中東を旅していると、必ずと言っていいほど目にするのがラクダ肉料理だ。しかし、実際に食べた旅行者のレビューを見ると評価は真っ二つに分かれる。「独特の臭みがある」「筋が硬くて噛み切れない」という否定的な意見がある一方で、「柔らかくて美味しい」という声もある。
この評価の差は何なのか。調理法の違いなのか、部位の問題なのか。今回、オマーン、マスカットで偶然見つけた店で、「当たり」のラクダ肉に出会うことができた。その体験を紹介したい。
ラクダ肉の評判:なぜ賛否両論なのか

ラクダ肉は中東では伝統的な食材だ。特にベドウィンの遊牧文化では重要なタンパク源として扱われてきた。現代でも、UAE、サウジアラビア、オマーン、カタールなど湾岸諸国のレストランでは、ラクダ肉を使った料理が提供されている。
ただ、旅行者の評価は厳しい。よく聞かれるのは「筋が硬い」「噛み切れない」という不満だ。確かに、ラクダは砂漠を長距離移動する動物なので、筋肉が発達している。適切に調理しないと、ゴムのような食感になってしまう。
一方で、「柔らかくて美味しかった」という評価もある。この差は、調理法の違いによるところが大きいようだ。特に、低温で長時間煮込む調理法や、圧力鍋を使った調理では、筋も柔らかくなり食べやすくなる。
オマーンの店「Aldyafa for Omani Food」

今回訪れたのは、オマーンの「Aldyafa for Omani Food」という店だ。
地元の人々で賑わう一角にあり、外観は典型的な中東のレストラン。店内に入ると、個室スタイルの座敷席が並んでいた。中東のレストランでは珍しくないスタイルだ。

内装は簡素だが清潔感がある。壁は木目調で、床にはカーペットが敷かれている。靴を脱いで上がり、クッションに座って食事をするスタイル。いわゆる「マジリス」と呼ばれる伝統的な座り方だ。
メニューを見ると、オマーン料理の定番が並んでいる。ライス料理(カブリライス、マンディライス、ズルビアンライスなど)、ラクダ肉料理、魚料理、サラダ、スープ。価格は1〜3オマーンリヤル(約400〜1,200円)と手頃だ。

注文した料理
今回注文したのは以下の通り。
Meat Shewa(ミート・シュワ)
ラクダ肉のシュワ。シュワとは、オマーンの伝統的な調理法で、肉をスパイスでマリネし、地中に掘った穴で長時間低温調理する料理だ。
Zurbian Rice(ズルビアンライス) -
スパイスで炊いたオマーンスタイルのライス。
サラダとスープ - 付け合わせ
ついでにMountain Dewの小瓶を注文。なぜかオマーンではやたらMountain Dewが人気の模様。
ラクダ肉の登場:アルミホイルに包まれて

ラクダ肉は、アルミホイルに包まれた状態で運ばれてきた。ホイルを開くと、湯気と共にスパイスの香りが立ち上る。
肉はホロホロに崩れそうなほど柔らかく仕上がっていた。スパイスがしっかりと表面に付着しており、茶色く色づいている。熱で脂がとろけて、肉全体が艶やかに輝いている。香りも高く、クミン、コリアンダー、黒胡椒のような複雑なスパイスの香りが食欲をそそる。

よくレビューで言われる「硬い」「筋っぽい」という印象は全くない。フォークで簡単にほぐれる柔らかさだ。
味:柔らかく、臭みもない
一口食べると、肉は口の中でほぐれていく。味は、牛肉に近いがもう少しあっさりしている。独特の臭みも感じない。スパイスの香りが効いており、深みのある味わいだ。
とろけた脂が肉に絡み、しっとりとした食感を生んでいる。骨付きの部分もあったが、骨からするりと肉が外れる。
ズルビアンライスも美味しい。バスマティ米にスパイスが効いており、ラクダ肉との相性が良い。サラダはシンプルだが、レモンが添えられており、肉の脂っぽさを中和してくれる。
美味しいラクダ肉のポイント
今回はアタリのラクダ肉だったが、実は筆者はこれまで何度かラクダ肉を試し、失敗した経験がある。異なる調理法を試す中で、美味しいラクダ肉を食べるためのポイントが見えてきた。あくまで個人的な仮説だが、きっと的を大きく外れてはいないのではないだろうか。
調理法が重要
シュワのような低温長時間調理、あるいは圧力鍋を使った煮込み料理が有効。急いで焼いたり炒めたりするステーキのような調理法では、筋が硬くなりやすいのではないだろうか。実際、ステーキスタイルのラクダ肉で「硬い」という評価が多い気がする。
部位による違い
牛肉や羊肉と同様、ラクダ肉も部位によって肉質が大きく異なるはずだ。よく動かす脚の部分は筋が多く硬いが、肩やもも、リブ周辺は比較的柔らかい可能性がある。今回食べた肉がどの部位だったかは不明だが、煮込みに適した部位を選んでいたのかもしれない。逆に、硬い部位をステーキにしてしまうと、食べられないほど硬くなるのだろう。
個体差や肉質
ラクダの年齢や飼育環境によっても肉質は変わってくる。若いラクダの肉は柔らかく、年老いたラクダの肉は硬いという傾向もあるかもしれない。また、野生に近い環境で育ったラクダと、家畜として飼育されたラクダでは、筋肉の発達具合も違うだろう。こうした要素が、同じ調理法でも味の違いを生む可能性がある。
まとめ:ラクダ肉は「当たり外れ」がある
ラクダ肉は、確かに賛否両論ある食材だ。しかし、それは肉自体の問題というより、調理法、部位、個体差など複数の要因が絡み合っているのだろう。
今回オマーンで食べたシュワは、明らかに「当たり」だった。柔らかく、臭みもなく、スパイスの効いた美味しい料理だった。アルミホイルを開いた瞬間の香り、ホロホロに崩れる肉、とろけた脂。これなら、ラクダ肉に対する評価も変わるだろう。
中東を旅する際、ラクダ肉料理を避ける必要はない。ただし、店選びと料理の種類には注意したい。シュワのような伝統的な煮込み料理で提供している店を選べば、美味しいラクダ肉に出会える可能性は高い。逆に、ステーキのような焼き料理は、部位や調理の難しさから、リスクが高いのかもしれない。
次回中東を訪れる機会があれば、また別の店や別の調理法でラクダ肉に挑戦してみたい。部位による違いも確かめてみたいところだ。