エジプト旅行で最も印象に残った体験の一つが、イスラミック・カイロの路地裏で味わったディープなシーシャ体験だった。観光ガイドブックには載っていない、地元の人たちだけが知る隠れた名店での出来事をお伝えしたい。
エジプトに根付くシーシャ文化

エジプトでシーシャ(水パイプ)は単なる嗜好品ではなく、社交の場を彩る重要な文化的要素だ。カフェや茶店では老若男女(とは言っても大半はおじさん)が集まり、ゆったりとした時間を過ごしながらシーシャを楽しむ光景が日常的に見られる。特にイスラミック・カイロのような歴史ある地区では、何百年も前から続く伝統的なシーシャ文化が今も色濃く残っている。
現地のシーシャは観光地のものとは一線を画す。フレーバーの種類や味というよりも、何より雰囲気が全く違う。今回体験したのは、まさにその「本物」のシーシャ文化だった。
Ibn Tulun モスク訪問後の偶然の発見
この日は午後からIbn Tulunモスクを訪れていた。9世紀に建設されたこの古いモスクは、カイロ最古のモスクの一つとして知られ、その荘厳な雰囲気に圧倒された。
モスク見学を終えて周辺を散策していると、古い石造りの建物に囲まれた細い路地の交差点で、興味深い光景に出会った。

そこには道路にせり出すような形で置かれた簡素な椅子とテーブル、そして数人の地元の男性たちがシーシャを楽しんでいる小さな店があった。看板らしい看板もなく、観光客向けの装飾も一切ない。まさに「がちディープシーシャ屋」という表現がぴったりの場所だった。

せっかくエジプトまで来たのだから、観光地化されていない本場のディープシーシャを味わってみたい。そんな好奇心に駆られて、我々3人はその店に足を向けることにした。
ただし、全員が非喫煙者という事情があった。急性ニコチン中毒を避けるため、一人一つのシーシャを注文するのではなく、3人で一つをシェアすることにした。これが結果的に、よりローカルな体験につながった。
日本とは異なるシーシャの楽しみ方

日本のシーシャバーや観光地化された中東各地のシーシャカフェでは、一般的に衛生面を考慮してマウスピースが提供される。しかし、この店では当然のようにマウスピースはなし。要するに間接キスで回し吸いするスタイルだった。
最初は少し戸惑ったが、これこそがイスラミックカイロならではの本来のシーシャの楽しみ方なのだろう。仲間同士でシーシャを回しながら語り合う、その親密さと連帯感を味わうことができた。

ところで、シーシャといえば様々なフレーバーが楽しめるのが魅力の一つ。この店でも、キウイやミント、ローズなど、どんなフレーバーがあるかワクワクしながら店主に尋ねた。「キウイがいいかな」「いや、ローズはどうだろう」と3人で相談していると、店主から意外な答えが返ってきた。
「リンゴしかないよ」
え、リンゴしかないの?本当に営業する気あるの?と内心困惑した。しかし、よく見回してみると、店にいるローカル客たちは皆、リンゴフレーバーのシーシャを楽しそうに吸っている。きっとこの店の定番で、おすすめフレーバーなのだろう(もしかしたら単にめんどくさくてリンゴしか置いてないだけかもしれないが)。

実際に味わってみると、リンゴフレーバーは今まさに我々が欲していた風味だった。甘すぎず、さっぱりとしていて、エジプトの暑く乾燥した気候にもよく合う。
煙は思ったより軽やかで、非喫煙者でも比較的楽に楽しめた。ガチローカル店だからニコチンがヘビーだなんてことも特にない。3人で回しながら吸うペースも程よく、ゆっくりとした時間を過ごすことができた。

シーシャと一緒に紅茶、コーラを注文した。出てきたのは、ティーバッグの入った何の変哲もない紅茶。だがそれが何とも飾らなくて良い。熱い屋外にも関わらず、ホットでいただくのが現地流だ。せっかくならばと現地スタイルに則り、砂糖をティースプーン山盛りに、何杯もお茶にぶち込んでから頂いた。

コーラは、日本でよく見るものより細長いガラス瓶に入ったコーラで、アラビア語のロゴが印字。飲み慣れたコーラの味ではあるが、炭酸の爽快感がシーシャの煙と絶妙にマッチして、なんとなくエジプトらしさを感じることができた。
席のすぐ側には安っぽい大きめのスピーカーが置かれており、そこから耳が痛くなるような爆音でエジプシャンダンスミュージックが流れていた。正直なところ、我々にとってはうるさすぎて会話もままならない状況だった。
しかし、これこそが現地流なのだろう。地元の人たちは慣れたもので、大音量の音楽の中でも楽しそうに談笑している。このカオスな雰囲気も含めて、観光地では味わえない本物のカイロ体験だった。
本物のエジプト体験ができた貴重な時間
約30分ほど滞在し、地元の人たちと同じ空間で同じ時間を過ごした。言葉は通じなくても、シーシャを通じて何か共通の体験を分かち合えたような気がした。
観光地化されたシーシャカフェでは決して味わえない、生のエジプト文化に触れることができた貴重な体験だった。フレーバーの選択肢がリンゴしかなかったり、爆音の音楽だったり、マウスピースがなかったりと、一見不便に思える要素も、すべてがローカルならではの証拠だった。
なお、金額は3人で確か500円程度だっただろうか。次回カイロを訪れる機会があれば、また同じような隠れた名店を探してみたい。
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