺碧の地中海だ。どこまでも続く水平線が、青空と溶け合うように広がり、かつてこの海を支配したカルタゴの船団がこの場所から旅立って行ったのだと、胸が熱くなる。この穏やかな海を見つめていると、かつてのカルタゴ帝国の船たちが、この場所から広い世界へと旅立ち、新たな交易路を開拓し、あるいは敵との戦に挑んでいた姿が目に浮かんでくる。

地中海に面したこの海域は波も高い。それでも元気に泳ぐ地元民の姿からは、かつて猛威を奮ったカルタゴ軍のDNAを感じる。

地中海の大海原を前に立ち、遙か昔の野心や希望、そして戦の記憶が波と共に押し寄せる。今、この地は地元のチュニジアンたちが海水浴を楽しむ穏やかなビーチだが、その背後には歴史が静かに息づいている。21世紀の現在、商業や政治の中心はチュニスに移ったが、カルタゴの海は今もチュニジア人の心を満たし続け、古代の栄光を思い起こさせる。

まとめ

カルタゴの円形軍港は、時を超えた歴史の象徴として今もなおその輪郭を保っている。現在は静かな漁港としての役割を果たしているが、そのドーナツ状の形には、かつての壮大な歴史が息づいている。もしこの地を訪れる機会があるなら、古代の遺構に触れながら、かつてこの港から地中海の大海原へと旅立った船団の姿に思いを馳せてほしい。この場所が今も歴史と現代を繋ぐ生きた遺産であることを、きっと実感できるはずだ。

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