昨今、手軽な料金で海外旅行を可能にしてくれるLCC(格安航空会社)。その魅力的な価格の裏には、厳しい手荷物制限という課題が潜んでいます。多くのLCCでは機内持ち込み手荷物の重量制限が7kgと設定されており、この制限を超えると高額な追加料金が必要です。場合によっては、往復の航空券代金よりも高額な追加料金を請求されることも珍しくありません。
しかし、これはLCCを利用する場合に限った話ではありません。荷物が軽く、コンパクトであれば、どんな旅行でも移動がスムーズで、行動の自由度が格段に上がります。階段の多い駅でも、込み合う電車内でも、急な予定変更でも、身軽な旅行者であれば余裕を持って対応できるのです。特に、ヨーロッパの古い街並みや、アジアの路地裏など、エレベーターやエスカレーターが少ない場所での観光も、身軽であれば大きな負担にはなりません。
私自身、これまで数多くの海外旅行でLCCを利用し、1週間程度の旅行や取材でも7kg以内に収める工夫を重ねてきました。その経験から、誰でも実践できる実用的なパッキングのコツをご紹介します。
1. モバイルバッテリーは超軽量タイプを選択
意外に重量を占めるのがモバイルバッテリーです。10,000mAhクラスでも、製品によって100g以上の重量差があります。最新の軽量モデルを選べば、容量を確保しながら重量を削減できます。特にGaN(窒化ガリウム)採用製品は、従来品と比べて大幅な軽量化を実現しています。また、急速充電に対応した製品なら、短時間で効率的に充電できるため、容量を抑えめに選ぶことも可能です。近年は空港やカフェなど、充電スポットも増えているので、必要以上に大容量のものを持っていく必要はありません。
2. 衣類は「着回し」を意識して厳選
旅行中の衣類は、色味を統一し、様々な組み合わせが可能なアイテムを選びましょう。例えば、ネイビーやブラックを基調とした服なら、少ない枚数でもコーディネートの幅が広がりますし、リバーシブルアイテムなら少ない数でも自由自在に。また、シワになりにくい素材を選ぶことで、アイロンなども不要になります。中でもポリエステル混の素材は、シワになりにくく、洗濯後の乾きも早いため、旅行には最適です。トップスは3枚、ボトムスは2枚程度あれば、1週間の旅行でも十分対応できます。洗濯を前提とした計画を立てることで、衣類の量を大幅に削減できます。
3. 圧縮袋の戦略的活用
衣類用の圧縮袋は、容量を減らすだけでなく、荷物の整理整頓にも役立ちます。ただし、すべての衣類を圧縮するのではなく、かさばるものを中心に使用するのがコツです。また、手動式の圧縮袋なら、帰りの荷造りでも活用できます。下着類やTシャツなどの薄手の衣類は、ジップロックなどの軽量な袋で代用することもできます。圧縮袋自体も重量があるため、使用は必要最小限に抑えましょう。
4. マルチユースアイテムの採用
一つのアイテムで複数の用途をカバーできる製品を選びましょう。例えば、大判のストールは、防寒具としてだけでなく、機内での膝掛け、ビーチでのパレオ、観光地での肌隠しなど、様々な場面で活用できます。USBハブ付き充電器を使えば、複数の充電器を持参する必要もありません。折りたたみエコバッグは、買い物はもちろん、洗濯物の運搬や、急な荷物増加時の予備バッグとしても重宝します。このように、一つのアイテムを多目的に使用することで、持ち物の総量を減らすことができます。
5. 洗面用具のミニマム化
ホテルのアメニティを最大限活用し、持参する洗面用具を最小限に抑えます。シャンプーやボディーソープは多くのホテルで用意されているため、特別なこだわりがなければ現地のものを使用しましょう。持参が必要なものは、詰め替え容器を使用して必要最小限の量だけ持っていきます。歯ブラシは折りたたみタイプを選べば、さらにスペースを節約できます。化粧品も、オールインワンタイプを活用するなど、アイテム数を減らす工夫をしましょう。
6. セームタオルの活用
通常のタオルは乾きが遅く、かさばる上に重量もあります。代わりにセームタオルを持参することで、大幅な軽量化と収納スペースの削減が可能です。セームタオルは高い吸水性と速乾性を備え、コンパクトに畳めるため、旅行には最適です。使用後は軽く絞って干せばすぐに乾き、濡れたまま持ち運ぶ心配も少なくなります。フェイスタオルサイズの1枚があれば、ほとんどの場面に対応できます。近年は素材も改良され、肌触りの良い製品も増えているので、実際に手に取って選ぶことをお勧めします。
7. デジタル化できるものはデジタル化
ガイドブックやマップは、スマートフォンアプリで代用できます。必要な情報はあらかじめスクリーンショットを撮ったり「自炊(裁断してPDF化)」をしておけば、オフラインでも閲覧可能です。旅程表や予約確認書なども、紙での持参は必要最小限に抑え、スマートフォンに保存しておきましょう。また、電子書籍を活用すれば、長時間のフライトや移動時間も退屈せず、かさばる本を持ち運ぶ必要もありません。ただし、スマートフォンの紛失や故障に備えて、重要な書類は印刷したものも1部持参することをお勧めします。
8. バッグ選びも重要
荷物を軽く抑えるには、バッグ自体の重量も重要な要素です。できればリュックが軽いですが、最近は1kg未満の軽量スーツケースも数多く販売されています。ソフトタイプのバッグなら、さらに軽量化が可能です。選ぶ際は、素材の耐久性や、ファスナーの強度、キャスターの走行性なども確認しましょう。また、メインバッグとは別に、小さな折りたたみバッグを持参すれば、観光時や買い物時に便利です。レビューやクチコミをしっかりと確認し、信頼できるメーカーの製品を選ぶことで、長く快適に使用できます。
9. 旅先での買い物を考慮
お土産スペースも考慮し、往路は余裕を持たせておくことが重要です。現地で購入可能なものは、あえて持参しないという選択も賢明です。特に文房具や日用品は、必要最小限だけ持参し、不足分は現地で調達する方が効率的です。また、かさばるお土産は現地から直接配送するサービスを利用するのも一つの手です。バッグやスーツケースの空きスペースは、帰りの荷物増加に備えた余裕と考えましょう。
10. 搭乗時の着用を工夫
重量制限を最大限活用するために、搭乗時の服装は戦略的に考えましょう。コート、セーター、シャツなど、着られる服は重ねて着用します。ただし、快適に過ごせる程度にとどめることが大切です。ポケットの多い服を着用すれば、スマートフォンや財布など、頻繁に使用する小物類の収納にも活用できます。また、機内は温度変化が大きいため、脱ぎ着しやすい重ね着スタイルは実用的です。
まとめ - 身軽な旅行がもたらすメリット
手荷物の軽量化は、LCCの利用に限らず、すべての旅行をより快適にします。必要最小限の荷物で旅をすることで、移動の自由度が高まり、予期せぬ出来事にも柔軟に対応できます。電車やバスでの移動も楽になり、旅先での急な予定変更も容易になります。
上記の工夫を組み合わせることで、1週間程度の旅行なら7kg以内での荷造りも十分に可能です。ただし、初めは少し余裕を持って準備し、旅行を重ねながら自分に合ったパッキングスタイルを見つけていくことをお勧めします。より自由で快適な旅行のために、ぜひ参考にしてください。