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新疆・ウルムチ最大の市場「国際大バザール」でウイグル流の週末を楽しんでみた【シルクロード旅行記】

凍てつく空気が頬を刺す冬の午後、私は中国新疆ウイグル自治区省都ウルムチ(烏魯木斉)にある「新疆国際大バザール(新疆国際大巴扎)」の入り口に立っていた。烏魯木斉新十景の一つに数えられるこの市場は、シルクロードの面影を今に伝える貴重な観光スポットだ。今回は、そんな新疆国際大バザールでの体験談をお届けする。

氷点下のオアシス都市

ウルムチは中国の中でも中央アジアの内陸部に位置する、人口300万人超の大都市である。「到達不可能極」にも近いことから、海から最も遠い大都市としても知られ、その独特な地理的位置づけが、この街の文化や雰囲気にも大きな影響を与えている。

訪れた真冬のシーズン、街の気温は氷点下20度近くまで下がることもある。乾燥した大陸性気候特有の寒さは、想像以上に厳しい。しかし、この極寒の地でも、人々の暮らしは活気に満ちていた。

エキゾチックな建築との出会い

国際大バザールに近づくにつれ、まず目に飛び込んでくるのは、威風堂々とそびえ立つイスラム建築様式の建物だ。特に印象的なのは、空に向かってまっすぐに伸びる円筒形のミナレット(尖塔)。その姿は、まるで中央アジアの歴史絵巻から抜け出してきたかのようだ。

バザールの外では、思いがけない光景に出会った。地元のウイグルの人々が大きな輪を作り、伝統的な踊りを楽しんでいるのだ。鮮やかな民族衣装をまとった踊り手たちの動きは実に優雅で、思わず足を止めて見入ってしまう。「ここは確かにシルクロードの地なんだ」という実感が、急に胸に込み上げてきた。

バザールの内部へ

いよいよバザールの内部に足を踏み入れる。屋内はアーケード式になっており、天井からこぼれる自然光が通路を優しく照らしている。

その雰囲気は、中東のスークに似ているようで、どこか違う。確かにイスラム文化の要素は色濃く残っているものの、随所に中国的な要素も見受けられ、両者が絶妙なバランスで融合している。これぞまさに、シルクロードならではの文化的交差点という趣だ。

豊かな商品の数々

通路の両側には、所狭しと店が並ぶ。特に目を引くのは、色とりどりのドライフルーツやスパイスを扱う専門店の数々。山盛りにされた干しぶどうやナッツ類、そして見たことのない珍しいドライフルーツの数々が、私の好奇心をくすぐる。

店の看板やメニューは、すべて中国語とウイグル語の両方で表記されている。この二言語併記もまた、この地域の特徴的な文化の表れだろう。

ある店の前で足を止める。そこには、実に美しい装飾が施されたナイフが展示されている。伝統的な製法で作られたというそれらの刃物は、まさに芸術品と呼ぶにふさわしい出来栄えだ。思わず手に取って購入したい衝動に駆られるが、残念ながら飛行機への持ち込みは難しそうだ。ただ写真に収めることで諦めることにした。

伝統工芸との出会い

バザールの奥へと進むと、雰囲気が少し変わってくる。ドライフルーツやスパイスのエリアから、民族衣装やカーペットを扱う区画へと移り変わるのだ。特に目を引いたのは、色鮮やかな模様が織り込まれたウイグルカーペットの数々。

壁一面に展示された大小様々なカーペットの中から、手荷物として持ち帰れそうな小さめのものを物色することにした。店主との価格交渉を経て、気に入った一枚を購入することに。ただし、決済方法には少々苦労した。AliPayはもちろん、現金すら使えない店舗が多く、事前に用意しておいた銀聯カードが唯一の救いとなった。旅の教訓として、決済手段の確認は必須だと痛感する出来事だった。

怪しいタブレット

バザールの外周部に出ると、雰囲気が一変する。ウイグルパンや様々な軽食を売る屋台が軒を連ねる活気あふれる通りが現れた。その中で、ふと目に留まったのが、日本のラムネに似た形をした不思議なお菓子だった。

よく見ると、それぞれのタブレットラクダや羊などの動物のデザインが施されている。好奇心をそそられていると、ウイグル人の店主が、笑顔で味見を勧めてくれた。言葉は通じなくても、その親切なジェスチャーに心が和む。

恐る恐る口に運んでみると、想像以上の美味しさに驚いた。素朴な甘みの中に、濃厚なミルクの風味が広がる。店主の説明によれば、これらは各動物のミルクを原料としたミルクタブレットとのこと。その独特な味わいにすっかり魅了され、大量に購入することにした。家族や友人へのお土産にも最適だと確信した。

夜の賑わい

日が沈むと、バザールはまた違った表情を見せる。通りに並ぶ串料理や卵料理の屋台が、次々と明かりをともし始める。香ばしい匂いに誘われ、ついつい立ち止まってしまう。

特筆すべきは、夜になっても衰えることのない地元の人々の熱気だ。昼間から続くダンスの輪は、むしろ夜になってさらに活気を増しているように見える。極寒の気候も、彼らの踊る情熱を少しも冷ますことはできないようだ。

私は温かな料理を手に、踊り続ける人々の輪を眺めながら、この異国の地での思いがけない出会いに思いを馳せた。寒さで凍えそうな体も、美味しい料理と人々の温かさで、しだいにほっこりとしてくる。

ウイグルの民は、昼も夜も笑顔で踊っていた。

帰路に着いて

バザールを後にする頃には、すっかり日が暮れていた。購入したカーペットとミルクタブレットの入った荷物を手に、最後にもう一度振り返る。建物を照らすライトアップが、昼間とはまた違った幻想的な雰囲気を醸し出している。

この国際大バザールでの一日は、単なる観光地めぐりではない、深い文化体験となった。ウイグルの人々の陽気さ、伝統工芸の美しさ、そして独特な食文化との出会い。これらすべてが、忘れがたい思い出として心に刻まれることだろう。

極寒の冬のウルムチで、私は温かな人々との出会いに恵まれ、シルクロードの歴史が今なお息づく街の魅力を存分に味わうことができた。言葉の壁を越えて交わされた笑顔と、心温まるもてなしの数々。それらは、きっと生涯忘れることのない思い出となるに違いない。

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