東台湾を南北に結ぶ大動脈、蘇花公路(台9線)。太平洋と切り立つ崖の間を走るこの道は、かつて「台湾一危険な道路」と呼ばれていました。新道の開通や安全対策により、現在は観光ドライブコースとして人気を集めていますが、その変幻自在な自然環境は、今なお運転手たちを緊張させ続けています。
今回は、そんな蘇花公路の運転レポートと、最新の道路状況をお届けします。
出発前の重要確認事項
花蓮から宜蘭へ北上するドライブを計画するにあたり、最も重要だったのは道路情報の確認です。台9線は気象条件によって頻繁に通行止めになるデリケートな道路です。ちょっとした雨でも通行止めになることがあり、事前の確認を怠ると、長時間の立ち往生を強いられる可能性も。私は出発前日から公路管理局ホームページで最新情報をチェックし続けました。
2024年現在、平日は和仁〜崇徳区間(154.8 km〜165.7 km)で時間規制があります。規制時間は8:00〜17:00で、この間は決められた時間帯(10:00〜10:20、12:00〜13:00、15:00〜15:20)しか通行できません。私は規制時間に巻き込まれたくないという思いから、早朝出発を選びました。
絶景の朝食と出発
花蓮の海沿いのホテルで迎えた朝。ホテルの屋上テラスに、テイクアウトした朝食を持ち込みさくっと朝御飯を済ませます。本来であればゆっくりしたかったところですが、通行規制時間帯前に車を進めたく、早々にチェックアウトします。海沿いのホテルの詳細は別記事でご紹介する予定ですが、朝日と共に一日をスタートできる宿選びは、花蓮旅行には欠かせません。
7時過ぎには出発の準備を整えました。時計を気にしながらのドライブは緊張します。8時の規制開始直前の台9線は、想像以上の切迫感に包まれていました。後ろからはひっきりなしに車が接近してきます。どの車も8時前の通過を目指して急いでおり、バックミラーに映る車のヘッドライトが焦りを煽ります。
幸い、7:50頃には崇徳のチェックポイントを通過できました。この経験から、平日の早朝出発なら7:45までの通過を目標にすることをお勧めします。8時直前は他の車も焦っており、危険を感じることも少なくありません。
ちなみに、通行止めのチェックポイントは、南は崇徳、北は和仁の2ヶ所ですが、北上ルートの場合は時間内に崇徳を通過してしまいさえすれば、和仁は通行規制時間帯であっても通ることができます。
旧道(台9丁)の洗礼
蘇花公路に入って暫く北上すると、中仁トンネル工事の影響で旧道(台9丁)へと迂回することになりました。こちらが、悪名高き崖っぷちの旧道。地図上では短い距離に見えるこの区間ですが、実際に走ってみると想像以上のスリルと緊張が待ち受けていました。
急カーブが連続する旧道では、運転に慣れた地元のドライバーたちが、まるでレースさながらにカーブを駆け抜けていきます。対向車も意外なほど多く、カーブの向こうから突然現れる車に何度もビックリさせられました。右手には紺碧の太平洋が広がっているはずなのですが、ハンドル操作に集中せざるを得ません。
スピードを緩めたい気持ちはありますが、後続車に追われる形となり、かと言って飛ばすには道が危険すぎる。まさに進退両難の状況でした。一瞬でもハンドル操作を誤れば、崖下まっさかさま。その緊張感は、経験豊富なドライバーでも汗をかくほどなのではないでしょうか。
息を呑む絶景
しかし、この緊張感の中にも、素晴らしい景色との出会いが待っていました。所々に設けられた停車スペースは、まさにオアシスさながら。車を停めて降りると、そこには息を呑むような光景が広がっています。
特に印象的だったのは、珊瑚礁の影響で二層に分かれた花蓮の海。薄い青と濃い青のコントラストは、まるで絵画のよう。この景色を見るためだけでも、旧道を走る価値はあります。途中何カ所かの展望スポットでは、ドローンを飛ばして空からの撮影も楽しみました。地上からでは見ることのできない、断崖絶壁と青い海のコントラストは圧巻でした。
台風後の道路状況
私が走ったのは台風通過からわずか2日後。実際、道路の所々には台風の爪痕が生々しく残っていました。修復工事は既に始まっていましたが、道路の破損箇所や、崖に向かって沈み込んでしまったガードレールなどが、この道路の危険性を物語っています。
土砂崩れの跡も印象的でした。まだ完全には撤去されていない土砂や岩が、自然の力の凄まじさを感じさせます。私たちが通過する2日前まで道路は完全に封鎖されていたとのこと。それだけに、通行規制の情報は常にチェックする必要があります。
安全なドライブのために
台9線を走る際の最重要ポイントは、事前の道路情報確認です。東部公路管理局(03-9982161)では、最新の通行規制情報を提供しています。特に雨季や台風シーズンは、前日のチェックだけでなく、当日朝の最新情報も必ず確認しましょう。
ちょっとした雨でも通行止めになる可能性が高いこの道路。素晴らしい景色の裏には、自然の脅威が常に潜んでいます。しかし、それを理解した上で適切な準備をすれば、台湾随一の絶景ドライブを安全に楽しむことができるはずです。
時には厳しい規制に遭遇し、予定通りに進まないこともあるでしょう。しかし、その時々の状況に柔軟に対応しながら、絶景との出会いを楽しむ。それもまた、台湾らしい旅の醍醐味なのかもしれません。
【道路情報の確認はこちらから】
https://168.thb.gov.tw/thb168
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