前回は、砂漠でのテント滞在と日中の散策体験をレポートした。午後から夕方にかけての砂漠散策では、足を取られる砂の感触や、見渡す限り続く砂丘の美しさを存分に体験できた。
第3回となる今回は、いよいよ砂漠キャンプの真の醍醐味である夜から朝にかけての体験をお届けしよう。
人の気配が皆無の世界

月牙泉や敦煌夜市でひとしきり遊んできた後、深夜0時を回る頃にキャンプ場へ帰還した。例のごとくDiDiは少し離れた場所にドロップしてくれたので、そこからは徒歩でキャンプ場を目指す。
深夜ということもあり、日中にもまして人の気配は皆無。道中で出会ったあのラクダたちも、みんなスヤスヤと眠っているのだろうか。この道中がすでにたまらない体験だった。

敦煌の市街地を離れた立地のおかげで、空には透明感のある星空が広がり、星がたくさん美しく輝いている。光害のない環境で見る星空は、やはり格別だ。
真夜中の砂漠で途方に暮れる

キャンプ場に到着し、誰もいないレセプションを通り抜けて、一旦自分のテントへダイレクトに帰還しようとした。ところがどっこい、似たようなテントが100基ほどある中、私のテントがどれだったか思い出せない。

昼と夜とでは景色がまるで異なるということもあり、どれが自分のものだったか全く見当がつかないのだ。なんとなくこのあたりだったかなと記憶を頼りに探るものの、自分のテントになかなか出会えない。似たようなテント、似たような景色が多すぎる。

幸いにも私は自分のテントに小さな目印をつけていたので、最終的にはそれを手掛かりに、20分ほどかかって見つけることができた。しかし真夜中の砂漠で、自分のテントを見つけられないまま野宿をせざるを得ないのではないかと思うと、正直ヒヤッとした。この目印の具体的な方法については、別途番外編記事で砂漠キャンプの注意事項として詳しくまとめる予定だ。
夜の砂丘へ

テントで一息ついてから、せっかくなので夜の砂漠でチルアウトすることにした。日中に対して気温はやはりぐんと下がった印象。青海省の海南チベット自治州で買ってきた青稞酒の残りを持って、一人で真夜中の砂丘へと出かけていく。
砂丘に登り、仰向けに寝転がる。涼しい風が肌をかすめるが、シルクのように柔らかい砂にはほんのり日中の温かさが残っている。少し体が砂の中に沈み込む感覚が心地よい。寝転がりながら、満天の星空を眺める贅沢な時間。
中国らしい砂漠の賑わい

とはいえ、深夜にもかかわらず近所のキャンプ場では何やら爆音で音楽を流しており、テントを青や紫などにライトアップしている。中国っぽいなあと苦笑い。そんな人工的な明かりもあったため、完全に静かな空間の中で天の川がくっきりとまではいかなかったが、それでも砂漠の夜に没入するには十分だった。
砂丘から、私のいたテントのあった方向を見下ろすと、これまた幻想的。砂漠の中に規則的に並んだテントが、まるで砂漠に浮かぶ小さな村のよう。青稞酒をあおって程よく酩酊していると、ふと後ろからどーんと音が響く。
なんと遠くの方で花火が上がっている。おそらくは月牙泉あたりで花火が打ち上がっているのだろうか。こんな深夜だというのに、さすが中国は賑やかだなと感心してしまう。

夜の砂丘を独り占めする贅沢な時間を、約1時間ほど楽しんだ。青稞酒の効果もあって、日常の喧騒から完全に切り離された特別な時間を過ごすことができた。
明日に備えてシャワーを浴び、就寝することに。私のテントからシャワーがあるレセプションエリアへは、砂丘の中を歩いて5分ほどの距離だ。このシャワーなどの設備詳細については、次回記事で詳しく書く予定なので、ぜひそちらもチェックしてほしい。
砂漠から昇る三日月
シャワーからテントへと戻ろうとした時のこと、とても美しい景色に出会った。砂丘から三日月が上がってきたのだ。

月牙泉は三日月型であるとはよく言ったものだが、まさかこんな名もなき砂漠でも美しい三日月を拝むことができるとは。時刻はすでに深夜2時。いよいよ寝ようと思っていたものの、すっかりその三日月に見とれてしまい、時が経つのを忘れてしまった。
砂漠の静寂の中、三日月だけが静かに空に浮かんでいる。この瞬間ほど、敦煌という土地の神秘性を感じたことはなかった。
ひとしきり砂漠の夜を楽しんだ後、テントの中で泥のように眠りについた。流石にこのころには近所のキャンプもすっかり寝静まっていた。気づけば、都市部では決して味わえない、深い静寂に包まれた睡眠。時々吹く風がテントを揺らす音だけが、砂漠の夜を物語っていた。
砂漠の夜明け

目が覚めたのは朝の7時。敦煌は中国の西に位置するため日の出は遅い。予定よりも寝坊してしまったが、幸いにも日の出の時間に間に合った。ぼさぼさの髪をそのままに、急いで体を叩き起こしてテントの外に出る。

夜にもまして寒い。そして、まだ完全に起ききっていない体を奮い立たせながら小高い砂丘を上り、日の出を見ようと待機する。砂丘を上りきる頃にはぜぇぜぇで、体もすっかり熱くなった。
朝から賑やかな砂漠

こんな朝っぱらだというのに、すでに隣のキャンプでは中国人観光客たちがバギーツアーに興じている。バギーで私のいる砂丘すれすれをかすめていく。また違う方向ではラクダのキャラバンが見える。観光客を乗せ、これから砂漠の奥地へ旅立っていくのだろうか。

そんな賑やかな朝の砂漠の中、ついに日の出が昇る。朝日を浴びるテントたちの光景は素晴らしく印象的だった。夜の涼しげで神秘的な景色とはまた打って変わって、朝の砂漠は活気に満ちていた。

朝の砂漠は、夕方とはまた違った美しさがある。個人的には、昼の砂漠以上に、朝日が砂丘を斜めに照らすこの時間帯の砂漠のほうが美しいと感じる。砂の粒子一つ一つが金色に輝いている。空気が澄んでいて、遠くの砂丘まではっきりと見渡せる。朝の清々しい空気を胸いっぱいに吸い込みながら、昨夜過ごした砂丘をひとしきり歩いてみる。夜とは全く異なる表情の砂漠が、そこには広がっていた。
第3回まとめ:砂漠の夜から朝への時間の流れ

砂漠キャンプの真の醍醐味は、やはり夜から朝にかけての時間にあった。深夜の星空、三日月との出会い、そして朝の静寂。これらすべてが、都市部では絶対に体験できない貴重な時間だった。
次回記事では、砂漠キャンプの利用を検討している方々により有益な情報を届けるべく、このキャンプ場の設備詳細についてしっかりレポートしていく予定だ。
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