
カッパドキアの奇岩群、イスタンブールの歴史的建造物、エーゲ海の美しい海岸線。トルコには、ドローンで撮影したくなる絶景スポットが数多く存在します。しかし、トルコのドローン規制について調べてみると、ネット上で情報が錯綜しており、「外国人は一切飛行禁止」という記事もあれば、「250gなら問題なし」という情報もあります。
実は、中東地域を旅行する際、多くの国でドローンの持ち込み自体が厳格に制限されています。例えば、イランでは外国人のドローン持ち込みは事実上不可能で、サウジアラビアやUAEでも複雑な事前申請が必要です。ヨルダンやエジプトなども、観光客がドローンを使用するには高いハードルが設けられているのが現状です。
そんな中で、トルコは中東地域では例外的にドローンに寛容な国として知られています。完全に自由というわけではありませんが、適切な手続きを踏めば外国人でもドローンを使用できる可能性があり、中東地域でドローン撮影を楽しみたい旅行者にとって貴重な選択肢となっています。
ただし、トルコでも規制は存在し、しかも情報が錯綜している状況があります。本記事では、現在判明している最新の規制情報を整理し、外国人旅行客がトルコでドローンを使用する際に知っておくべきポイントを詳しく見ていきましょう。なお、規制は頻繁に変更されるため、実際の渡航前には必ず現地機関(SHGM:トルコ民間航空総局)に最新情報をご確認ください。
なぜ情報が錯綜するのか
トルコのドローン規制について正確な情報を見つけるのが困難な理由として、2016年以降規制が頻繁に変更されていることが挙げられます。同じ政府機関からも時期により異なる見解が示されており、特に外国人に関する規制の解釈が曖昧な状況が続いています。さらに、登録システムが断続的にメンテナンス中になることも、情報収集を困難にしています。
このような状況のため、本記事では現時点で最も信頼できると思われる情報をご紹介しますが、あくまで参考程度にとどめ、実際の利用前には必ず公式機関にご確認ください。
ドローンの重量で大きく変わる規制内容
250g未満のドローン:規制対象外の可能性が高い
複数の情報源を総合的に調査した結果、250gのドローンは外国人でも規制対象外である可能性が高いことが判明しています。特に注目すべきは、2022年にSHGM(トルコ民間航空総局)が外国人からの問い合わせに対して「500g未満のドローンは国家規制の対象外であり、技術適合性も不要。税関での入国についてもSHGMは責任を負わない」と回答していることです。この公式見解は、複数のドローン情報サイトや旅行者の体験談でも裏付けられています。
つまり、DJI Mini シリーズのような250g未満のドローンであれば、登録や事前申請、技術適合性証明、税関での特別手続きなどは基本的に不要ということになります。ただし、後述する飛行時の基本ルールは重量に関係なく適用されます。
500g以上のドローン:複雑な手続きが必要
一方、500g以上のドローンを持ち込む場合は状況が一変します。20営業日前の事前申請を外交ルートを通じて行う必要があり、技術適合性証明書(FR.03)の取得、犯罪歴証明書の提出、保険証書の提出などが求められます。さらに、実際の飛行時にはトルコ人パイロットによる監督が必要になる場合もあるとのこと。
これらの手続きは非常に煩雑で、観光目的での利用には現実的ではありません。そのため、トルコ旅行でドローンを使いたい場合は、250g未満のモデルを選択することを強くお勧めします。
おすすめのドローンモデル
トルコ旅行にドローンを持って行く場合、私がもっともおすすめするのはDJI Mini 4 Proです。重量が249gのため、ヨーロッパ諸国などを含む海外への持ち込み時に手続き申請を簡略化できる他、4K/60fpsの高画質撮影が可能です。3方向の障害物検知センサーが搭載され安全性が高く、初心者でも比較的気軽に飛行できる上、軽量モデルの中では群を抜いて耐風性が高いのが魅力。小型ドローンにありがちな、ちょっとの風で操縦可能になったり、紛失するといった心配もありません。最大34分の飛行時間で、一度の充電で十分な撮影が可能。折りたたみ式で持ち運びやすく、計量のため旅行に最適、など良いとこ尽くしのモデルとなります。
※DJI mini 4 proを購入する際は、予備バッテリーや重電ハブが付属したこちらのセットがお得です。
ちなみに、私自身旅行に出かける際は上記のDJI Mini 4 Proか、もしくは渡航先国の重量規制が緩い場合はAir 3を持って行くことが多いです。Air 3は720g、とMiniシリーズと比べて少し重めではありますが、ドローンの中では軽量の部類。それでいてレンズを二つ持っており、広角・望遠撮影を使い分けることができるため、よりがっつり撮影をしたい場合にはオススメです。
どこでも自由に飛ばせるわけではない

さて、トルコ国内のルールに話を戻します。重量に関係なく、トルコでドローンを飛行させる際は基本的なルールを守る必要があります。最大高度は地上120m以下に制限されており、常に目視範囲内での飛行が求められます。また、基本的に日中のみの飛行となります。
飛行禁止エリアも多数設定されており、空港から9km以内、軍事施設周辺、政府関連施設、人混みや住宅地上空、国境付近などでは飛行できません。これらの制限は250g未満のドローンでも適用されるため、事前の確認が重要です。
飛行時は人やプライバシーを尊重し、野生動物を驚かせないよう配慮することも大切です。緊急車両や航空機が近づいた場合は、即座に着陸させる必要があります。
カッパドキアでの特別な注意事項

ところで、筆者がカッパドキアの民間飛行事業者に確認したところ、興味深い情報を得ることができました。カッパドキアでのドローン飛行は、一般的な観光地と比べて「比較的自由」とのことです。広大な自然環境のため、人口密集地から離れた場所での撮影機会が多いのが理由です。
しかし、カッパドキアには絶対に守らなければならない重要なルールがあります。それは、気球フライト中は絶対にドローンを飛ばしてはいけないということです。
カッパドキアの名物である熱気球は、通常朝の便(日の出前後5:30-7:30頃)と夕方の便(日没前後17:00-19:00頃、季節により変動)に運航されます。この時間帯は、ドローンの飛行を控えることが強く推奨されます。気球との接触事故は重大な結果を招く可能性があるためです。
保険や違反リスクについて
トルコでは商用利用の場合は保険加入が義務付けられていますが、趣味利用での保険要件は明確ではありません。ただし、万一の事故に備えて、日本のドローン保険が海外でも有効か事前確認することや、海外旅行保険でドローン事故がカバーされるか確認することをお勧めします。
トルコでのドローン規制違反は、ドローンの没収、高額な罰金、最悪の場合は拘束される可能性もあります。特に軍事施設や政府関連施設の近くでの無許可飛行は、重大な結果を招く可能性があるため絶対に避けましょう。
ネット上の体験談から見えること
これまで原則としてのお話を取り上げてきましたが、実際にはネット上で様々な体験談が見つかります。「2018年にMavic Air(430g)を持ち込み、問題なく飛行できた」「DJI Mini 2(249g)で税関で問題なし」といった成功例がある一方で、「税関でドローンを没収され、70ドル支払って返却してもらった」「申請書類が複雑すぎて手続きを断念」といったトラブル例も報告されています。
これらの体験談からも、おそらく対応するスタッフによって認識が異なるためなのか、規制の解釈や執行に一貫性がないことが分かります。例えルールを遵守している認識であっても、思わぬ理由でドローン没収や飛行禁止措置等を受ける可能性があることに留意しましょう。
結論:慎重に準備すれば撮影は可能
現時点で最も信頼できる情報を総合すると、250g未満のドローンであれば外国人でも持ち込み・飛行が可能と考えられます。ただし、100%確実とは言えないため、以下の準備をお勧めします。
まず、250g未満のドローン(DJI Mini シリーズなど)を選択し、事前にSHGM(ihadestek@shgm.gov.tr)に確認を取ることです。飛行禁止エリアを事前に調べ、カッパドキアでは気球の時間を避け、保険についても確認しておきましょう。そして何より、現地の法律を尊重し、マナーを守ることが重要です。
筆者の個人的な見解としては、事前にしっかりと調べ、適切な機材を選び、基本ルールを守れば、トルコでのドローン撮影は十分可能だと考えます。ただし、ドローンなしでも楽しめる旅行プランを用意しておくことも大切です。
【おまけ】申請が面倒な時の代替案:Insta360 Xシリーズ

ここまでドローン規制やルールについて見てきましたが、「申請が複雑すぎて面倒」「手続きが煩雑で時間がない」と感じる方も多いのではないでしょうか。また、せっかく準備しても現地で規制に引っかかったり、天候や飛行禁止エリアの影響で思うように撮影できない場面もあります。
そんな時の強力な代替手段として、私が強くおすすめしたいのがInsta360のXシリーズと3mの自撮り棒の組み合わせです。
360度カメラと長い自撮り棒を使えば、ドローンで空撮したかのような迫力ある写真や動画を撮影できます。特に注目すべきは「見えない自撮り棒」機能で、編集時に自撮り棒が自動で消去されるため、まさに空中から撮影したような仕上がりになります。
ドローンと比べて以下のようなメリットがあります:
- コストが圧倒的に安い(ドローンの半額以下で購入可能)
- 事前申請や複雑な手続きが一切不要
- 飛行禁止エリアを気にする必要がない
- 天候に左右されにくい
- 防水対応で水中撮影も可能(海やプールでも安心)
- 人が多い観光地でも安全に使用可能
- 荷物も軽く、持ち運びが簡単
- バッテリー切れの心配が少ない
- 万が一の人身事故を気にする必要がない

海外旅行での絶景撮影を確実に楽しみたい方、ドローンの申請が面倒に感じる方、できるだけ費用を抑えたい方には、非常におすすめの組み合わせです。
注意事項:本記事の情報は2025年8月時点での情報をまとめたものです。トルコのドローン規制は頻繁に変更される可能性があり、情報が錯綜している状況です。実際のドローン使用に際しては、必ずSHGM(トルコ民間航空総局、メール:ihadestek@shgm.gov.tr、電話:+90 (312) 203 60 00)に最新の規制を確認し、自己責任のもとで判断してください。




