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ガイド無しでの散策は無謀?エチオピア・ハラールの要塞都市「ジェゴル」を歩く

前回のRewda Guesthouseでの宿泊体験に続き、今回はハラールの要塞都市「ジェゴル」を実際に歩いた体験をお伝えします。世界遺産にも登録されたこの古都を訪れる際、「ガイドは必要か?」という疑問を持つ方も多いでしょう。結論からいえば、この街を訪れるなら現地ガイドの存在は「必須」と言わざるを得ません。その理由をこれからご紹介していきます。

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ハラールの要塞都市ジェゴルとは

ハラールの中心部に位置するジェゴルは、16世紀に建設された城壁に囲まれた要塞都市です。約1平方キロメートルの区域内に82のモスク、365の路地が存在し、「エチオピアのメッカ」とも、イスラーム第4の聖地とも呼ばれるイスラム教の聖地となっています。城壁には6つの門があり、それぞれが周辺地域への重要な通路となっています。

2006年にユネスコ世界遺産に登録されたジェゴルは、その独特の建築様式と文化的価値から、エチオピアを代表する観光地の一つです。しかし、観光地としての整備は他の世界遺産と比べると控えめで、そこには現地の人々の日常生活が色濃く息づいています。

ハラールの民の排他性:文化保存の両面性

ジェゴルを散策して最初に感じるのは、地元住民の外部者に対する強い警戒心です。カメラを持って歩いているだけで怪訝な顔をされたり、露骨に嫌な表情を向けられたりすることは日常茶飯事。観光で訪れた私のような外国人は、強い疎外感を味わうことになります。

近年、SNSの発達により世界中の多くの地域では観光客のカメラに対する拒否反応が和らいできていますが、ハラールではその傾向がまだ強く残っています。これは一見ネガティブに思えますが、見方を変えれば古き良き伝統や暮らし、文化をいまもなお大切にしている証とも言えるでしょう。

変わりゆく世界の中で、ハラールの民は自分たちのアイデンティティを強く保持しているのです。それは観光客にとって挑戦的な環境ではありますが、同時に他では味わえない本物の文化に触れる貴重な機会でもあります。

現地ガイドという心強い味方

今回の散策では、現地の若き女性ガイド、アレムさんにお世話になりました。彼女はハラールの生まれ育ちで、ジェゴルの路地を知り尽くしています。アレムと一緒に歩くことで、単なる観光では決して得られない視点からハラールの日常を見ることができました。

現地の観光ガイド、アレムさん

私たちが歩いていると、地元の人々は私に怪訝な表情を向けてきます。そんなとき、アレムは臆することなく現地語で何やら叫び返します。後で聞くと、「写真撮影くらい許してやれ」といった内容を伝えていたそうです。彼女の頼もしさに感謝しつつも、その強さに少し怖さも感じてしまいました。

しかし、アレムのような地元ガイドがいなければ、ジェゴル内での自由な散策や写真撮影は非常に難しかったでしょう。彼女は単なる案内人ではなく、異文化の狭間に立つ「通訳者」としての役割も果たしてくれました。

イスラームの禁忌であるお酒も、ハラールに点在するいくつかのレストランでは飲むことが可能

実は、アレムの案内はジェゴル内の散策だけにとどまりませんでした。私の滞在中、彼女は現地のレストランや、意外にも飲酒が可能な地元の飲み屋にも連れて行ってくれました。イスラム教の聖地であるハラールで「お酒が飲める」という事実は、多くの旅行者にとって意外かもしれません。

ハラールならではの人気アトラクション、ハイエナフィーディング

また夜になると、アレムは私をハラール名物の「ハイエナフィーディング」に連れて行ってくれました。ハラールは世界でも珍しく、野生のハイエナが毎晩街の近くにやってきて、地元の人々から餌をもらう伝統があるのです。闇の中で光る目、骨を噛み砕く音、そして餌付け人とハイエナの不思議な関係性は、他では決して体験できないハラール独自の文化でした。

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ジェゴルの見どころ:路地裏から市場まで

さて、ジェゴルの魅力は、迷路のように入り組んだ365の路地にあります。青や白に塗られた伝統的な家々が立ち並び、子どもたちが元気に走り回る姿は、まるでタイムスリップしたかのような感覚を覚えます。

特に印象的だったのは、ジェゴル内にいくつか点在する小さな市場です。カラフルなスパイスやコーヒー豆、手工芸品が所狭しと並び、地元の人々の活気ある声が響きます。アレムによると、これらの市場は何世紀にもわたって同じ場所で営まれ続けているそうです。

また、アブドゥル・ハキム博物館では、ハラールの歴史や文化を紹介する展示物を見ることができます。かつてアーサー・ランボーが暮らした家を改装した博物館もあり、フランスの詩人がいかにこの地に魅了されたかを知ることができます。

しかし、これらの公式な観光スポット以上に心に残ったのは、路地裏での何気ない日常の風景でした。洗濯物を干す女性たち、路地で談笑する老人たち、モスクへ向かう信徒たち。

本場のコーヒー体験:ハラールのロースタリー

ジェゴルを散策する中で、特に印象に残ったのが現地のコーヒーロースタリーへの訪問です。「コーヒーの発見者カルディの物語」で知られるように、ハラールはコーヒー文化の発祥地の一つとされています。実際、この地域で栽培・焙煎されるコーヒーは格別の香りと味わいを持っています。

ロースタリーでは、伝統的な手法で豆を焙煎する様子を見学することができました。焙煎したての豆の香りは何とも言えない魅力があり、思わず深呼吸を繰り返してしまいます。ここでは煎り具合や挽き方を細かく指定でき、豆か粉かも選ぶことができます。

ガイド無しでの散策は現実的か?

結局、ジェゴル内ではアレムとずっと一緒に過ごすことになりました。正直なところ、観光客ひとりでほっつき歩いても特段危険な目に遭うことはありませんが、外部者が一人で自由に闊歩できるような雰囲気ではありません。地元住民との間に不必要な緊張を生む可能性もあります。

特にカメラを持っての散策は、ガイドなしでは非常に難しいでしょう。写真を撮ろうとするたびに声をかけられたり、時には強い拒否反応を示されたりする可能性があります。

アレムのようなガイドがいれば、そうした緊張を緩和し、適切な場所や方法で写真を撮るチャンスを作ってくれます。また、一見何気ない風景の背後にある文化的・歴史的な文脈を説明してくれることで、ハラールへの理解も深まります。

まとめ:異文化体験としてのハラール

ハラールのジェゴルを訪れて感じたのは、本物の異文化体験の難しさと貴重さです。観光地化が進んだ世界各地の名所とは異なり、ここでは現地の人々の日常と観光が微妙なバランスを保っています。

排他的に見える態度の背後には、自分たちの文化と生活様式を守りたいという切実な思いがあります。そしてそれこそが、ハラールが今も世界遺産としての価値を保ち続けている理由なのかもしれません。

ハラールを訪れる際は、現地ガイドを雇うことを強くお勧めします。それは単なる便宜のためではなく、この特別な場所と文化への敬意を示す方法でもあるのです。