定番ツアーはもう飽きた?ローカル旅行情報発信サイト「コスパトラベル」

パッケージツアーやガイドブックに頼った旅行に飽きてしまった大の旅行好きの方々向けに、ローカルでコスパの良い旅行プランをまとめたポータルサイト

シルクロード名物?楼蘭からほど近いクムタグ砂漠へ旅してきた【新疆旅行記】

日本のお隣中国にも、アラビアに負けない広大な砂漠が広がっているのをご存知ですか?

凍てつく風が砂丘を吹き抜けていく日。私が訪れたのは、新疆ウイグル自治区東部に広がるクムタグ砂漠。かつて楼蘭王国が栄えたこの地には、今も果てしない砂の大地が横たわっています。今回は、そんなクムタグ砂漠(庫姆塔格沙漠)への訪問レポートを綴っていきます。

シルクロードの記憶を受け継ぐ町・鄯善

かつてシルクロードの要所として栄えた古代都市楼蘭。現在は鄯善と名前を変えている。

クムタグ砂漠への玄関口となるのは、鄯善(シャンシャン)という小さな町です。人口わずか数万人のこの町は、古代楼蘭の歴史を受け継ぐ場所として知られています。紀元前から3世紀頃まで、シルクロードの重要な中継地として栄えた楼蘭。気候変動による河川の流路変更と砂漠化によって滅びたその古代都市の近くに、現代の鄯善は位置しているのです。

鄯善への道中も味わい深い景色ばかり。また別記事でレポートします。

吐魯番(トルファン)から車を走らせること約2時間。ところでこの地域には、もう一つ興味深い特徴があります。実はここは、地理学的に「ユーラシア大陸の到達不能極」(最も海から遠い地点)に近い場所なのです。最寄りの海岸まで直線距離で2,648kmという途方もない距離は、かつてのシルクロードがいかに長い道のりだったかを物語っているようです。

観光地化された砂漠との出会い

まるで遊園地みたいなテンションで歓迎してくれるゲート

トルファンから鄯善を経て、ついにクムタグ砂漠に到着。そこで目にしたのは、予想外の光景でした。砂漠の入り口に建つエントランスは、まるでレジャーランドのよう。手つかずの砂漠のようなイメージを想像していた身としては最初は少し戸惑いましたが、これも中国における新しい砂漠観光のあり方なのかもしれません。

実はこの砂漠、最近では中国国内で人気の観光スポットとして注目を集めているそうです。サンドボーディングを楽しむ若者たち、写真撮影に熱中するインスタグラマーたち。エントランス付近には観光用のラクダも控えており、観光客にお構いなく牧草をむしゃむしゃと咀嚼しています。夏季にはラクダに乗って砂漠を徘徊するツアーも組まれるのだとか。

冬の砂漠が魅せる意外な表情

完全防備のスノーブーツで砂丘へと足を踏み入れる

私が訪れたのは冬季。気温はなんとマイナス5度を記録していました。砂漠というと灼熱のイメージが強いですが、ここでは完全防寒装備が必須です。しかし、その厳しい寒さも、目の前に広がる景色の前では些細なことでした。

観光地化された入り口から少し離れると、そこはもう別世界。先ほどまで観光客であふれていた入り口付近とは打って変わって、誰の足跡もない砂丘が、地平線まで果てしなく続いています。風が作り出した繊細な砂紋は、まるで大地に描かれた芸術作品のよう。人の姿もまばらで、静寂の中で砂漠本来の姿に出会えます。

人工と自然の調和

緻密で繊細な砂紋は、長い時間をかけて風が作り出す芸術作品

砂漠の砂紋は、時間をかけて風が作り出した自然の芸術作品でした。まるで波のような曲線が幾何学模様のように広がり、誰の足跡にも踏み荒らされていない完璧な風景が目の前に展開します。しかしその美しさの裏には、実は人の手が加えられていました。

グラウンドを整地するための「トンボ」のようなものをけん引して砂丘を駆ける車

ふと横を見ると、まるでグラウンドの整備のように、大きな器具を引いた車が砂漠の表面を丁寧にならしていたのです。観光地として多くの人を受け入れながら、砂漠本来の美しさを保つための工夫だと知り、現代ならではの砂漠との付き合い方を垣間見た気がしました。人工的な管理は必要なのかもしれません。それでも、その上を吹き抜ける風が作る繊細な砂紋は、確かに自然が生み出した芸術そのものでした。

新しい砂漠観光のかたち

砂の絶海の孤島の中で一人きり。多少の嫌なことは忘れてしまいそうな、異世界感たっぷりの砂漠でした。

クムタグ砂漠での体験は、私の「砂漠」に対する既成概念を大きく変えました。確かにここは、モロッコサハラ砂漠やドバイの砂漠とは異なります。でも、古代からの面影を残しながら、現代的な楽しみ方を提供する。そんな新しい砂漠観光の形がそこにはありました。

観光施設は整備され、人工的な管理も行き届いています。それでも広大な砂丘の向こうには、かつて楼蘭の民が見上げたのと同じ空が広がっているのです。

日が傾く前に、最後にもう一度砂丘に登ってみました。西に沈んでいく太陽が砂の大地を金色に染め上げる中、遠くに楼蘭の面影を探す。そんな贅沢な時間を過ごせるのも、このクムタグ砂漠ならではかもしれません。

訪問者へのアドバイス

- 冬季は厳しい寒さに備えた防寒対策が必須です
- 春からはラクダ乗りやバギーツアーなど、多彩なアクティビティが楽しめます
- カメラは必携ですが、砂から機材を守る対策も忘れずに
- 靴は砂の侵入を防ぐハイカットがおすすめです
- バギーツアーは人気のため、事前予約をお勧めします

静寂と賑わい、歴史と現代、自然と人工。相反するものが不思議な調和を見せる場所、それがクムタグ砂漠です。シルクロードのロマンを求めて訪れた砂漠で見つけた意外な魅力は、きっと忘れられない思い出として心に残ることだと思います。