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イランのステンドグラス – 美しさの裏に隠された3つの知恵

イランのモスクや伝統的な邸宅を彩る色鮮やかなステンドグラス。朝日や夕日が差し込むと、床や壁に広がる万華鏡のような模様は、訪れる人々を幻想的な世界へと誘います。しかし、なぜイランではこれほど色彩豊かなステンドグラスが発展したのでしょうか?単なる装飾としての美しさだけではなく、その背景には実は驚くべき理由が隠されていました。今回は、イランのステンドグラスが持つ「美しさの裏の秘密」に迫っていきます。

① 経済的な知恵 – 光の魔法が生み出す贅沢な空間演出

イランの伝統的な家では、特別な家具や装飾品がなくても、ステンドグラスとペルシャ絨毯があれば空間が一気に豪華に見えます。昼間、太陽光がステンドグラスを通して差し込むと、赤・青・黄色・緑などの色彩が部屋中に広がり、床に敷かれたペルシャ絨毯の複雑な模様と色彩が光によって一層鮮やかに浮かび上がります。

この光と絨毯のコンビネーションが、まるで宮殿のような雰囲気を演出するのです。「光の魔法」によって、経済的な制約があっても豊かな空間を作り出す—これはイラン人の暮らしの知恵だったのです。

簡易的なカラーグラスでも効果は抜群

イランでは古くから、家のインテリアに色彩を取り入れる文化が根付いています。特にカーペットと光の演出は、家の豊かさを表現する重要な要素でした。砂漠気候という厳しい環境で暮らすイラン人は、限られた資源を最大限に活用する方法としてステンドグラスとカーペットの組み合わせを発展させてきたのです。

② 虫を寄せ付けない機能性 – 紫の光が持つ驚きの効果

イランのステンドグラスには、様々な色が使われていますが、特に赤と青の光が混ざることで生まれる紫の光には、蚊を寄せ付けない効果があるとされています。古くから「ステンドグラスのある部屋は蚊が少ない」という言い伝えがあり、特に夕方になると蚊が増える時間帯でも、ステンドグラス越しの光が差し込む部屋では、蚊に悩まされることが少なかったようです。

赤青黄緑+白の基本配色にも意味がある

この言い伝えは単なる迷信ではなく、科学的な根拠がある可能性が高いのです。色付きのガラスは特定の波長の光を遮断し、紫外線の一部を通さないため、蚊が好む波長の光を減少させる効果があると考えられています。

興味深いことに、この「青い光が虫を遠ざける」という知恵は、地中海沿岸地域でも見られます。チュニジアの青い街・シディ・ブ・サイドや、ギリシャサントリーニ島、モロッコのシャウエンなど、青い建物が多く見られる地域では同様の効果が言い伝えられています。

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つまり、イランのステンドグラスの青い光と、地中海沿岸の青い街並みは、どちらも「虫除け」としての役割を果たしていた可能性があるのです。昔の人々は、経験的にこの効果を知り、美しさと実用性を兼ね備えたデザインとして発展させてきたのでしょう。

③ プライバシーを守る光の仕掛け – 伝統的な生活空間の工夫

イランの伝統的な家庭では、女性が家の中でヒジャブ(スカーフ)を外して過ごすこともあります。そのため、外からの視線を遮る工夫が必要でした。ステンドグラスはその役割を見事に果たしていたのです。

ステンドグラスを通すと、室内はカラフルな光で満たされますが、その反面、外からは内部の様子がほとんど見えなくなるという特性があります。光が複雑に屈折するため、外部からの視線を遮りながらも、採光と通気を確保できるのです。

また、光の加減によっては、室内の人の姿がぼんやりとしたシルエットとしてのみ見える程度になります。このシルエット効果により、家の中の女性たちは外の景色を楽しみながらも、自分たちのプライバシーを守ることができたのです。

その他、ステンドグラスは季節によって太陽光の入り方を調整する役割も果たしていました。夏の強い日差しを和らげ、冬は少しでも多くの光を取り入れるよう、窓の位置や色彩が工夫されていたのです。これは現代のエコ建築にも通じる知恵と言えるでしょう。

イランでステンドグラスの美しさを堪能できるおすすめスポット

1. ピンク・モスク(ナシール・アル・モルク・モスク) – シーラーズ

世界で最も美しいモスクの一つと称されるピンク・モスク。朝日が差し込むとステンドグラスの光が床や壁に広がり、まるで万華鏡の中にいるような体験ができます。特に朝方の訪問がおすすめで、光の芸術を最も美しく鑑賞できる時間帯です。

2. アリ・カプ宮殿 – イスファハーン

サファヴィー朝の王宮だったアリ・カプ宮殿では、豪華なステンドグラスの装飾を楽しめます。特に「音楽の間」と呼ばれる部屋のステンドグラスは、音響効果を高める工夫も施されており、光と音の芸術が融合した空間となっています。

3. ゴレスターン宮殿 – テヘラン

テヘランの中心にあるこの宮殿には、美しいステンドグラスを備えた広間があり、かつての王族の暮らしを垣間見ることができます。特に「鏡の間」のステンドグラスと鏡の組み合わせは、光の反射が空間を何倍にも広く感じさせる不思議な効果をもたらします。

伝統的な知恵から学ぶ現代の住まいのヒント

イランのステンドグラスは、単なる装飾品ではなく、人々の暮らしの知恵と深く結びついたデザインでした。経済的な制約があっても豊かに見せる工夫、蚊などの害虫から身を守る機能、プライバシーを確保する配慮など、美しさの裏には実用的な理由が隠されていたのです。

現代の私たちの住まいにも、この知恵は応用できるかもしれません。高価な家具や装飾品がなくても、光と色の使い方次第で空間は豊かに見えること。また、化学的な防虫剤に頼らずとも、光の工夫で心地よい環境を作れる可能性。そして、プライバシーを守りながらも開放感を得るデザインの大切さ。

次にイランを訪れる機会があれば、ぜひステンドグラス越しの光を浴びながら、その文化的な背景に思いを馳せてみてください。何百年もの間、人々の暮らしを彩り、守ってきたステンドグラスには、現代にも通じる生活の知恵が詰まっているのです。

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