台湾を訪れる観光客の多くは、台湾ビールやタピオカミルクティーなどの飲み物を楽しみにしていますが、実は台湾には知る人ぞ知る魅力的なローカルドリンクがあります。今回は、台湾東部で出会った伝統的なお酒「小米酒(シャオミジュウ)」について、その魅力を詳しくご紹介します。
小米酒とは
小米酒は、台湾の原住民族が古くから醸造してきた伝統的なお酒です。「小米」とは粟(あわ)を指し、この素朴な穀物から生まれる独特の風味こそが、小米酒の最大の特徴となっています。特に台湾東部で広く親しまれており、アミ族やブヌン族をはじめとする原住民族の文化において重要な位置を占めています。
儀式や祭事には欠かせない神聖な酒として、原住民族の間で代々受け継がれてきた小米酒。その製法は、粟を原料とすることで、米を使用する一般的な米酒とは全く異なる味わいを生み出しています。粟特有の香ばしさと、微かな甘みが織りなす味わいは、この土地でしか味わえない特別な体験であると言えます。
衝撃の出会い:台東市での初体験
私が小米酒と出会ったのは、台東市内のとあるバーでした。このお店では小米酒を使った独自のカクテルが人気と聞いていたのですが、オリジナルカクテルを試すにあたり、まずは素材となる小米酒そのものを味わおうと思い、ストレートで注文することにしました。
グラスに注がれた小米酒の第一印象は、衝撃的でした。日本のどぶろくと韓国のマッコリの「いいとこどり」をしたような味わいながら、粟ならではの香ばしい風味が口いっぱいに広がります。濃厚でありながらフルーティー、そして自然な発泡感が特徴的。アラビアの伝統的な発酵飲料「ソビア」に似た風味も感じられました(ただしソビアはノンアルコール)。
アルコール度数は決して低くなく、少し飲んだだけで心地よい酔い心地をもたらしてくれます。さらに特筆すべきは、グラスの底に沈んだ沈殿物。口に含むと、発酵によって醸成されたがつんとした甘みとアルコール特有の灼熱感が広がり、まるでこの世のものとは思えない独特の美味しさを感じさせました。
花蓮での再会:東大門夜市で味わう多様な小米酒
台東での感動的な出会いの後、翌日は運転があるため我慢を強いられましたが、花蓮市に到着してからようやく再び小米酒を楽しむ機会に恵まれました。花蓮への道中で、小米酒を振る舞うレストランや原住民村からの誘惑を何度も断りながら、やっとの思いでその日のドライブを終えた私の脳内は、完全に小米酒一色。
台北の喧騒とは一線を画す、ゆったりとした雰囲気の東大門夜市では、小米酒を提供する店が数多く並んでいます。その中のひとつのお店で、陽気な女性店主に声をかけられ、3種類の小米酒の試飲をさせていただきました。
伊啦呼小米酒:バランスの取れた軽やかな味わい。粟の素朴な甘みが特徴的で、初心者にもおすすめ
米來旺 だ馬小米酒(正確な名称が分からないので、ラベルから推測):すっきりとした甘みが特徴的なフルーティーな味。粟の香ばしさと発酵による複雑な味わいが絶妙なバランス
米來旺 公主小米酒:爽やかな酸味が印象的。粟の持つ自然な甘みと酸味が見事に調和
試飲の結果、だ馬小米酒を選択。氷をたっぷり入れたプラスチックカップでいただいたので、夜市に併設された芝生エリアでゆっくりと味わうことにしました。
小米酒の多様な魅力
小米酒の面白いところは、同じ粟を原料としながらも、銘柄によって全く異なる個性を持っていることです。サワー感覚で楽しめる軽やかなタイプから、どぶろくのようにじっくりと味わう濃厚なタイプまで、実に幅広いバリエーションがあります。味音痴の私としては日本酒の繊細な違いをそこまでしっかりと感じられないことも多々ありますが、そんな私でも個性の違いをしっかりと感じられるほど、小米酒の味わいは様々。
これは、各地域や製造者によって異なる製法や、粟の品種の違い、そして熟成期間の違いなどが影響していると考えられます。まさに、台湾東部の豊かな自然と、長年受け継がれてきた醸造技術の結晶とも言えるでしょう。
今回試飲した小米酒はどれもライトですっきりとした味わい。また氷を入れて飲むことで、アルコールの刺激も和らぎ、より親しみやすい味わいに変化します。夜市で購入したイチゴ飴との相性も抜群で、甘いお菓子と合わせることで、また違った楽しみ方を発見できました。
小米酒を楽しむ際の注意点
- 1. アルコール度数が高めなので、運転をする予定がある日の前日は控えめにしましょう
- 2. 銘柄によって味に差があるため、いくつか飲み比べて好みの味を見つけることが大切です
- 3. 氷を入れて飲むと味わいが変化するので、まずはストレートで試してみることをお勧めします
- 4. 粟アレルギーの方は注意が必要です
コラム:台北でも楽しめる小米酒
台湾東部まで足を延ばすことができない方にも、朗報があります。小米酒は台湾を代表する伝統酒として認知されており、台北などの主要都市でも入手が可能です。市場の酒売り場や、観光客向けのお土産店でも、いくつかの銘柄を見つけることができるでしょう。
しかし、やはり東部ならではの魅力があるのも事実です。流通する銘柄の数が圧倒的に多く、より本格的な味わいの小米酒に出会える可能性が高いのです。私自身、台東で出会ったあのどぶろくのような濃厚な小米酒の味は、その後も未だに出会えていません。その土地ならではの味わいを求めて、また東部への旅を計画している次第です。
とは言えまずは台北で小米酒の魅力に触れてみるのも一つの方法。その味わいに魅了されたら、ぜひ東部への旅を計画してみてください。きっと、より深い小米酒の世界が待っているはずです。
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