
ホテル・ケーニヒスクローネ(Hotel Königskrone)――神戸の老舗洋菓子店「ケーニヒスクローネ」の直営ホテル。以前から気になっていたこのホテルに、今回晴れて泊まる機会が得られた。2泊3日の滞在をレポートしたい。
結論から言うと、ケーニヒスクローネファンなら一生に一度は泊まるべきホテルだった。
ホテル・ケーニヒスクローネとは?

読者の皆様は既にご存知かもしれないが、ケーニヒスクローネとは、神戸を代表する老舗洋菓子店。1977年創業で、看板商品は「クローネ」というサクサクのパイ生地にクリームを挟んだ焼き菓子だ。神戸市内を中心に多数の店舗を展開し、地元民には馴染み深いブランド。
そのケーニヒスクローネが2013年にオープンさせたのが、この直営ホテルだ。場所は神戸の旧居留地エリア。洋菓子店の直営ホテルということで、当然ながらスイーツに特化したサービスが売りとなっている。
特に朝食ビュッフェのデザート充実度は他の追随を許さないレベルで有名。ケーニヒスクローネファンはもちろん、スイーツ好きの間では憧れのホテルとして知られている。
余談だが、ケーニヒスクローネには「継荷比州吼浪音」という公式漢字表記があるらしい。荷を継(つな)ぎ、州(くに)に比(ひとし)くす、吼(ほ)ゆる浪の音、という意味らしいが、個人的には「愛羅武勇」のようなヤンキー当て字を想起してしまう。このお茶目っぷりも、ある種ケーニヒスクローネが愛される所以なのだろう。
チェックイン:プレゼント攻撃の洗礼

ホテルに到着すると、まずロビーの雰囲気に驚く。重厚感あふれる内装に鎮座するソファには、糸で織り込まれた繊細な柄が施されている。アンティーク調の大理石テーブルともよく合っている。空気にはほのかにクリームのような甘い香りが漂っていて、いかにもスイーツホテルらしい雰囲気だ。


フロントで手続きを済ませると、いきなりプレゼントタイムが始まる。カウンターに並んだ商品の中から好きなものを一つ選べるとのこと。通常1,000〜2,000円相当のお菓子入りの缶ケース、旅行用ポーチ、トートバッグなどが実物で展示されている。
私が選んだのは、このホテルの外観写真がプリントされた金属製のお菓子入りケース。記念になりそうで嬉しい。

さらにお土産用のクッキーと、抹茶ゼリーも手渡される。抹茶ゼリーの賞味期限はまさかの明日!どうやら、お部屋でごゆっくりどうぞという意味だろうか。朝食券、次回宿泊用の500円クーポンと次々に一緒に受け取った時点で、すでに手がいっぱいになっている(なお、このあたりの特典は宿泊プランによって異なるので要注意)。

さらにその夜、エントランスを通りかかった時にフロントスタッフの方に呼び止められた。部屋の清掃を希望するかどうか質問を受けたので、結構だと回答。個人的には単なるエコのつもりであったが、清掃を辞退していただいたお礼ということで、商品購入用の1,000円クーポンを手渡してくれた。このホテルのプレゼント攻撃は良い意味で本当に容赦ない。
館内探検:ポチの巣

外来向けの営業時間が終わった後、誰もいない館内を散策。1階・2階がレストラン、3階以上が客室という構造だ。全体的にヨーロッパのクラシックホテルを彷彿とさせる内装で、大理石調の仕上げ、濃いブラウンの木材と深い赤色のファブリックが基調となっている。

そして、館内のあらゆる場所に、ふわふわのクマのクッションが配置されている。これがケーニヒスクローネの公式キャラクター「くまのポチ」。ポチという名前なのに見た目はクマという、なんとも不思議なキャラクターだ。

カラーバリエーションも豊富で、ベージュ、ブラウン、ピンク、ブルー、赤など様々。エレベーターホール、廊下の休憩スペース、ロビーのソファなど、本当にどこにでもいる。
客室:レトロヨーロピアンな空間

客室も館内と同じレトロヨーロピアンスタイル。扉を開けると、ベッドの上とチェアの上に、それぞれ1匹ずつポチが座っている。もはや人間よりもポチの方が住民感がある。

ベッドリネンは真っ白なコットンでサラサラとした手触り。ベッドの足元には幅広のベンチが配置されていて、座ったり荷物を置いたりできる。


私の部屋はテラス付きで、思いのほか広いスペースだった。コンクリートの床をペタペタと進み、冷たい金属製の手すりの方へと目をやれば、居留地駅前の大通りが見える。夜になると車のヘッドライトが流れて、意外にも美しい夜景を楽しめた。


水回りはシンプルで機能的。特別豪華ではないが、清潔で使いやすい。

さて、クマのポチ。最初はただの可愛いクッションという認識だったが、2泊もすると自然と愛着が湧いてくる。部屋で過ごす時間が長くなると、ベッドやチェアのポチたちと何度も目が合う。触ってみると想像以上にやわらかくて、つい手が伸びてしまう。

これが単純接触効果というやつだろう。館内を歩いていても、自然とポチの配置が気になり始める。
結局、2日目にフロントのポチグッズ販売コーナーで、1,000円クーポンを使って小さなぬいぐるみを一つ購入してしまった。完全に術中にハマった感覚だが、今でも手触りの良さに満足している。

宿泊編のまとめ
ホテル・ケーニヒスクローネの宿泊体験は、チェックインから始まるプレゼント攻撃と、館内に住むポチたちによる静かな包囲作戦で構成されている。
ロビーに漂うスイーツの香り、上質な内装、そしてどこにでもいるポチたち。徹底的な「おもてなし」に、素直に嬉しくなってしまう。
次回は【食事編】で、このホテルの真骨頂である食事について詳しくレポートしたい。ウェルカムスイーツから朝食ビュッフェまで、スイーツ好きには天国のような体験が待っている。