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【珍グルメ】天然記念物「オオサンショウウオ」を中国で合法的に食べられる?湖南省の山奥で実際に「娃娃魚」料理を食べてみた【湖南料理食レポート】

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この度、オオサンショウウオを食べる機会に恵まれた。

日本では天然記念物に指定され、見ることすら珍しいこの生き物を、食材として口にする――そんな機会が訪れるとは思ってもみなかった。

場所は中国・湖南省の張家界。70年代の湘西農村を再現したレストラン「大隊老漁村1973」の水槽で、オオサンショウウオつぶらな瞳と目が合ってしまったのが運の尽きだった。

今回は、実際にオオサンショウウオを食べてみた体験をレポートする。

天然記念物のはずのオオサンショウウオ

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日本人にとって、オオサンショウウオは特別な存在だ。1952年に特別天然記念物に指定され、捕獲や飼育には厳しい規制がかかっている。京都の鴨川や岐阜県などに生息しており、日本最大の両生類として知られている。

しかし中国では、オオサンショウウオ(中国名:娃娃鱼、ワーワーユー)は食用として扱われている。もちろん野生個体の捕獲は禁止されているが、養殖個体については合法的に流通・販売が認められているのだ。中国のオオサンショウウオ養殖の歴史は古く、特に湖南省陝西省四川省などで盛んに行われている。湘西地方も、オオサンショウウオ養殖の主要産地の一つだ。

古くから漢方薬としても珍重されてきたオオサンショウウオは、滋養強壮効果があるとされ、高級食材として扱われている。そのため価格も高い。とはいえ、日本で育った私にとって、天然記念物を食べるという行為は心理的なハードルが高い。メニューを前に、正直なところかなり悩んだ。

しかし、ここは中国だ。郷に入っては郷に従え――湘西の食文化を体験する絶好の機会だと考え、注文することにした。

湘西、大隊老漁村にて

今回訪れたのは、張家界市武陵源景区近くにある「大隊老漁村1973」だ。1973年に建てられた村落を改装したこのレストランは、70年代の湘西農村の雰囲気を忠実に再現しており、湖南卫视(湖南テレビ)のロケ地としても使われている。池を囲むように配置された建物、赤い提灯、梁に吊るされた腊肉――まさにタイムスリップしたかのような空間だ。

そして何より、ここには透明な水槽があり、様々な珍しい食材が泳いでいる。鮰鱼(ナマズの一種)、桂花鱼(ケツギョ)、スッポン、そしてオオサンショウウオ――日本ではなかなかお目にかかれない食材が、ここでは当たり前のように水槽に入っている。

メニューをどうしようかと悩んでいた時、水槽の中のオオサンショウウオと目が合ってしまった。つぶらな瞳がこちらを見ている。まるで、ペットショップであどけない子猫に心を撃ち抜かれるが如く、この出会いに導かれオオサンショウウオを注文することにした。

価格は一尾299元。日本円で約6000円だ。中国の物価を考えると、かなり高級な部類に入る。個室に案内され、料理を待つ。

(大隊老漁村1973の詳細については、前回の記事「湖南レトロ食堂巡り③――張家界『大隊老漁村1973』で味わう70年代の湘西農家料理」を参照されたい)

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料理の予想外の見た目

注文から約20分後、赤い鍋に入った料理が運ばれてきた。正直なところ、オオサンショウウオを鍋にドカッと一頭丸ごと載せるようなスタイルを想像していた。もしそうだったら、かわいそうという気持ちが勝ってしまい、箸が進まなかったかもしれない。

見る影もなくなってしまったオオサンショウウオ

しかし幸いにも、その身はがっつりと切られていた。一口サイズの身として、赤いスープの中に浸っている。知らなければ、これがオオサンショウウオとはわからない。魚の鍋かな、そんな見た目だ。オレンジ色のスープの中に、白っぽい肉が入っている。一緒に煮込まれているのは、ジャガイモ、色とりどりの野菜、そして唐辛子と花椒。湘西らしい、しっかりとした味付けの鍋料理だ。

肉の形を見ると、ほとんど魚も同然だが、ちょっと鶏肉っぽさもある。皮の部分はやや黒っぽく、ぬめりがありそうだ。スープからは、唐辛子と花椒の香りに加えて、生姜やニンニクの香りも漂ってくる。臭みを消すための工夫だろうか。

食レポート

まずはスープを一口。ピリッとした辛さの中に、深い旨味がある。魚介のダシというよりは、肉のダシに近い。コクがあり、生姜とニンニクの風味が効いている。

いよいよ、肉を一切れ取り分ける。白っぽい身の部分を選んだ。見た目は白身魚のようだ。箸で持ち上げると、意外としっかりとした弾力がある。柔らかすぎず、かといって硬すぎない。

口に入れて噛んでみる。第一印象は――白身魚だ。それも、ちょっと歯ごたえの強いタラのような感じ。弾力があり、噛むとプリッとした食感がある。

味は、スープの味付けがしっかりしているため、味わい深い。肉自体の味は淡白で、特に強い個性はない。そして驚いたことに、臭みがほとんどない。両生類ということは、カエルに近しいのだろうか。確かに、食感はカエルの肉に少し似ている気がする。カエルよりは弾力が弱く、ほろほろと簡単に身が崩れ、魚に近い印象だが(余談だが、湖南省はカエル料理屋も有名なので、是非こちらもオススメしたい)。

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次に、皮の部分を食べてみる。皮も一見すると魚と似ているのだが、すこしぬめっとしている。ゼラチン質なのか、コラーゲンが豊富そうだ。噛むと若干プルプルとした食感があり、白身の部分とは全く違う。スープをよく吸っており、濃厚な味わいだ。

この皮のぬめり感。写真越しにも、お分かりいただけるだろうか。

何切れか食べ進めるうちに、この料理の工夫に気づいた。臭みが少なくなるよう、かなり丁寧に調理されているのだ。おそらく下処理の段階で血抜きをしっかりと行い、生姜やニンニク、酒などで臭みを消しているのだろう。そして唐辛子と花椒の強い味付けが、さらに臭みを覆い隠している。

正直なところ、目を閉じて食べれば、これがオオサンショウウオだとは気づかないかもしれない。上質な白身魚の鍋料理として、十分に美味しい。一口サイズに切られていたことも、心理的なハードルを下げてくれた。もし丸ごとの姿で出てきていたら、水槽の中のつぶらな瞳を思い出して、箸が進まなかっただろう。

まとめ:食文化の多様性を考える

日本では天然記念物として保護されているオオサンショウウオが、中国では養殖され、高級食材として流通している。この違いは、単なる法律の違いだけでなく、食文化の多様性を象徴している。中国では古くから食材の幅が非常に広い。ヘビ、カエル、スッポン、そしてオオサンショウウオ――日本ではあまり食べられない食材が、ごく普通に食卓に上る。それぞれの食材には、それぞれの調理法と食文化の歴史がある。

大隊老漁村でオオサンショウウオを食べた経験は、単なる珍味体験以上のものだった。食文化の多様性、生き物に対する価値観の違い、そして自分自身の食に対する考え方――様々なことを考えさせられる体験だった。

湘西を訪れる機会があれば、あなたもこの体験をしてみるだろうか。それとも、やはり躊躇するだろうか。答えは、一人一人違っていいのだと思う。大切なのは、異なる食文化を理解し、尊重すること。そして、自分の価値観と向き合うことだ。