桂林・陽朔エリアを旅する際、多くの観光客が訪れる興坪古鎮。20元札の裏面に描かれた風景があることで有名なこのエリアだが、実は漓江を挟んで対岸にも魅力的なエリアが存在する。

それが「大河背」と呼ばれる地区だ。しかし、この対岸へのアクセス方法については、ガイドブックにもネット上にも詳しい情報がない。今回は、実際に現地で利用した地元住民向けの渡船について、詳しくレポートする。
興坪古鎮と対岸の大河背

興坪古鎮は漓江沿いに発展した観光地で、遊覧船の発着点やカフェ、ホテルが立ち並ぶ賑やかなエリアである。老寨山への登山口もあり、多くの観光客で溢れている。古鎮の通りには土産物店や飲食店が軒を連ね、特に週末ともなれば国内観光客で賑わいを見せる。

一方、漓江の対岸に位置する大河背エリアは、同じ興坪鎮に属しながらも雰囲気が全く異なる。古鎮側よりも自然に溢れ、静かで落ち着いた環境で、観光客も少なく、のんびりとした田園風景が広がっている。漓江沿いには地元住民の家屋が点在し、時折鵜飼の姿も見かけるような、まさに桂林の原風景が残るエリアだ。

宿泊先として大河背を選ぶメリットは大きい。静かに漓江の景色を楽しめる上に、古鎮側へも短時間でアクセス可能だ。人工物のない景色を楽しめて、朝夕の漓江の風景を独り占めできる穴場スポットと言えるだろう。実際、民宿やゲストハウスも数軒あり、古鎮側よりもリーズナブルな価格で宿泊できるケースが多い。
対岸への行き方が分からない問題
ここで大きな問題が発生する。興坪古鎮と大河背の間には橋がないのだ。

試しに高徳地図や百度地図などの中国系ナビアプリで興坪古鎮から大河背へのルートを検索してみると、なんと陽朔方面まで大きく迂回するルートが提案されるのだ。距離にして数十キロ、時間も1時間以上かかる大回り。目の前に見えている対岸なのに、一度陽朔まで戻ってから遠回りしなければならないというのだ。
これでは対岸に宿を取っても不便すぎる。そう思って詳しく調べてみると、地元住民が日常的に利用している渡船が存在することが分かった。この渡船、料金はわずか5元で利用できるらしいのだが、困ったことにネット上の情報がほぼ皆無だ。
中国の旅行サイトやSNSを探しても、運行時間や乗り場の詳細情報が見つからない。唯一分かっているのは5元で渡船があるという断片的な情報のみ。営業時間は何時から何時まで?乗り場はどこ?外国人でも乗れるの?という疑問は解決できず、あとは現地に行って何とかするしかないと覚悟を決めて向かうことになった。
渡船乗り場の場所と目印
現地に到着してまず探したのが渡船の乗り場である。

遊覧フェリーの乗り場とは異なる場所にあった。興坪古鎮の中心部から漓江沿いを南へ歩いていく必要がある。
渡船乗り場は興坪古鎮から少し南側、老寨山の入口付近にある。漓江沿いの道を進んでいくと、やがて小さな港のような場所が見えてくる。地元の人たちが行き交う生活感のあるエリアだ。

目印はオレンジ色と緑色の小型の舟である。これが地元住民の生活の足となっている渡船で、観光用の大型遊覧船とは全く異なる、素朴な小舟なのですぐに区別できる。舟は2隻あり、それぞれが交互に往復しているようだった。船着き場は簡素な造りで、コンクリートの小さな桟橋があるだけだ。

営業時間と乗船方法
私が初めて渡船を利用したのは夜の19時頃。すでに日が暮れており、本当に運行しているのか不安だったが、港に着くと既に数名の地元住民が乗船を待っていた。これは期待できそうだ。

船員に営業時間を尋ねたところ、朝6時から夜9時まで運行しているとのこと。思っていた以上に長時間営業しており、朝の観光前や夕方の帰宅時まで幅広い時間帯に利用できる。これなら大河背側に宿泊していても、古鎮側で晩飯を楽しんだ後に安心して帰る、などといった使い方ができる。

乗船の際の手順は非常にシンプルだ。船が停泊している港に行き、船員に声をかけると乗船を促される。乗り込む際に少し揺れるが、漓江は穏やかな川なので心配はいらない。なお、当初電動車を借りて対岸へ持って行こうなどと考えていたが、乗り場が少し不安定で、少し厳しそうだということが分かった(最悪電動車を港に水没させてしまうリスクがある)。
料金は5元で、WeChat Payでの支払いとなる。現金が使えるかどうかは未確認だが、中国旅行では基本的にWeChat Payが必須なので、事前に設定しておくことを強くおすすめする。

船内には私以外にも地元住民と思われる乗客が数名乗り込んだ。仕事帰りと思しき若者や、買い物袋を抱えた主婦らしき女性など。さらに、後から商業用の物資なども積まれ、まさに生活の足として機能していることが実感できる。観光客向けというよりは、完全に地元の人たちの日常的な交通手段なのだ。
漓江横断はわずか2分
ある程度の人数が集まったところで船が出発。エンジン音が響き、船はゆっくりと岸を離れた。

街の光に照らされる美しい漓江での船旅をのんびり楽しめる、と期待に胸を膨らませていたのだが、なんと約2分で対岸に到着した。あまりの速さに完全に拍子抜けである。確かに、直線距離的には本当に目と鼻の先で、正直なところ泳いだ方が早いかもしれない。
とはいえ、この2分間も決して無駄ではない。夕周囲のカルスト地形が月光に照らされ、水面に映り込む様子は美しい。観光船とは違った、地元の生活に密着した船旅という感覚も新鮮だ。

対岸の大河背側に到着すると、船員が船を岸に寄せ、乗客たちが次々と下船していく。船着き場は興坪側と同様に簡素な造りで、すぐ近くに民宿が並んでいる。荷物を抱えた地元住民たちは慣れた足取りで家路につき、私は宿への道を歩き始めた。
大河背から興坪への復路

翌朝は大河背側から興坪古鎮へ向かうために、再び渡船を利用した。朝7時過ぎ、まだ観光客が動き出す前の静かな時間帯である。

興味深いのは、乗船方式が行きと帰りで若干異なっていたことだ。大河背側から乗船する際は、紙のチケットを購入してから乗船するスタイルだった。興坪側ではWeChat Pay決済だったのに対し、こちらは船着き場近くの小さな窓口でモバイル決済でチケットを購入する形式である。チケットは簡素な紙のもので、係員に渡すと船に乗り込める。

渡船の運行には明確な時刻表やダイヤは設定されていないようだ。しかし心配は無用である。2隻体制で運行しているため、往来は非常に頻繁だ。ある程度の人数が集まったら出発する形式だが、この区間は需要が多いため、待ち時間はほとんどない。

実際の感覚としては10分弱に1本程度の頻度だろうか。私が利用した際は、どのタイミングでもほぼ待つことなくスムーズに乗船できた。特に、朝の時間帯は通勤・通学で利用する地元住民も多く、さらに運行頻度が高くなっている印象だ。地元のおばちゃんや、学生らしき若者たちがスマートフォンを見ながら乗り込んでくる姿は、どこの国でも変わらない日常の風景だ。

ちなみにこの渡船には、その後も興坪滞在中、何度かお世話になった。陽朔滞在最終日に、人里離れた漁村へと足を延ばした際に、時間切れ間際の帰路で高鉄に間に合うかどうか、の攻防を救ってくれたのも、この渡船の過密ダイヤに他ならない。
ちなみに漁村の様子については別記事で詳しく紹介しているので、興味がある方はそちらも参考にしてほしい。
まとめ:地元の生活の足を体験できる貴重な渡船
興坪古鎮と大河背を結ぶ渡船について紹介してきたが、いかがだっただろうか。
料金はわずか5元、所要時間は2分という短さながら、この渡船は大河背エリアへのアクセスに欠かせない交通手段である。
何より、地元住民の日常の足として機能しているこの渡船に乗ることで、観光地とは違った興坪の素顔を垣間見ることができる。大河背エリアに宿泊予定の方はもちろん、対岸の静かな風景を楽しみたい方にもおすすめだ。興坪を訪れる際は、ぜひこの渡船を活用して、大河背に渡ってみて頂きたい。