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クリントンが訪れた陽朔興坪の秘境「漁村」を目指して②往路編:地図無き山道の困難と絶景の報酬

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前編では興坪漁村とは何か、なぜ到達困難なのか、そしてどのような計画を立てたのかを解説した。

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今回の②往路編では実際に山道を歩き、困難に直面し、そして漁村へたどり着くまでの体験を詳しくお伝えする。これから漁村を訪れようと考えている方々にとって、この記録が道標となれば幸いである。成功も失敗も含めて、ありのままを記録する。

10:30 興坪古鎮を出発――旅の始まり

朝10:30、興坪古鎮を出発した。古鎮は既に観光客で賑わっている。20元札の裏面に描かれた山水風景を見るための展望台へ向かう人々、レストランで朝食を取る人々、土産物を眺める人々。しかし今回の目的地はここではない。

スマホの高徳地図アプリで「獅子嵅」を検索し、ナビを開始した。画面に表示されるルートに従って歩き始める。古鎮の喧騒を抜け住宅地に入っていくと、観光客の姿は徐々に減り地元の人々の生活空間へと変わっていく。道は舗装されており、特に問題はない。

獅子嵅への道――順調な滑り出し

獅子嵅のあたりまでは難なく通過できた。ナビの指示に従って進むだけで、特に迷うこともない。周囲には民家が点在し、畑が広がっている。典型的な中国南部の農村風景である。

そこからもしばらくは舗装道路が続いた。ある程度は電動車(電動スクーター)でも来られそうな道である。実際、途中で何台かの電動車とすれ違った。農作業に向かう地元の人々だろう。この時点ではまだ余裕があった。出発から20分ほどが経過していた。

舗装の終わり――本格的な山道へ

しかし、やがて状況が変わった。途中から舗装がなくなり、完全に土の道に変わったのである。土はラトソルまではいかないが、ちょっと赤みがある。広西地方特有の土壌の色である。カルスト地形の石灰岩が風化してできた土壌だろうか。

道は細くなり、周囲の植生も変わってきた。民家は見えなくなり、代わりに木々が増えてきた。本格的な山道に入ったのである。ここから先、電動車で来るのは難しいだろう。

分岐との遭遇――地図にない選択

そして問題が始まった。何度か分岐が現れたのである。右に行くべきか左に行くべきか。道の太さはほぼ同じで、どちらが正しいのか判断材料がない。こんな情報は小紅書上にはなかった。投稿では「山道を登っていく」とだけ書かれていたが、こうした具体的な分岐については触れられていなかった。

高徳地図の衛星写真モードを開き、現在地と周囲の地形を確認する。GPSで表示される青い点が今いる位置である。そこから南の方向、漁村があるはずの方向を見定める。何となくこっちの方だろうかと判断して右の道を選ぶ。しかしこれが正しいのか確信は持てない。ただ方角的に南へ向かっているように見えたというだけである。こうした判断をこの後何度も繰り返すことになる。

3キロの山道――想像以上の急斜面

その後約3キロほど山道を歩いた。そして、この3キロが想像以上に厳しかった。かなりの急斜面が続き、足がパンパンになるのである。登山経験がある方なら分かると思うが、平地の3キロと山道の3キロはまったく別物である。

12キロのバックパックを背負っていた。カメラ機材、ドローン、着替え、水筒など旅に必要なものを詰め込んだ結果である。この重さが急斜面では大きな負担となった。さながら荷重スクワット運動をしているかのような感覚である。荷物は極力少なくして来るのがオススメである。

途中、小紅書で見た覚えのある案内に遭遇。今のところ正しい道を選択しているはず?

そんなアップダウンが繰り返される。登りきったと思えばまた下り、そしてまた登り。まさに山を越えていっている感じである。周囲は完全に山の中で、木々に囲まれ鳥の声だけが聞こえる。人の気配はまったくない。興坪を出発して1時間ほどが経ったとき、果樹園に差し掛かった。

果樹園の出現――そして迷宮へ

高徳地図でいうところの「中間嵅」と記載がある箇所の、ちょっと西あたりである。柚子の木が整然と並ぶ広大な果樹園が現れた。山の斜面に作られた段々畑のような形状で、柚子の木がびっしりと植えられている。実がたくさんついており、ちょうど収穫の時期のようだった。

小紅書の投稿にも「果樹園を抜けて」という記述があった。おそらくここのことだろう。このまま一番目立つ道に沿って歩けばよいかと思った。しかし、ここで問題が発生した。

行き止まり――最初の絶望

道が行き止まりになってしまったのである。果樹園の中を進んでいくと道は次第に細くなり、やがて柚子の木に阻まれて先へ進めなくなった。確かにここまでは道があった。しかしこの先は明らかに道がない。

仕方なく折り返し、その一つ手前の分岐点まで戻った。そして先ほどとは別の方向に曲がってみる。しばらく歩く。柚子の木の間を縫うように細い道が続く。しかし、またしても行き止まり。完全に道に迷ってしまった。

1時間の彷徨――途方に暮れる

その後、他に道がないか果樹園の周りをうろうろした。しかしどの方向に進んでも、やはり行き止まり。道を尋ねようにも人の気配がまったくない。果樹園の管理者がいるのかと思ったが誰もいない。岩を登って無理やり山を越えられないかとチャレンジしてみたが、途中で崖に行く手を阻まれる。

そうして彷徨している間にあっという間に1時間近くが経過してしまった。既に12時を過ぎている。本来ならこのまま1時間ちょっとで漁村へたどり着けていたであろうというペースに対し、果樹園のあたりで1時間ほどのロスをしてしまった。当初の計画ではこの時間には既に漁村に着いて観光を始めているはずだった。しかし現実にはまだ漁村にすらたどり着けていない。

よく見ると柚子の木の間にすごく細い道がある。幅は50センチほど、人がかろうじて通れる程度の細さである。しかしあくまで農作業用の通路なのだろうか?草が生い茂っており最近人が通った形跡は感じられない。他に選択肢がないためダメもとで柚子の木に気を使いながらその細い道を登ってみた。しかしやはり先は行き止まりであった。

最悪のシナリオが頭をよぎる

この時点で最悪のシナリオが頭をよぎった。もしかしてもっと手前の方で分岐を間違えてしまい、完全に詰んでしまったのだろうか。果樹園より前、舗装道路が土の道に変わったあたりで既に間違った道を選んでいたのではないか。そうだとすればここでいくら探しても正しい道は見つからない。

せっかく2時間近くかけてきているのに完全に途方に暮れる。また、こんなわけ分からない道で果たして帰りもちゃんと帰れるのだろうか。一本道を戻るだけなら何とかなるかもしれない。しかし途中で何度も分岐があった。帰りも同じ道を選べる保証はない。興坪へ戻る道を見失い完全に迷子になってしまわないだろうか。少なくとも高鉄には間に合わなくなってしまうのではないか。

15:30の高鉄に乗るには14:30には興坪古鎮に戻っている必要がある。今は12時過ぎ。残り2時間半。しかし現在地はまだ漁村にすら着いていない。仮に今すぐ引き返したとしても来た道を2時間かけて戻れば14時でギリギリである。しかも道に迷わずに戻れたとしての話だ。

喉の渇き

出発すぐの時点では十分あった水分

気づけば山越えのために持ってきていたお茶を全て飲み干してしまっていた。500mlのペットボトルの水分を既に消費してしまったのである。急な斜面を登り大量の汗をかいた。そしてこの1時間の彷徨でさらに水分を失った。

このままここにいてもどんどん体力を消耗し、喉が渇き、いよいよ体が危険な状態になるかもしれない。真夏ではなかったのが幸いだが、それでも広西の日差しは意外に強い。脱水症状になる可能性は十分にあった。水がない、しかし周りに柚子なら沢山ある。このまま遭難してしまったらここに生えている柚子の実を拝借して飢えと渇きを凌ぐほかないだろうか。そんな邪悪な考えがよぎる。そんな馬鹿げたことを考えるほど精神的に追い詰められていた。

美味しそうな果実に、つい目が眩む。

空からの視点

しかしここで一つのアイデアが浮かんだ。写真撮影用にドローンを持ってきていた。DJI Mini 4 Proである。陽朔の景色を空から撮影するために持ってきたものだった。空からであれば発見できなかった道が発見できるのでは。

早速ドローンを離陸させた。スマホの画面に上空からの映像が映し出される。

果樹園の全体像が見えた。現在地、そしてこれまで歩き回ったエリアがはっきりと分かる。そしてやはり向かっている方向には道は途絶えている。行き止まりになっているのは間違いなかった。

やはり 上空から見ても、山を越えられるルートはない

しかし諦めずにドローンを先へ進めてみた。山を越えた先、漁村があるはずの方向へ。すると山を完全に越えた先にうっすらと農道が再開している様子が見えた。道がある。しかし果樹園の端とその農道の間には明確な道が見えない。

もしかしてここには元々道があったものの季節や時間経過の影響で緑が生い茂り、道がふさがれてしまったのではないか。そう推測した。小紅書の投稿は1年前以上のものばかりだった。1年の間に植物が成長し道を覆ってしまったのかもしれない。あるいは果樹園の管理者が柚子の木を増やした結果、道が狭くなったり消えたりしたのかもしれない。

藪の中の探索

ドローンで撮影した写真を手掛かりに道なき道、藪の中を探ってみることにした。ドローンの映像ではこの辺りを通れば向こうの農道に繋がるはずだという場所が分かる。しかし地上からはそこに道があるようには見えない。

草を踏みしめ柚子の木の間を抜け慎重に前進する。そして手当たり次第に藪をかき分けた先に、完全に草木が日光を遮っているものの元々道であったのであろう形跡を発見した。地面を見ると確かに平らになっている箇所がある。一見道とはわからないが通れないわけでもないという微妙な状態である。かつて人が歩いた跡だろう。その中を進んでみるとどうやら先に繋がっているようだ。

人工物を発見。何とか先の道に辿り着いたようだ。

九死に一生を得た。何とか1時間ほどの迷子から脱出し、先の農道へとたどり着けた。

山の上から見た漓江――最高の瞬間

農道に出た瞬間、視界が開けた。そこには絶景が広がっていた。ここからがこの旅のハイライトとなる。山を越えてから下る際に漓江がとてもきれいに見えるのである。

興坪の方は観光客が多くゆったりと景色を楽しむことが難しい。しかしここには少なくともきっと半径1キロ以内に人間は一人しかいない。山の上の農道から雄大な漓江と山々を眺めた時、先ほどまでの疲れが吹き飛んだ。

カルスト地形特有の独特な形をした山々。筍のように、あるいは巨人の歯のように地面から突き出した岩山。その緑に覆われた姿がどこまでも続いている。その間を縫うように漓江が流れている。川面は穏やかで緑色を帯びている。遊覧船が小さく見える。

この景色を誰にも邪魔されず独り占めしている。1時間の迷走、体力の消耗、喉の渇き。そのすべてがこの瞬間に報われた気がした。これほど美しい景色をこんな形で見られるとは思っていなかった。観光地化された展望台からではなく誰も来ないこの山道から見る漓江は格別であった。

漁村への最後の道のり

しかしいつまでもここにいるわけにはいかない。時計を見ると12時半前。出発から2時間が経過している。高鉄の時間を考えるともう余裕はない。漁村に着いたらほとんど滞在時間なくすぐに引き返さなければならないだろう。

その後も少々道が分かりづらい箇所があったが、衛星写真を頼りにグネグネと山道を下った。下りは比較的楽であった。登りで疲労した足には負担が少ない。道は次第にはっきりしてきた。人が通った形跡が増えてくる。そして木々の間から建物が見えた。漁村だ。

無事15分ほどで漁村にたどり着くことができた。興坪古鎮を出発してから約2時間15分程度。当初の楽観的な見積もりのほぼ倍の時間である。しかしたどり着けた。

漁村は静かにそこにあった。青いレンガと黒い瓦の建物。馬頭壁。古い石畳。500年の歴史を持つ古村が目の前に広がっていた。

そして高鉄の時間まで残り約3時間。村での滞在時間はおそらく30分程度しか取れないだろう。帰り道も行きと同じくらいかかると考えればすぐに出発しなければならない。しかしまずは村を見なければ、せっかくここまで来た意味がない。来都来了(せっかくここまで来たんだから)。そう考え、リスクを承知で村の中へと足を踏み入れた。

(③漁村散策編に続く)

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