マッターホルンといえば、スイスを代表する名峰であり、世界中の写真愛好家が憧れる被写体です。その荘厳な姿を一目見ようと、年間を通じて多くの観光客がツェルマットを訪れます。しかし、有名な展望スポットは常に人で溢れており、理想的な一枚を撮影することは容易ではありません。今回は、そんな悩みを解決する穴場スポット「Rotenboden(ローテンボーデン)」をご紹介します。
人気展望スポットの現状
マッターホルンの撮影スポットとして有名なのが、Gornergrat(ゴルナーグラート)、Sunnegga(スネガ)、Glacier Paradise(グレイシャーパラダイス)です。いずれも素晴らしい展望台を備えていますが、その分、観光客も集中します。
特に冬季は状況が更に深刻です。スキーヤーやスノーボーダーで賑わうゲレンデに囲まれ、展望台は常に人で溢れかえっています。三脚を立てようにも場所の確保が難しく、人影のない写真を撮るのは至難の業。孤高の山として知られるマッターホルンの神秘的な雰囲気を味わうにはハードルが高いと言えるでしょう。
知る人ぞ知る絶景スポット「Rotenboden」
そんな中、写真愛好家の間で密かに注目を集めているのが、Rotenboden駅です。Gornergrat鉄道の途中駅として設置されているこの駅は、実は絶好の撮影スポットなのです。
Rotenbodenは、Gornergrat鉄道の終点手前に位置する小さな駅です。重要なポイントは、Gornergrat鉄道の往復券があれば、追加料金なしで下車できるという点です。しかし、この事実を知っている観光客は少なく、ほとんどの人が終点のGornergratまで直行してZermattへそのまま直帰してしまいます。
結果として、Rotenboden駅周辺はいつも閑散としています。人気スポットで苦心惨憺している観光客をよそに、ここでは贅沢なまでの静寂の中で撮影を楽しむことができます。
撮影ポイントと作例
【岩場からのダイナミックショット】
駅を降りてすぐ、小さな岩場があります。それほど険しくない岩場なので、少し注意を払えば安全に登ることができます。ここからの眺めは圧巻で、雄大なマッターホルンを背景に、ダイナミックな構図の写真を撮影することが可能です。
岩場に立つ人物と、その背後に聳えるマッターホルンという構図は、SNSでも人気の組み合わせ。人の少なさを活かして、何枚でも理想的なショットを追求できます。
【夏季限定!逆さマッターホルン】
夏になると、駅の近くに小さな湖が出現します。風のない早朝には、その湖面にマッターホルンが映り込み、美しい逆さマッターホルンを撮影することができます。冬は雪に覆われて見えない湖も、夏には神秘的な被写体として姿を現すのです。
注意点と準備
Rotenboden駅は標高3,000メートル以上に位置します。そのため、真夏でも気温は低く、風も強いのが特徴です。防寒具は必須で、できれば予備の防寒着も持参することをお勧めします。また、標高が高い分当然高山病リスクも少なくありません。訪問予定日の前日にはしっかり睡眠をし、当日もこまめな水分補給を忘れないようにしましょう。
また駅には売店やレストランがありません。長時間の撮影を予定している場合は、必ず十分な水と食料を持参してください。高山での活動は予想以上に体力を消耗するため、軽い行動食も用意しておくと安心です。
最も重要な注意点は、列車の時刻表の確認です。Rotenboden駅は無人駅で、終電を逃すと極寒の中で一夜を過ごすことになりかねません。これは命に関わる危険性があります。必ず時刻表をメモしておき、余裕を持って最終列車に乗り遅れないようにしましょう。
また、天候の急変も珍しくありません。悪天候が予想される場合は、早めに撮影を切り上げることをお勧めします。
撮影用具
人が少なく、三脚の使用が可能なので、持っている場合は積極的に活用しましょう。特に星空を撮影する場合は必須アイテムとなります。また、レンズは広角から望遠まで、可能な限り持参することをお勧めします。様々な表情のマッターホルンを捉えるチャンスがあります。
ドローンを持ち込むことも可能ですが、スイスの航空局に事前登録が必要です。ドローンを使用した空撮を行いたい場合は下記記事を参考に登録手続きを済ませておきましょう。
まとめ
Rotenbodenは、マッターホルン撮影の隠れた名所と言えます。人混みを避け、じっくりと撮影に没頭したい方にとって、まさに理想的なロケーションです。ただし、高山での撮影となるため、安全面には十分な注意が必要です。
防寒対策、水分・食料の確保、時刻表の確認など、基本的な準備をしっかりと整えた上で、この特別な場所での撮影を楽しんでください。きっと、他では撮れない素晴らしいマッターホルンの写真が得られるはずです。