台湾の東部・花蓮市には、世界中に展開するスターバックスの中でも、特別な存在として注目を集める店舗があります。それが台湾東部の花蓮県にある「スターバックス洄瀾門市店」。
29個の輸送用コンテナを組み合わせて作られたこの店舗は、アジア初のコンテナ型スターバックスとして2019年にオープン。世界的に著名な日本人建築家・隈研吾氏が手掛けた独創的なデザインと、地域文化との融合が話題を呼んでいます。今回はそんな唯一無二のお洒落スタバへの訪問レポートをお届けします。
唯一無二のデザインが織りなすスターバックス
花蓮市街から車で15分ほど。新天堂樂園というショッピングモールに隣接して建つ真っ白なコンテナの建物が、お目当てのスターバックスです。一見シンプルに見える外観ですが、よく見ると29個のコンテナが絶妙なバランスで組み合わされ、4層構造を形成しています。夜は開口部が七色にライトアップ。
29個のコンテナを積み上げて作られたという建物は、昼間の写真で見るそれとは全く異なる表情を見せていました。
戦略的に配置されたLED照明が各コンテナを優しく照らし上げ、夜空に浮かぶ巨大なライトアートのよう。特に印象的なのは、逆ピラミッド型に積み上げられたコンテナの隙間から漏れる光。まるで建物全体が宙に浮いているかのような錯覚すら覚えます。
世界的建築家・隈研吾氏が手掛けたこの建物は、かつてニューヨーク、バルセロナ、マルセイユなど、世界の港を巡ったコンテナに新しい命を吹き込んだもの。単なるリサイクル建築としてではなく、一つの芸術作品として昇華させています。
夜の訪問
駐車場に車を停めると、すでに20台ほどの車が並んでいました。若いカップルがライトアップされた建物をバックに写真を撮っていたり、仕事帰りらしいサラリーマンがドライブスルーで足を止めていきます。花蓮市街地からは少し離れた立地のため混んではいませんでした。
ガラスドアを開けると、そこは静けさに包まれた空間。台北市内のスターバックスでよく目にするような喧騒はありません。代わりに、MacBookを開いてコーディングに没頭するエンジニア、液タブでイラストを描くクリエイター、静かに会話を楽しむ地元の学生たち。まるでクリエイティブスタジオのような、落ち着いた空気が漂っています。
1階のカウンターで目を引いたのは、この店舗限定のドリンクメニュー。地元・花蓮の茶葉を使用したオリジナルティーに惹かれたので、長時間のドライブの締めくくりにホットティーを注文。
味わい深いインテリア
2階への階段を上がると、そこはさらに魅力的な空間が広がっていました。大きな窓ガラスの向こうには、月明かりに照らされた花蓮の山々のシルエット。コンテナの特性を活かした個性的な座席配置により、それぞれの空間が半個室のような独立性を保っています。
スタッフさんにお勧めいただいた窓際の席に腰かけ、温かなお茶を手に取ると、ようやく長距離ドライブの疲れが溶けていくのを感じました。気がつけば、少し離れた席では外国人観光客らしきバックパッカーが旅の計画を立てており、また別のソファ席では地元の大学生たちがグループ学習か何かに励んでいるようでした。
空間が織りなすストーリー
内装はただただお洒落でインダストリアルというわけではなく、花蓮の原住民・阿美族の文化からインスピレーションを受けています。壁面には大胆な色彩のアートワークが施され、夜間照明によってより一層鮮やかに浮かび上がるのだとか。各コンテナの壁面には、その箱がかつて運んだ貨物の記録や寄港地が刻まれており、まるで世界中を巡った物語を語りかけてくるかのよう。
また建物の中央部には吹き抜けが設けられ、小さなコンテナを繋げてできた空間でありながら開放感たっぷり。照明は直接的な明るさを避け、壁面を這うように光が広がる設計。夜の訪問者を優しく包み込むような空間づくりがなされていました。
クリエイティブなグッズ
店内を巡っていると、このスターバックスならではのグッズも目に留まりました。建築デザインをモチーフにしたキーホルダーやマグカップは、どれも洗練されたデザイン。特に、洄瀾門市店の外観をデザインしたマグカップは思わず手に取ってしまいたくなる魅力を放っています。
様々な席を眺めていると、この場所の特別さが少しずつ見えてきました。観光地として人気な花蓮にありながら、決して観光客だけのための空間ではない。地元のクリエイターの作業場として、学生たちの勉強スペースとして、友人との特別な待ち合わせ場所として。様々な使われ方を自然に受け入れる懐の深さを感じます。
おわりに
予期せぬ発見から始まった夜のスターバックス体験。建築としての革新性はもちろん、その空間が生み出す特別な時間こそが、この場所の本当の魅力なのかもしれません。
お茶を飲み終え、帰り際にもう一度建物を見上げると、夜空に浮かぶ白い箱たちが、まるで光る彫刻のように輝いていました。花蓮の新しい夜の顔として、確かな存在感を放っています。
台東から花蓮へと続く東海岸ドライブの途中、偶然に出会ったこの特別なカフェ。次は昼間の表情も見てみたいと思います。
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