エチオピア東部に位置するハラール(Harar)は、82もの美しいモスクが立ち並ぶイスラム教の聖地であり、16世紀から続く厚い城壁に囲まれた要塞都市です。2006年にはユネスコ世界遺産にも登録された古都で、その独特の雰囲気は多くの旅行者を魅了しています。
私がこのハラールを訪れようと決めたのは、単なる観光ではなく、この歴史ある城壁の中で生活を体験してみたいという思いからでした。要塞内のゲストハウスは数少なく、ほとんどが城壁の外側に位置しています。しかし、せっかくハラールを訪れるのなら、その「殻」の中で宿泊してみたい—そんな思いから宿探しを始めました。
予約の苦労:現地コネクションの重要性
「ジェゴル(Jegol)」と呼ばれる要塞都市内部には宿泊可能な施設がほとんどないのですが、インターネットで調べていく中で何とか見つけた「Rewda Guesthouse」というゲストハウス。予約方法が極めてアナログで、ブッキングサイトには一切登録されていないことが分かりました。現地の仲介者を通じてしか予約できないとの情報を得て、さらに調査を進めることに。
そんな中幸運にも、ネット上でAlemという現地女性と知り合うことができました。彼女はハラールのガイドをしており、Rewda Guesthouseの予約を仲介できるとのこと。簡単な英語のメールでやり取りし、予約を確保することができました。なお、ハラールは最寄りのディレ・ダワ空港から約50kmも離れており、公共交通機関も限られていることから、Alemを通じて空港からの送迎も手配してもらいました。
城塞内の隠れ宿
ハラールに入域し、Alemに連れられ城壁内の細い路地を歩いていくと、Rewda Guesthouseに到着。ハラールの伝統的な建築様式を活かした造りで、中庭を囲むようにメインの建物と離れが配置されています。
メイン棟には応接間があり、そこにはハラールの名物民芸品である手編みのカゴ「Sefed (ሰፌድ)」が所狭しと飾られていました。この伝統工芸品は、ハラールの文化を象徴するような美しさを持っています。この宿を切り盛りしているのは、優しい表情の現地のおばあちゃん。彼女は現地語しか話せないため、Alemが通訳として手伝ってくれました。
私が案内された部屋は離れにあり、どうやら私が唯一の宿泊客のよう。おばあちゃんが一人で営んでいるアットホームな宿であることがわかりました。
要塞都市散策の理想的拠点
Rewda Guesthouseの最大の魅力は、その立地の良さにあります。ハラールの要塞都市内部に位置しているため、世界遺産の城壁内部を探索するための絶好の拠点となります。ハラールにおいて、このことは単なる利便性以上の意味を持つことに。
ハラールの地元民は部外者に対して非常に冷たい視線を送ることで知られ、外国人が特に明確な目的もなく要塞内をうろつくのは精神的に非常に厳しい体験となります。しかし、城壁内に宿を構えることで、「宿への行き来」という明確な大義名分を持つことができるのです。これにより、地元民の視線を気にせず、自然な形で要塞都市の内部を散策することができました。
毎朝、宿を出て夕方戻ってくるまでの間、私は「宿泊者」という身分を持つことで、他の観光客よりも自由に城壁内を歩き回れたことは大きなアドバンテージでした。
部屋と食事
ゲスト部屋の中は決して豪華ではありませんが、小さなカップや地元の装飾品が飾られた、温かみのある空間でした。
朝食には甘い現地風のクレープが出てきたときは本当に嬉しかったです。エチオピア料理の定番「インジェラ」の独特の酸っぱさで日々うんざりしていた私にとって、この甘いクレープは救世主のようでした。
宿泊料金は一泊約1000円程度と格安で、朝食付きという驚異的なコストパフォーマンス。価格は恐らく交渉次第で変わるかもしれませんが、非常にリーズナブルでした。
心の拠り所としての拠点
先述の通り、ハラールは観光客にとって必ずしも簡単な場所ではありません。城壁内の住民は外部の人間に対してあまり友好的ではなく、街中を散策するだけでも精神的に消耗することがありました。しかし、Rewda Guesthouseのおばあちゃんは例外で、観光客である私にも優しく接してくれ、ハラールでの滞在中の心の拠り所となりました。
彼女との言葉を超えたコミュニケーションは、私の旅の中でも特別な思い出となっています。時には手振りや表情だけで通じ合うこともあり、言葉の壁を越えた人間同士の温かい交流を感じることができました。
いかがでしたでしょうか?
今回は、ハラールの城壁の中に立地するゲストハウス「Rewda Guest House」について見てきました。残念ながら、私が予約を仲介してもらったAlemさんは現在療養中とのことで、新たな予約の仲介は難しい状況です。そのためここで私から直接仲介者を紹介することはできませんが、ハラールという特別な場所での滞在を希望する方は、ぜひまずはネットの海を航海し、現地の仲介者探しに挑戦してみてください。
ハラールの城壁内で過ごす時間は、観光地を巡るだけでは決して得られない貴重な体験です。Rewda Guesthouseでの滞在は、現地の生活に触れ、人々の温かさを感じる、忘れられない思い出となるはず。そして何より、要塞都市内部を探索するための最高の拠点として、あなたのハラール体験をより深く、より豊かなものにしてくれるはずです。