台湾原住民が伝統的に醸造してきた「小米酒(シャオミジュウ)」。粟から作られるこのお酒は、独特の甘みとコクを持ち、台湾の伝統文化を代表する存在です。何世代にもわたって受け継がれてきたその製法は、各部族それぞれに特徴があり、時には秘伝とされることもあるほど。
そんな伝統のお酒が、台東の街角で思いがけない変身を遂げていました。この度、現代的なカクテルとして昇華させた台東のバー「Mixx Bar(米吧)臺東酒吧」に行く機会に恵まれたので、訪問レポートを執筆します。
台東の夜を彩るモダンバー
台東県台東市、日中の喧騒が落ち着き始める頃、通りには若者たちの笑い声が響き始めます。そんな街の表情が変わり始める頃、ダウンタウンに程近い路地に、さりげなく佇むMixx Bar。
火曜日以外の夜に営業するこの店は、曜日によって開店時間が20時あるいは21時と変わりますが、深夜2時、3時まで台東の夜を盛り上げています。昼間の観光客向けの顔とは異なる、地元の若者たちが集うヒップな空間。中でも、小米酒を使ったオリジナルカクテルは、国内外から高い評価を受けているとのことです。
伝統と革新が交差するメニュー
心踊らせながら扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのは、絶妙な照明計画が生み出す上質な闇。ダークトーンを基調としながらも、バーカウンターやボトル棚に仕込まれた間接照明が、モダンでありながら懐かしさも感じさせるヒップな空間を作り出しています。
カウンター越しには、ボトルが整然と並ぶバックバー。その中に、いくつもの小米酒のボトルが、まるで宝石のように輝いています。メニューにはビールやウイスキー、定番カクテルも並びますが、私たちの目当ては当然、この場所でしか味わえない小米酒カクテル。
気さくにシェイカーを振るバーテンダーにおすすめを尋ねると、迷うことなく「山林之間」と「小米酒特調」を薦めてくれました。文字面から漂うエキゾチックなオーラに、期待が高まります。
味わいの感想
お薦めされた2つのカクテルを注文。「山林之間」は、その名の通り台東の山々をイメージさせる深い色合い。グラスに注がれた琥珀色の液体からは、かすかに月桃の香りが漂います。高粱酒と小米酒をベースに、月桃葉の蒸留酒でアクセントを付けたカクテルだとのこと。
一口飲んでみる。高粱酒の力強さを感じさせながらも、驚くほど優しい口当たり。どぶろくのような濁り酒である小米酒が、まるで天使の羽のように軽やかな味わいへと変貌を遂げていることにビックリ。喉を通り過ぎた後に残る余韻には、月桃葉の清々しい香りが漂い、まさに山林の中で深呼吸をしているような心地よさ。
対照的に「小米酒特調」は、現代的な解釈による芸術作品とでも言うべき一杯。グラスの中で、小米酒の乳白色と紫蘇リキュールの鮮やかな青が描き出すグラデーションは、まるでオーロラのよう。しかし、見た目から期待した華やかさとは裏腹に、その味わいは大人の深みを感じさせます。
レモンと紫蘇が織りなす爽やかな苦味が、小米酒本来の甘美さを引き立てながら、絶妙なバランスで調和。一口ごとに、甘み、酸味、苦味が波のように押し寄せては引いていく。その度に新しい発見があり、飽きることを知りません。
試しに小米酒のストレートも注文し、飲み比べしてみることにしました。確かに伝統的な小米酒は、どぶろくとマッコリの良いとこ取りをしたような、甘美な味わいが特徴。しかし時にはその甘さが強すぎると感じることもあるほど。カクテルへと昇華されることで、土着的な味わいを薄め、人々に親しみやすい味わいとなり、新たな魅力を放っているように感じました。特に台東の蒸し暑い夜には、小米酒カクテルの爽やかさが心身を癒してくれることだと思います。
若者の集うヒップなバー
気がつけば午前0時近く。店内は相変わらずの賑わいを見せ、カウンター越しには軽やかな会話が飛び交います。通りに目を向けると、バイクで乗り付ける若者たちの姿も。台東の夜は、まだまだこれからが本番といった様子です。
観光客は一人もおらず、客のほとんどは地元台東のおしゃれ男女たち。一人でふらりと訪れるには少し勇気がいるかもしれませんが、お酒好きには台東を訪れた際には必ず立ち寄っていただきたい一軒です。
カクテルは300台湾ドルからと、決して安くはありませんが、この独創的な体験を思えば十分な価値があります。台東市街地から徒歩圏内という立地も、観光客には嬉しいポイントでしょう。
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