少し前の話になりますが、スイスで体験した本格チーズフォンデュの衝撃があまりにも印象的だったので、今回改めて記事にすることにしました。日本で食べるチーズフォンデュとは全く違う、現地ならではの発見がたくさんありました!
スイスといえばチーズフォンデュ!冬の風物詩
スイスといえば、誰もが思い浮かべるのがチーズフォンデュですよね。特に冬の寒い季節には、スイスの人々にとってチーズフォンデュは欠かせない食文化の一部です。家族や友人と囲む温かなフォンデュ鍋は、まさにスイスの冬を象徴する光景といえるでしょう。
観光地だけでなく、地元の人たちが日常的に楽しんでいるチーズフォンデュを体験したい!そんな思いから、ベルンの旧市街地で評判のレストランを訪れることにしました。
ベルン旧市街地の名店「Arlequin」へ
今回お邪魔したのは、ベルン旧市街地の石畳の路地にひっそりと佇む「Arlequin」というレストラン。中世の面影を残す建物の1階に構える小さな入り口からは、温かな灯りと賑やかな笑い声が漏れ聞こえてきます。ここはとにかくチーズフォンデュが名物として知られており、世界遺産の旧市街地のど真ん中という絶好のロケーションにありながらも、日曜でも遅くまで営業している貴重なお店です。価格も観光地価格ではなく比較的リーズナブルな上に、チーズフォンデュがとにかく本格的という口コミを多く見かけたので、迷わずここに決めました。
ちなみに、ベルンをはじめとしてスイスの各地では、日曜日にレストランが休業することが多いので要注意です。リサーチ不足だと食事難民になってしまう可能性も...事前に候補地をいくつか調べておくことが旅行成功の秘訣ですね。
現地の人々で賑わう店内
この日も、スイスの現地の人々で店内はほぼ満席状態でした。低い天井と木製の梁が温かみのある雰囲気を演出する店内には、メインのレストランエリアと、カウンター越しに店主と談笑できるこじんまりとしたバーエリアがあります。
食事を終えた常連らしきおじさんたちが、バーでグラス片手に談笑している光景は、まさに地元に愛されるレストランの証拠。そして何より驚いたのが、テーブルを見渡すと、お客さんが全員といっていいほどあの赤い鍋でチーズフォンデュを楽しんでいたことです。まさに地元愛されメニューの証拠ですね!
本格派「Fondue Traditionell」を注文
チーズフォンデュには色々なバリエーションがありましたが、せっかくの機会なので本格的なフォンデュを食べたいということで「Fondue Traditionell」を選択しました。これはスイスの伝統的な作り方で作ってくれるチーズフォンデュで、一人24.5フラン(約3,600円)でした。
いよいよ本格フォンデュが登場!
待ちに待ったチーズフォンデュがついに登場!見覚えのある赤いホーロー鍋...テーブルに運ばれてきた瞬間、その迫力に思わず歓声が上がりました。日本で見るものより一回り大きな鍋からは、ぐつぐつと小さな泡を立てながら、黄金色に輝くチーズが顔を覗かせています。
そして鍋に顔を近づけた瞬間、鼻の奥をツンと刺激する独特のアルコール臭が...店員さんに聞いてみると、このトラディショナルな製法では、なんと地元のスピリッツを混ぜて作るとのこと!日本でも本格チーズフォンデュに白ワインを混ぜることはよくありますが、スピリッツとは...これは期待が高まります。
実食!スピリッツ入りの本格フォンデュの味は?
専用のフォークで、カリッと焼かれたパンの角切りをたっぷりとチーズに絡めて一口...口の中に広がったのは、想像を遥かに超える濃厚な世界でした。
まず舌に触れるのは、クリーミーでありながらもコクのあるチーズの旨味。そして後から追いかけてくるのが、スピリッツ特有の芳醇で少し野性的な香りです。まるで高原の牧場で熟成されたチーズを、山小屋の暖炉の前で味わっているような、なんとも言えない贅沢感。日本で食べ慣れたマイルドなチーズフォンデュとは全く別次元の、大人の味わいです。
ただし、正直に言うとこのワイルドさには好みが分かれるかもしれません。スピリッツの独特な香りと、チーズ本来の強い風味が合わさることで、かなりパンチの効いた味になっています。ワイン入りのチーズフォンデュに慣れていた私でも最初は少し驚きましたし、同行者には「これは...攻めてるね」と言われてしまいました。でも、この野性味こそがスイスの山の恵みを感じさえますし、食べていくうちに段々とやみつきになっていきます。
段々とストイックなチーズフォンデュ体験
前半はその圧倒的な美味しさに夢中になっていましたが、後半になってくると段々と現実が見えてきました。というのも、このチーズフォンデュ、ディップするものがパンしかないのです。
日本の家庭やレストランでは、色とりどりのウインナーやウズラの卵、緑鮮やかなブロッコリーなど、様々な食材をディップしながらバリエーション豊かに楽しむのが一般的ですよね。しかし、ここで提供されるのは素朴なパンの角切りのみ。もしかして別途オーダーするスタイルなのかと思い、こっそり周りのテーブルを観察してみました。
ところが、現地のお客さんたちも皆、黙々とパンだけをディップしています。隣のテーブルでは、食べ盛りの子供を連れたお母さんが「もう一つパンバスケットを」と追加注文していました。我々日本人にとっては、最初に盛られたパンだけでもお腹いっぱいになりそうなのに...これが伝統のスイス流なのでしょう。シンプルだからこそ、チーズとパンの組み合わせの奥深さを存分に味わえるのかもしれません。
チーズフォンデュには絶対ワインを!
もう一つ重要なポイントとして、チーズフォンデュと一緒にワインを飲むことを強くおすすめします。かなり大量のチーズを食べることになるので、胃腸がもたれたり気分が悪くなることもあります。そんな時、ワインは消化を助けてくれる頼もしい存在です。現地の人たちも皆、ワインと一緒に楽しんでいました。
まとめ:本場のチーズフォンデュは想像以上にストイック
今回のスイス・ベルンでの本格チーズフォンデュ体験は、日本で慣れ親しんだフォンデュとは全く異なるものでした。スピリッツの効いた濃厚なチーズと、パンのみというストイックなスタイルは、まさに現地ならではの文化。
日本のようにバラエティに富んだ具材を期待すると少し物足りなく感じるかもしれませんが、これこそがスイスの伝統的なチーズフォンデュの楽しみ方なのだと実感しました。チーズとパンという組み合わせの奥深さ、そしてワインとの相性の良さを改めて発見できた貴重な体験でした。
なお、今回食べたスピリッツ入りチーズフォンデュですが、本来伝統的スタイルでありながらも、現在は提供してくれるお店が減少傾向にあります。せっかくスイスに来たからには、本場伝統スタイルを味わいたいという方は、事前にレストランのメニュー情報をリサーチ・予約の上訪問することをお勧めします。
スイスを訪れる際は、ぜひ現地のローカルレストランで本格的なチーズフォンデュに挑戦してみてください。きっと新しい発見があるはずです!
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