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なぜ「ボリスバイク」と呼ばれている?Santander Cyclesの裏に隠された名前の秘密とロンドンの交通革命の舞台裏

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以前当ブログでも紹介させていただいた、ロンドンの赤いレンタサイクルといえば「Santander Cycles」──でも現地の人たちはこれを「ボリスバイク(Boris Bikes)」と呼んでいます。一体なぜそんな呼び名が?銀行名がスポンサーなのに「ボリス」とは誰?今回はその名前の由来と、このシェアサイクルがロンドンにもたらした意外な革命の歴史を紐解いてみましょう。

前回記事はこちら!

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イギリスの政治家、ボリス・ジョンソン

「ボリスバイク」の「ボリス」とは、ボリス・ジョンソンのこと。彼は2008年から2016年までロンドン市長を務め、その後2019年から2022年まで英国首相として活躍した政治家です。

 

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ジョンソンといえば、トレードマークの金髪ボサボサ髪と、自転車で颯爽と街中を駆け抜ける姿が印象的でした。エリート出身でありながら、どこか親しみやすい人柄を演出していた政治家で、一部では自己PR上手とも評されていました。知名度はイギリス国内にとどまらず海を越え、実際に日本人でも、ニュース等で彼の姿を見た記憶が強く残っている方は多いのではないでしょうか。

彼が市長だった時代、ロンドンは深刻な大気汚染と交通渋滞に悩まされていました。そこでジョンソンが打ち出したのが、環境に優しく手軽な移動手段としての自転車シェアサービス──そしてこれを積極的に自らの功績としてアピールしていたことでも話題になりました。

「自転車で通勤する市長」というキャラクター作りと、街中に突如現れた青い自転車(現在は赤でしたが、当時は青)のインパクト、そして彼の熱心な自己PR。これらが組み合わさって、ロンドンの人々は皮肉半分、親しみ半分"ボリスのバイク"="Boris Bikes"と呼ぶようになったのです。この呼び名には「またボリスがやってるな...」といった、イギリス人らしい愛情のこもった皮肉も感じられます。

正式名称は実は別だった

実は、このレンタサイクルの正式名称は時代とともに変化しています。

Barclays Cycle Hire

最初の正式名称は「Barclays Cycle Hire」でした。スポンサーはイギリスの大手銀行バークレイズで、青と白のロゴが自転車に描かれていました。2015年からは、スペインの銀行サンタンデールがスポンサーとなり、正式名称も「Santander Cycles」に変更されました。赤いボディに白い文字で「Santander」と書かれたデザインが現在も使われています。

Santander Cycles

しかし、スポンサーが変わっても、ロンドン市民や観光客の間では「ボリスバイク」という愛称が定着してしまいました。これこそイギリス人らしい皮肉の効いた愛情表現。公式名称よりも、ちょっと茶化した愛称の方が浸透してしまうという、「権威をちょっとだけからかいながらも愛する」典型的なロンドンっぽさと言えるでしょう。

ボリスバイクが起こした交通革命

このシェアサイクルシステムは、単なる交通手段を超えて、ロンドンの街に大きな変化をもたらしました。

自動車利用の減少により、CO2排出量の削減大気質の改善に貢献しています。特に短距離移動において、車からバイクへの転換が進んだことで、ロンドンの空気がきれいになったという調査結果も報告されています。朝夕のラッシュ時間帯には、地下鉄やバスの代替手段として多くの人がボリスバイクを利用するようになり、道路渋滞が緩和され、全体的な移動効率が向上しています。

Testing the cycles

観光客にとっても、ロンドン市内を効率よく回れる手段として人気が高まりました。テムズ川沿いのサイクリングロードや、ハイドパークなどの公園を巡るコースは、まさにコスパ最強の観光スタイルとして定着しています。

現在、ロンドン市内には1万台以上のボリスバイクが配置され、800カ所以上のドッキングステーションが設置されています。もはや市の重要なインフラの一部として機能しているのです。

知って楽しい!ボリスバイクのトリビア

実は、ボリス・ジョンソン本人は「ボリスバイク」という呼び名を最初はあまり気に入っていなかったようです。後のインタビューでは「私の名前が付いてしまったが、これは市民全体のプロジェクトだ」とコメントしていました。愛情のこもった皮肉だということを、本人もうすうす感じ取っていたのかもしれませんね。

2012年のロンドンオリンピックの際、多くの外国メディアも「Boris Bike」として報道しました。これにより、「ボリスバイク」という愛称が国際的にも知られるようになったのです。ボリスバイクに乗っていると、地元の人から「Hey, Boris's bike!」と声をかけられることがあるそうです。これも、この乗り物が市民に愛されている(そしてちょっと茶化されている)ことを示すエピソードですね。

ちなみに年間利用回数は1000万回以上に達し、平均利用時間は約30分。最も人気の高い時間帯は平日の朝8-9時と夕方5-6時で、通勤利用が多いことがわかります。

ただの交通手段ではない「文化になった乗り物」

赤いボディに「Santander」の文字。でも心のどこかでそれは「ボリスバイク」として、ロンドンの街と市民の記憶に根付いています。

今や赤い二階建てバスや黒いタクシーと並んで、ボリスバイクはロンドンを象徴するアイコンの一つになりました。SNSでロンドン旅行の写真を投稿する際も、ボリスバイクと一緒に撮影する観光客が後を絶ちません。朝の通勤から週末のサイクリング、観光地巡りまで、ロンドン市民の日常生活に欠かせない存在となっています。まさに「生活に溶け込んだインフラ」と言えるでしょう。

ロンドンの成功事例を受けて、世界各都市でも類似のシェアサイクルシステムが導入されています。日本でのドコモバイクの普及にも似たようなムーブメントを感じますね。

まとめ:名前に込められた物語を知って、もっと楽しむロンドン旅

そんな背景を知って乗れば、レンタサイクルの旅もちょっと深く、楽しくなるかもしれません。次回ロンドンを訪れた際は、ぜひボリスバイクに乗りながら、この街の交通革命の歴史に思いを馳せてみてください。

赤い自転車に込められた物語を知ることで、ロンドンという街の奥深さを感じられるはずです。コスパ抜群の移動手段としてだけでなく、ロンドンの文化と歴史を体験できるツールとして、ボリスバイクを活用してみてくださいね。