
前編では、シーラーズからペルセポリスまでの道のりと、万国門でのイラン人観光客との出会いまでをお伝えしました。後編では、いよいよペルセポリスの核心部分である主要遺跡群の詳細な見学レポートと、この日最も印象的だった山崖登りの体験についてお伝えします。
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謁見の間:圧倒的なスケールとレリーフ芸術

万国門を抜けて右手に進むと、ペルセポリス最大の建造物である謁見の間(Apadana Palace)に到着します。約60メートル四方の巨大な空間で、現在残っている13本の柱を見上げると、かつて72本の柱がここに立っていたことが信じられないほどです。高さ20メートルの柱が林立していた当時の光景を想像すると、その壮大さに圧倒されます。
この建物の見どころは階段のレリーフです。北階段に刻まれた朝貢の儀式の場面は、本当に圧巻でした。帝国の23の属州から来た使節団が、それぞれの地域特産の貢物を携えて王に謁見する様子が、まるで昨日彫られたかのように鮮明に残っています。

東階段のレリーフで特に印象的だったのは、牛の尻にかぶりつくライオン(描写がとても生々しい!)アルメニア人が金の器と馬を献上する場面、インド人が象の牙を運ぶ姿、スキタイ人の弓と馬の装飾品、カッパドキア人の美しい織物などです。各民族の服装、髪型、持参品が全て異なって表現されていて、当時の国際性を感じることができました。一人一人の表情まで丁寧に彫り分けられており、2500年前の職人の技術の高さに驚かされます。
百柱の間:王の威厳を感じる空間

謁見の間の南側に位置する百柱の間(Throne Hall / Hall of 100 Columns)は、約70メートル四方の空間で、王が正式な謁見を行う最も重要な場所でした。残念ながら柱はほとんど残っていませんが、基礎部分から当時の規模を想像できます。100本の柱が整然と並んでいた光景は、さぞかし圧巻だったでしょう。
入口の門枠に彫られた王が怪物と戦う場面は迫力満点で、特に翼を持つライオンと戦う王の姿には思わず見入ってしまいました。これらのレリーフは王の力強さと正義を象徴しており、訪れる使節団に対する威厳の演出でもありました。
王宮群での静寂な時間

謁見の間の南西に位置するタチャラ(Tachara / Palace of Darius I)は、ダレイオス1世の私的な宮殿でした。「タチャラ」は「冬の宮殿」を意味するそうで、比較的小規模ながら装飾の精巧さに驚きました。公的な謁見の間とは異なり、ここは王の私的な空間だったため、より繊細で洗練された装飾が施されています。

タチャラの南側に隣接するハディッシュ(Hadish / Palace of Xerxes I)は、クセルクセス1世の宮殿です。「ハディッシュ」は「天の宮殿」を意味し、父王の死後に息子のクセルクセス1世によって建設されました。ここでは王が天幕の下で臣下と面会する場面のレリーフが素晴らしく保存されていました。また、宮殿の基礎部分で排水システムの跡も確認でき、当時の先進的な建築技術に感心しました。

宮殿群の東側には宝物庫(Treasury)の跡があります。現在は基礎部分のみですが、その規模の大きさから当時の富の集積を想像できます。アレクサンドロス大王によって略奪されたという話を聞くと、歴史の皮肉を感じずにはいられませんでした。帝国各地から集められた膨大な財宝が、ここに眠っていたのです。
山崖への登頂体験:最大のハイライト

一通り平地の遺跡を見学した後、この日最も印象的だった体験が山崖登りでした。遺跡の背後にそびえる岩山を見上げていると、なんと何人かの人が登っているのが見えたんです。「あ、登れるんだ」と思って真似してみることに。
前日の雨で石が少し湿っていたので、滑らないかと心配でしたが、意を決して登り始めました。ちなみに、山は登ってもOKですが、立ち入り禁止の遺跡の中などに入るとすぐに警備員にピピーと笛を鳴らされるので、ルールを守って楽しむことが大切です。実際、見学中にも何度か笛の音が聞こえていました。

登山道は狭く、所々で岩を掴みながら進む必要があります。足元の石が湿っているため、慎重に一歩一歩進みました。15分ほどの登りでしたが、途中で振り返ると、ペルセポリス全体が眼下に広がる絶景が広がっていました。高度を上げるにつれて、遺跡の全体像がより明確に見えてきます。

山崖の上には、Ardeshir2世の墓など、実は小さな遺構がいくつかあります。完全に崩れているものもありますが、見張り台や小さな神殿のようなものがあります。ガイドブックにもあまり詳しく載っていない場所なので、到達した時の喜びは格別でした。

そして何より、ここからの眺めは最高でした。遺跡全体のレイアウトが手に取るように分かり、謁見の間、百柱の間、王宮群の配置関係が一目瞭然です。古代ペルシャの王たちもこの景色を見ていたのかと思うと、感慨深いものがありました。おそらく王や高官たちは、ここから自分たちの帝国の象徴を見下ろし、その栄光を実感していたのでしょう。

下山する時は、やはり少し足元が滑りやすく、慎重に降りました。特に湿った石の部分では、手すりとして使える岩を確認しながら進む必要がありました。しかし、この体験は今回の旅行で最も印象に残る出来事の一つでした。地元の若者たちも一緒に登っていて、山の上で記念撮影をしたのも良い思い出です。彼らにとってもこの場所は特別で、時々の休みの日に登りに来るのだそうです。

時を超えた感動
ペルセポリス見学を通して最も印象的だったのは、2500年という時間の重みでした。アレクサンドロス大王による破壊、イスラム征服、モンゴル来襲、近代化の波...数々の歴史の荒波を乗り越えて、なお私たちの前に堂々と立ち続けるこの遺跡は、まさに人類共通の宝物だと感じました。
特に朝貢の儀式のレリーフを見ていると、当時の国際的な寛容さと多様性に驚かされます。征服者でありながら、被征服民族の文化を尊重し、それぞれの特色を活かした統治を行っていたペルシャ帝国の姿勢は、現代においても学ぶべき点が多いように思われます。

まとめ
ペルセポリス訪問は、想像を遥かに超える感動的な体験でした。特に山崖からの眺めと、地元のイラン人との交流は、一生忘れられない思い出となりました。雨上がりの石が見せる深い色合い、山崖での少しスリリングな体験、そして各国の使節が平和的に集う謁見の間のレリーフ、何より温かいイラン人との出会い...これらすべてが、古代ペルシャ帝国の多様性と寛容さを物語っているように感じられました。
朝10時にシーラーズを出発し、16時過ぎに帰着するまでの6時間強は、まさに時空を超えた旅でした。次回イランを訪れる機会があれば、今度は乾季に来て、また違った表情のペルセポリスを見てみたいと思います。皆さんもぜひ、この素晴らしい世界遺産を実際に体験してみてください。きっと、歴史に対する見方が変わることでしょう。
そして、次回はペルセポリスの後に訪問したナクシェ・ロスタムの様子について、レポートを綴っていきます。
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