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台南永樂市場 - オールドマーケットのリノベーションが生み出す新たな文化発信地

かつて300年以上の歴史を持ち、台南市民の日常生活を支えてきた永樂市場(ヨンラーマーケット)は、近年、台湾のクリエイティブシーンにおいて最も注目すべきスポットの一つへと変貌を遂げています。特に市場の2階部分が、おしゃれなカフェやバー、デザイン雑貨店などが集まる若者向けの文化空間として再生され、BRUTUSなどの雑誌にも取り上げられるほどの注目を集めているほどです。

今回、私は台南を訪れた際に、この「新しい永樂市場」の魅力を探るべく、特に注目を集めるいくつかの店舗に足を運んでみました。予想以上に深い文化体験と地元の人々との交流が生まれ、台南旅行の思い出に鮮やかな彩りを添えることになりましたので、皆様にシェアさせていただきます

台南永樂市場で起きている変化 - リノベーション文化の最前線

台湾では1980年代以降、郊外型の大型ショッピングモールやデパートの台頭により、古い市場は衰退の一途をたどりました。特に若者離れが顕著となり、多くの伝統的市場はシニア層のみが利用する場所として、その存在感を徐々に失っていったのです。永樂市場もその例外ではありませんでした。

しかし2015年頃から、台北を中心に古い市場や商店街を文化的価値のある空間として再評価し、クリエイティブな要素を取り入れてリノベーションする動きが活発化。台北の華山1914文化創意産業園区や松山文創園区などの成功事例を経て、この波は台南にも押し寄せました。

地上から見た永樂市場。一見普通の飲食街のよう。

台南市政府も歴史的建造物の保全と文化創造産業の振興を掲げ、この動きを後押し。特に永樂市場は市の中心部という立地の良さから、若手クリエイターやデザイナーたちの注目を集めました。1階部分は今でも生鮮食品や伝統的な食堂が営業を続ける一方で、かつては倉庫や空きスペースとなっていた2階部分が、徐々に変容を遂げ始めたのです。

一階部分には食堂などが並ぶ

2018年頃から、2階スペースに若手デザイナーのポップアップショップやアートギャラリーが散発的に出現。その後、BRUTUSなどの文化雑誌にも取り上げられるようになると、ますます注目度が高まりました。現在では、感度の高い若者やデザイン関係者、そして観光客を引き寄せる文化的スポットとして確立されつつあります。

二階部分には、お洒落な雑貨店やバーなどが並ぶ

台湾の若者たちの間では、SNSを通じてこの「新しい永樂市場」の魅力が拡散。この市場に関連するハッシュタグが人気を集め、特にインスタグラム映えするカフェやバーの写真が多数アップロードされてきました。また、台湾のみならず、日本や香港、タイなどアジア各国からの観光客も増加傾向にあります。

秘氏咖啡 - 香港ノスタルジーの空間で時を忘れる

ディープな雰囲気の漂う2階だが、主種多様な魅力が詰まっていた

それでは、実際にいくつか市場二階のお店を訪問してきましたので、その体験をレポートさせていただきます。

市場の2階への階段を上がり、少し迷いながらも辿り着いた「秘氏咖啡」。入口に立つと、まず目に飛び込んでくるのは1960年代の香港を彷彿とさせるレトロでありながらも洗練された空間です。高い天井と大きな窓からは柔らかな光が差し込み、古い市場の雰囲気と現代的なセンスが絶妙に融合していました。

チェアの柄が何ともレトロで美しい。人気カフェ、秘氏咖啡の店内の様子。

店内に足を踏み入れると、ビンテージ家具と現代的なアートが調和した空間が広がっています。壁には古い香港映画のポスターやアンティークの小物が飾られ、カウンター周りには厳選されたコーヒー器具がディスプレイされていました。また、店内の一角には香港や台湾のデザイナーによるグッズ販売コーナーもあり、オリジナルのシャツや陶器、ノートなどが並んでいます。

バリスタはラフな服装を身にまとった洗練された雰囲気の女性で、淡々とした動きで注文を受け、コーヒーを淹れる姿は職人のようでした。私たちが遠慮がちに店内を見回していると、静かな視線を送ってくるだけ。この控えめでクールな接客も、どこかアンニュイな世界観を感じさせます。

店内の上階には地元の若者や観光客がそれぞれのペースでくつろいでおり、静かな会話や読書を楽しむ人、写真撮影に熱中する人など、それぞれの楽しみ方で空間を共有していました。伝統的な市場の喧騒から一歩離れた、もう一つの時間が流れる静かな空間。それが秘氏咖啡の魅力なのかもしれません。

賊仔坊酒吧 - 市場の奥に潜む隠れ家バー

同じく市場2階を徘徊していると、ひっそりと佇む「賊仔坊酒吧」に辿り着きました。一見すると何の変哲もない入口は、知る人ぞ知る秘密の場所を思わせる雰囲気。敷居が高そうな雰囲気に少し緊張しながらも、思い切って扉を開けてみました。

予想とは裏腹に、中に入るとバーテンダーから温かな笑顔で迎えられ、すぐに緊張が解けました。店内は10席ほどの小さな空間ながら、天井が高く開放感があります。照明を落とした内部は、古い市場の素材感を活かしつつも、モダンなバーカウンターや厳選された古道具の数々が洗練された雰囲気を醸し出していました。

気さくなバーテンダーさんと常連さんに迎えられ、暖かい雰囲気に

バーテンダーたちはとてもフレンドリーで、私たちが日本から来たと知ると、すぐに打ち解けて会話が弾みました。「市場の中のバー」というコンセプトは当初、地元でも懐疑的な声があったそうですが、今では台南のナイトライフの新たなスポットとして認知されるようになったと語ってくれました。

バーテンダーのおすすめで提供されたカクテルは、どれも個性的で驚きのある味わいでした。台湾の伝統的なハーブや地元の食材を使ったオリジナリティ溢れるカクテルの数々に、酔いが回るほど魅了されました。

かなり度の強いスピリッツを使用したカクテルを惜しげもなく提供してくれる。思わず記憶が飛んでしまいました。

バーテンダーは時折カウンターから出てきて客と交流し、まるで古くからの友人のような親しみやすさで接してくれます。私たちもすっかり打ち解けて、台南の文化や市場の変化について語り合いました。彼らによれば、永樂市場のリノベーションはまだ始まったばかりで、今後さらに多くのクリエイティブな店舗が集まることで、この場所が台南の新たな文化発信地になることを期待しているとのことでした。

こちらのバーも二層構造で、カウンター席から成る下層に対し、上層にはくつろぎスペースが

台南永樂市場の新たな可能性 - 伝統と革新の共存

永樂市場の変容は、台湾全体で見られるリノベーション文化の一部でありながらも、台南ならではの特色を持っています。それは「急激な変化を求めない」という姿勢です。台北や高雄などの大都市では、古い建物がわずか数年で完全に生まれ変わることも珍しくありませんが、台南の永樂市場は、あくまで伝統的な市場としての機能を維持しながら、緩やかに変化を遂げています。

1階部分は今でも朝から晩まで地元の人々で賑わい、新鮮な食材や伝統的な屋台料理が並びます。一方で2階部分は、週末になると若者や観光客で賑わうクリエイティブスペースへと変貌。この「二層構造」こそが、永樂市場リノベーションの最大の特徴といえるでしょう。

まとめ

台南永樂市場の変容は、古い建物に新たな命を吹き込むリノベーションの成功事例といえます。伝統的な市場文化を尊重しながらも、新しい価値を創造することで、世代を超えた交流の場が生まれています。この「伝統と革新の共存」という姿勢は、台湾のみならず、日本を含むアジア各国の古い商業施設の再生にとっても、一つのモデルケースとなるでしょう。

今後も台南の永樂市場は、過去と未来、伝統と革新が出会う場所として、さらなる進化を遂げていくはず。その変化を見守り、時には参加することも、台南を訪れる旅の新たな楽しみ方となるかもしれません。台南を訪れる際には、ぜひ永樂市場の2階にも足を運び、新しく生まれ変わりつつある市場の魅力を体験してみてください。静かに、しかし確実に変化しつつある永樂市場の姿は、きっと旅の思い出に鮮やかな彩りを添えてくれるはずです。

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