北アフリカの宝石とも呼ばれるチュニジア。地中海に面したこの国は、古代カルタゴの遺跡や壮大なサハラ砂漠など、数々の魅力で溢れています。しかし、この国を訪れた際、私が最も心を奪われたのは、意外にも一つの果実でした。そう、サボテンのフルーツなのです。
砂漠の過酷な環境に耐え、鮮やかな色彩と爽やかな味わいを纏ったこのフルーツは、チュニジアの人々の知恵と、自然との共生を象徴しているかのようでした。今回は、この驚きの発見から始まった、チュニジアでのサボテンフルーツとの出会いと冒険の物語をお届けします。
チュニジアで最も人気のフルーツ、サボテン
チュニジアの街を歩いていると、至る所でその姿を目にします。鮮やかな黄色や深い赤色に輝く楕円形の果実。最初は何かわからず、好奇心に駆られて近づいてみると、それがサボテンの実だと知って驚きました。
私たちが普段目にするサボテンといえば、とげとげしい姿を思い浮かべるでしょう。しかし、チュニジアの食用サボテンは全く異なる姿をしています。丸みを帯びた葉(実際は茎が変形したもの)の上に、宝石のように美しい実がなっているのです。
現地の人々はこのフルーツを「ハンディア」と呼び、夏の暑い日々の癒しとして愛しています。市場では、色とりどりのハンディアが山積みにされ、人々の目を楽しませていました。その光景は、まるで砂漠に咲いた花畑のようでした。
チュニス旧市街(メディナ)での体験
チュニスの旧市街、メディナを訪れたのは、灼熱の太陽が街を焼き尽くすかのような真夏の日でした。迷路のような狭い路地を歩き、歴史ある建物や活気あふれる商店街に目を奪われながら、ふと立ち寄ったのがメディナの中心にあるスークでした。
色とりどりの香辛料や手織りの絨毯、きらびやかな装飾品の間を縫うように歩いていると、地元の商人がサボテンの実を勧めてくれました。彼の勧めで初めてサボテンフルーツを口にする機会を得たのです。
独特の味わい
皮をむいたつるっつるのサボテン。恐る恐る口に運んだその瞬間、予想外の味わいに目を見開きました。舌の上に広がるのは、アロエのようなみずみずしさと、ほのかな甘みを帯びたメロンのような風味。そして、どこか懐かしさを感じさせる不思議な後味。
この小さなフルーツの中に、チュニジアの歴史と文化が凝縮されているような気がしました。灼熱の太陽の下、砂漠を旅する人々がこのフルーツでのどの渇きを癒してきた光景が目に浮かびます。その瞬間、私はこの国の人々と自然との深い絆を感じ取りました。
意外な事実:至る所に自生する食用サボテン
スークでの出会いをきっかけに、チュニジア滞在中、私はサボテンフルーツの虜になってしまいました。そして驚いたことに、一度その存在を知ってしまえば、食用サボテンが至る所に自生していることに気づいたのです。街の路地裏、古代遺跡の近く、そして地中海に面した断崖絶壁。チュニジアの多様な風景の中に、常にサボテンの姿がありました。それは、この国の強さとしなやかさを象徴しているかのようでした。
特に印象的だったのは、美しい白と青の街並みで有名なシディ・ブ・サイドでの経験です。丘の上にある街から、365段の階段を下ってビーチに向かう「365 Steps」と呼ばれる道。その道中で、野生のサボテンの群生に出会ったのです。
地中海の眩しい青と、白い建物のコントラストを背景に、鮮やかな緑のサボテンの先に黄色い実がなっている様。そんな光景は、まさに絵画のようでした。思わずカメラを構えながら近づいていった私は、しかし、ここで重要な教訓を学ぶことになるのです。
要注意:触れる前に考えて
シディ・ブ・サイドの美しい景色に魅了され、うっかりサボテンに手を伸ばしてしまった瞬間、鋭い痛みが指先を走りました。
一見無害に見えるサボテンの実や葉には、実は大きなトゲ以外にも、目に見えないほど細かいトゲが無数についているのです。触れただけで、これらのトゲが手の皮膚に入り込み、長時間チクチクと不快な痛みが続くことになりました。
美しさに目を奪われ、自然に対する敬意を忘れた代償は小さくありませんでした。チュニジアの自然は美しくも、時に過酷です。この経験は、異国の地での慎重さの重要性を、身をもって教えてくれました。
トラブル時の対処法
帰国後、サボテンのトゲが刺さった際の対処法について調べてみました。幸いなことに、サボテンのトゲには毒がないため、生命に関わるような深刻な事態にはなりません。しかし、傷口から感染症が入る可能性もあるため、本来ならば可能な限り早めに医療機関を受診することが推奨されているようです。
興味深いことに、肌のターンオーバーに合わせて、トゲが自然と出てくることもあるそうで、私の場合も1週間ほど経つと痛みはほとんど感じなくなりました。この経験は、チュニジアの自然の厳しさと、同時に人間の体の不思議さを教えてくれた貴重な思い出となりました。
まとめ:砂漠の宝石が教えてくれたこと
チュニジアでのサボテンフルーツとの出会いは、単なる食体験を超えた、深い文化的洞察をもたらしてくれました。鮮やかな色彩と爽やかな味わいを持つこのフルーツは、チュニジアの人々の知恵と、厳しい環境に適応する自然の驚異的な能力を象徴しています。同時に、その隠れたトゲは、美しさの中に潜む危険を警告してくれるかのようでした。
旅行者として異国の地を訪れる時、私たちは常に敬意と慎重さを持って接する必要があります。しかし同時に、その土地ならではの体験に心を開くことで、思いがけない発見と学びが待っているのです。チュニジアのサボテンフルーツは、まさにその国の縮図でした。外見の美しさ、内なる甘美さ、そして触れる際に必要な注意。これらすべてが、チュニジアという国の奥深さを物語っています。
皆様も、チュニジアを訪れる機会があれば、ぜひサボテンフルーツを試してみてください。その一口に、砂漠の風と地中海の潮風、そして何千年もの歴史が詰まっているはずです。
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