前回の記事では、Yasawa Flyerの基本情報、予約方法、船内構造、そしてCaptain's Loungeの快適さについて紹介した。
今回の後編では、実際の乗船中の様子をレポートする。ヤサワ諸島の美しい島々を巡る4時間の船旅は、想像以上にドラマチックなものだった。
Port Denarauを出航

前回説明した通り、私たちはCaptain's Loungeを利用した。この日はあまりラウンジ利用客がいなかったのか、30人限定の空間をかなり贅沢に使えた。大きなソファ席にもたれかかりながら、これから始まる船旅への期待が高まる。

出発前後には、ウェルカムドリンクと軽食が提供され、アテンダントによるブリーフィングが行われた。船内の案内やルール、緊急時の対応、そしてアテンダント自身の自己紹介などだ。フィジー人の彼女は明るく陽気で、ジョークを交えながら説明してくれる。

面白かったのは、「このラウンジは文字通り船長室のすぐ後ろにあります。船長に質問したい方は、遠慮なく船長室にどうぞ」という案内。どこまで本気か冗談なのか分からないが、こういったフレンドリーな雰囲気がフィジーらしい。
この日の航路は、ナンディを出発し、まずママヌカ諸島の南端を通過し、その後ヤサワ諸島に沿いながら十数もの島やリゾートを横目に、乗客を順々に降ろしていくというものだ。最北端のYasawa島まで行く便もあるが、私たちの目的地はYaqeta島なので、途中で降りることになる。
途中、見どころをアテンダントが丁寧に教えてくれる。私たちも念のため、事前にアテンダントに「Yaqeta村のYaqeta Homestay」へ行くことを伝えておいた。
ママヌカ諸島とヤサワ諸島の違い
船が進み始めて間もなく、左手にママヌカ諸島が見えてくる。ここで少し地理的な説明をしておこう。
フィジーには300以上の島があるが、観光的に有名なのはビティレブ島(本島)の西側に広がる2つの群島だ。一つがママヌカ諸島(Mamanuca Islands)、もう一つがヤサワ諸島(Yasawa Islands)だ。

ママヌカ諸島は本島に近く、比較的小さなリゾート島が点在している。サンゴ礁が発達した低い島が多く、白い砂浜と青い海が特徴だ。日帰りツアーでも行けるアクセスの良さから、リゾート開発が進んでおり、高級リゾートが多い。
一方、ヤサワ諸島は本島からさらに北西に約70km延びる火山性の群島だ。20ほどの主要な島から成り、ママヌカ諸島と比べて山がちで、地形も複雑だ。火山で形成されたため、岩肌がむき出しの断崖や、切り立った山々が特徴的だ。リゾートも点在しているが、ママヌカ諸島ほど開発が進んでおらず、伝統的な村が今も多く残っている。
私たちが向かうYaqeta村も、そうした伝統的な村の一つだ。
突然のスコール:フィジーの天気の変わりやすさ

さて、船は進む。この日の朝は曇天で、雲が厚く垂れ込めている。今にも雨が降りそうな空模様だ。
外に目をやると、中層のテラス席でEconomyの乗客たちが座って風を浴びている。確かに、海風を感じながら景色を眺めるのは気持ちよさそうだ。外の席も快適そうだなと思っていたら、さすがは南国、急に空が暗くなった。
そして、スコールが来た。

大粒の雨が一気に降り注ぎ、船の窓を激しく殴りつける。外に座っていた人たちは慌てて屋内に避難していたが、あっという間にびしょ濡れになっており、気の毒だった。タオルで髪や服を拭きながら、苦笑いしている人たちもいる。
フィジー西部の天気は非常に変わりやすい。晴れたかと思えば突発的な雨が降り、そしてまた晴れる、ということを繰り返す。特に12月から3月の雨季は、このようなスコールが頻繁に発生する。
Captain's Loungeの屋根付きエリアにいて本当に良かったと実感した瞬間だった。対岸の火事とはよく言ったものだが(苦笑)ビールを飲みながら、窓の外の激しい雨を眺める。ある意味ではこれもまた贅沢な時間だ。
最初の寄港地:Treasure Island

スコールが過ぎ去り、少し明るくなってきた頃、最初の寄港地であるTreasure Islandに到着した。Port Denarauから約30分、まだかなり本島寄りだ。
船から見る限り、かなり小さな丸いリゾート島のようだ。ヤシの木が生い茂り、白い砂浜が見える。典型的なママヌカ諸島のリゾート島だ。
しかし、Yasawa Flyerは島へは近づかない。島の沖合、数百メートル離れた場所に停泊して、何かを待っている。どうやって乗客を降ろすのかと思っていると、小型ボートが島からやってきた。

エンジン音を響かせながら、小舟がYasawa Flyerに接舷する。そしてクルーが乗客の名前を呼び、該当する乗客が船から小舟へと移動する。荷物も次々と手渡しで運ばれていく。小舟に乗り込んだ乗客たちは、島へと送迎されていった。
これがヤサワ諸島の標準的な移動方法なのだ。前回の記事でも説明したが、ほとんどの島には大型船が接岸できる桟橋がないため、このような小舟での乗り換えが必要になる。最初は少し不安に感じるかもしれないが、クルーたちは慣れたもので、スムーズに作業を進めていく。
Cast Away島:トム・ハンクスの足跡
Treasure Islandを出発し、ヤサワ諸島方面へ向かう。しばらくのんびりと船旅を味わう。窓の外には、青い海と白い雲、そして緑の島々が広がる。
左手には、遠くにママヌカ諸島を横目に望みながら進んでいく。途中、アテンダントがマイクを持って説明を始めた。

「左手に見える島のうち、奥の小さいのがトム・ハンクス主演の映画『Cast Away』の撮影地よ。モヌリキ島っていうの。あそこには今もリゾートがあるから、映画のファンは泊まってもいいかもね。ただし、ココナッツには気をつけてね!」
船内に笑いが起こる。確かに、映画『Cast Away』(2000年)はフィジーのモヌリキ島で撮影されたことで有名だ。トム・ハンクス演じる主人公が、飛行機事故で無人島に漂着し、4年間のサバイバル生活を送るという物語だ。
遠くに見える小さな島は、映画で見た景色そのままだ。こうした映画のロケ地を船上から眺められるのも、この船旅の楽しみの一つだ。
ヤサワ諸島のゲートウェイ:Kuata、Wayasawa、Waya

しばらく進むと、景色が変わり始めた。ママヌカ諸島の平坦な島々とは異なり、山がちな島が見えてくる。いよいよヤサワ諸島に入ったのだ。
最初に見えてきたのはKuata島、続いてWayasawa島、そしてWaya島だ。このあたりがヤサワ諸島のゲートウェイ、入り口にあたる。

先ほどの豪雨で窓が水滴で見づらくなっているので、時折デッキに出て島を眺めた。外に出ると、潮風と湿った空気が顔に当たる。スコールの後の独特の匂いがする。

目の前に広がる島々は、先ほどのリゾート島とは全く異なる姿だ。山がちで、急峻な斜面が海に落ち込んでいる。さすがは火山で形成された島々。火山岩がむき出しになったような地形も望める。島の表面はジャングルに覆われ、濃い緑が鮮やかだ。
こうした地形の違いが、ヤサワ諸島の魅力なのだ。単なるビーチリゾートではなく、ダイナミックな自然が残っている。
Fijian Warriorの登場:岩の上の戦士
Kuata島を通過するとき、アテンダントが再びマイクを取った。
「さあ、みんな左側を見て! あの岩の上に、Fijian Warriorがいるわよ! 見つけられるかしら?」
冗談かと思ったが、乗客たちが一斉に左側の窓に集まり始めた。私も目を凝らして見ると、本当に人が立っている。

岩の上に、伝統衣装のようなものを着て、矛を持った戦士が立っているのだ! 距離があるのではっきりとは見えないが、確かに人影がある。船に向かって槍を振っているようにも見える。
どうやらここが航路の一番の見どころらしく、船内は盛り上がっていた。それにしても、彼は四六時中そこにいるのだろうか? 船の運航時間に合わせて、誰かが雇って立たせているのだろうか? それとも本当に村の戦士が伝統として立っているのだろうか?
謎は深まるばかりだが、こうしたユニークな演出もヤサワ諸島ならではだ。観光客を楽しませるためのサービス精神を感じる。
リゾートラッシュ:次々と降りていく乗客たち

Waya島を過ぎたあたりから、リゾートが増えていく。船が停泊しては、小舟が近づいてきて、乗客を乗せて去っていく、という流れを繰り返す。
Blue Lagoon Beach Resort、Octopus Resort、Oarsman's Bay Lodgeなど、名前を聞いたことがあるリゾートも次々と現れる。それぞれのリゾートから小舟が迎えに来て、乗客たちは笑顔で手を振りながら去っていく。

船内は少しずつ空いてきた。Captain's Loungeも最初は10人ほどいたが、今は5、6人になった。より広々と使えるようになり、ソファに寝転びながら景色を眺める人もいる。
アテンダントが定期的にドリンクとお菓子を補充してくれる。
カランクのような地形:Naukacuvu、Drawaqa

Naukacuvu島やDrawaqa島が見えてきてからは、地形がさらに複雑になってきた。まるでフランス南部のカランク(入り江)を思わせる、切り立った岩壁と入り組んだ海岸線だ。
しかし、カランクと決定的に異なるのは、海の色だ。
浅瀬は淡いエメラルドグリーン、少し深くなると濃いセルリアンブルー、そして深い場所は濃紺と、3つの色が鮮やかに分かれている。水深によって色が変わるのは、海底が白い砂やサンゴ礁だからだ。透明度が高いため、船上からでも海底の様子が分かる。

そして島々はジャングルに覆われ、山々が存在感を放っている。サンゴ礁で形成された平坦なモルディブともまた大きく異なる景観だ。
ヤサワ諸島の美しさは、火山島特有のダイナミックな地形と、南太平洋の透明な海、そして熱帯のジャングルが織りなす、独特のものだった。
デッキに出て、風を浴びながら島々を眺める。時折、アテンダントが「このあたりにはイルカが出没するよ!」と叫ぶと、みんなが一斉にデッキに出てくる。こうした自然との触れ合いも、この船旅の魅力だ。
Yaqeta島到着:いよいよ村へ

そんなこんなでしばらくすると、私たちの目的地が近づいてきた。出発から約4時間、ついにYaqeta島だ。
「次はYaqeta島です。Navutu Stars Resortへ行かれる方は、デッキにお集まりください」とアナウンスがあった。
私たちはデッキに出てスタンバイした。他にも数名の乗客がいる。
同じ停泊場所でも、別々の行き先の小舟が来るので要注意だ。自分が乗る船を確認するように、とクルーが注意を促す。
船が停泊し、しばらく待つと、2艘の小舟が近づいてきた。
クルーが名前を呼び、私たちはYaqeta Homestayへと行く小舟に乗り込んだ。荷物も手渡しで運ばれる。船頭はフィジー人の男性で、笑顔で「Bula!」と迎えてくれた。

いよいよ、本格的な村での体験が始まる。
まとめ
約4時間の船旅は、単なる移動手段ではなく、それ自体が一つの素晴らしい観光体験だった。突然のスコール、Cast Awayのロケ地、岩の上の戦士、カランクのような入り組んだ地形と美しい海。Captain's Loungeの快適さのおかげで、これらすべてを余裕を持って、ドリンクを飲みながら楽しむことができた。
ヤサワ諸島の魅力は、火山性の島々が生み出すダイナミックな地形と、南太平洋の透明な海、そして今も残る伝統的な村々だ。リゾート開発が進んだママヌカ諸島とは一線を画す、手つかずの自然と文化が残っている。
次回の記事では、いよいよYaqeta村への到着、セブセブの儀式、そして村での実際の滞在体験について詳しくレポートする。
Yasawa Flyerよりも安くて速い「Tavewa Seabus」の乗船レポートはこちら