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【中編】ルーク・スカイウォーカーの家「Sidi Driss」とはどんな場所なのか - チュニジア南部マトマタの洞窟住居訪問レポート

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前回に引き続き、マトマタの洞窟住居「Sidi Driss」訪問レポートを綴っていく。

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ガイドとの攻防

到着の歓喜冷めぬまま、入口をくぐろうとした瞬間、現地ガイドが近づいてきた。

中年の男性で、流暢なフランス語と英語を交えながら話しかけてくる。建物の中を案内してくれる、写真も撮ってあげる、特別な場所も見せてあげる。そんな言葉を矢継ぎ早に浴びせられる。

自分たちのペースで回りたかったので、丁寧に断ろうとする。だが、彼は諦める気配がない。構造が複雑で迷いやすいこと、見どころを逃してしまうこと、写真撮影のベストスポットを知っていること。次々と理由を並べ立ててくる。

確かに、この手の場所でセルフィーを撮るのは難しい。吹き抜け構造の全体像を写真に収めるには、誰かに撮ってもらう必要がある。

結局、写真撮影だけお願いすることで折り合いをつけた。

迷路のような内部へ

ガイドに先導されて中に入ると、想像以上に複雑な構造が広がっていた。

まず現れたのは、円形の吹き抜け空間。地面から10メートルほど掘り下げられた中庭で、周囲の壁面には洞窟のように掘られた小部屋の入口がいくつも並んでいる。空を見上げると、青い空が円形に切り取られて見える。

この光景、確かにスターウォーズで見たことがある。あの印象的なシーンがここで撮影されたのかと思うと感動する。

中庭の壁には、スターウォーズの小道具や装飾品が所狭しと飾られていた。ライトセイバー、ヘルメット、ポスター、フィギュア。さらには、撮影当時の写真パネルまで。ここまで来ると、もはやスターウォーズのテーマパークだ。

ガイドがライトセイバーを手渡してくる。これを持ってポーズを取れというわけだ。

まあ、せっかくなので従うことにする。吹き抜け空間を背景に、ライトセイバーを構えて撮影。こういう定番の観光写真も、たまには悪くない。

撮影が終わると、ガイドには一旦離れてもらうことにした。ずっとついて回られるのも窮屈だし、自分たちのペースでゆっくり見て回りたい。少額のチップを渡して、また後で必要なら呼ぶからと伝える。

構造を理解する

改めて周囲を観察する。

壁の一角に、手描きの簡易地図のようなものが掲示されていた。よく見ると、この建物の構造が描かれている。

どうやらこの場所は、複数の吹き抜け中庭が地下通路でつながっている構造らしい。それぞれの中庭の周囲に小部屋が配置され、部分的に部屋同士も通路でつながっている。まさに蟻の巣のような立体的な迷路だ。

これこそが、典型的なトログロダイト住居の構造である。一つの家族が暮らすには、一つの中庭とその周囲の部屋で十分だが、拡張家族や集落全体となると、複数の中庭を地下で連結させることで大規模な住居群を形成する。

地図の内容を頭に入れて、探検開始。最初の中庭から細い通路を通って、隣の空間へ移動する。薄暗い通路を抜けると、また別の吹き抜け空間が現れた。こちらの方が少し広く、より多くの小部屋が周囲に並んでいる。

洞窟レストランで昼食

この中庭の一角に、レストランスペースがあった。ちょうど昼時でお腹も空いていたので、入ってみることにした。

洞窟の中に掘られた小部屋は、想像以上に涼しい。

外は灼熱の太陽が照りつけているのに、この中は驚くほど快適だ。厚い土の壁が断熱材の役割を果たしているのだろう。エアコンも扇風機もないのに、自然と温度が保たれている。これがトログロダイト住居の最大の利点だ。何世紀も前から、この地域の人々はこの快適さの中で暮らしてきたのだと思うと、感慨深い。

部屋の中は、伝統的なベルベルスタイルで装飾されていた。壁にはカラフルな織物が掛けられ、床には絨毯が敷かれている。いくつかの低いテーブルと座布団が置かれているが、今は誰もいない。貸切状態だ。

スタッフの男性がやってきて、メニューを説明し始めた。

いや、説明というより、ほぼ決定事項として告げられた感じだ。クスクス・ベルベル、これが良いと。取ってつけたような名前がちょっと気にかかるが、特に異論もないので、それでお願いすることにした。

クスクス・ベルベル登場

まず運ばれてきたのは、前菜のオムレツのような料理。

チュニジアでよく見かける、ブリックという薄いパイ生地で作られた料理だ。中には細かく刻まれた野菜とツナが入っており、パリパリとした食感が心地よい。レモンを絞って食べると、程よい酸味が加わって美味しい。

そして、メインディッシュのクスクス・ベルベルが登場した。

スタッフが大きな土鍋を抱えてやってきて、目の前でよそってくれる。これがなかなかの演出効果だ。湯気の立つクスクスの上に、たっぷりの野菜と大きな鶏肉が盛られていく。

じゃがいも、にんじん、ズッキーニ、そして緑色の細長い野菜。見た目はピーマンかししとうのようだ。

一口食べてみる。クスクスは柔らかく炊かれていて、スパイスの効いたスープがよく染み込んでいる。鶏肉もホロホロと崩れる柔らかさで、長時間煮込まれているのがわかる。

そして、その緑色の野菜を口に入れた瞬間。激辛だった。

想像を遥かに超える辛さで、思わず水を一気に飲む。これはししとうではなく、チリペッパーの類だろう。見た目で判断してはいけない。以降、慎重に避けながら食事を続けることにした。

スイカをかじって何とか辛さに耐える羽目に

猫と観光客でにぎわうレストラン

食事を続けていると、小部屋の入口から猫が現れた。

真っ黒な毛並みで、顔が逆三角形をしている。南チュニジアの猫は、なぜかみんなこのシャープな顔立ちをしているような気がする。品種的な特徴なのか、それとも砂漠地帯の厳しい環境が生み出した体型なのか。

黒猫はこちらをじっと見つめて、様子を伺っている。明らかに食べ物を狙っているが、テーブルに飛び乗ってくるような無礼なことはしない。ただ、足元で座って待っている。

その健気な姿に思わず笑ってしまうが、食べ物は分けない。辛いチリペッパーをあげるわけにもいかないし、鶏肉は自分で食べたい。

黒猫は諦めたのか、しばらくすると別の場所へ去っていった。

食事も終盤に差し掛かった頃、突然小部屋が賑やかになった。

欧米からのファミリーグループが入ってきたのだ。8人ほどのグループで、それぞれがテーブルに着席し始める。さっきまでの静かな空間が一変して、観光地特有の喧騒に包まれた。真夏の炎天下、昼時には皆日差しを避けて涼しい洞窟内で食事をとりたくなるのだろう。

人が増えたことで、洞窟内も心なしか暑くなってきた気がする。いや、実際に気温が上がっているのだろう。これだけの人数が狭い空間に集まれば、体温で室温も上昇する。古代の冷房システムも、現代の観光業には対応しきれないようだ。

いかがでしたでしょうか?

後編では、Sidi Drissの内部をさらに探索し、屋上からの眺めもお伝えする予定だ。今までの内容では、ちょっとアトラクションパークのような毛色になってしまっているが、スターウォーズ色の抑えられた、ありのままのベルベル居住空間についてもレポートするので乞うご期待を。

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