
これまで遇龙河の竹筏下りについて、ルート比較から予約方法、実際の乗船体験まで詳しく紹介してきました。特に、水厄底→工农桥ルートの美しさ、堰を滑り降りるスリル——確かに竹筏下りは遇龙河を楽しむ最高の方法の一つです。
しかし、実はガイドブックには載っていない、もう一つの楽しみ方があります。それが今回紹介する、堰に立って川のど真ん中から景色を堪能する方法です。

竹筏に乗っている時から気になっていました。堰の上に、ローカルの人々らしき姿が見えるのです。のんびりと釣りをしている人、ただぼんやりと川を眺めている人——彼らはどうやってあそこに行ったのか。そしてあの場所からの景色はどんなものなのか。興味が湧いて仕方なくなり、翌日、電動スクーターで堰巡りに出かけることにしました。
堰とは何か——多機能な伝統的水利施設
まず簡単に堰について説明しておきましょう。堰は川に設けられた段差のことで、遇龙河では水位を調整し、田畑への灌漑や生活用水の確保、そして川を横断する橋の役割も兼ねています。中国語では「水坝」(簡体字)、繁体字では「水壩」と書きます。

竹筏下りの記事でも触れましたが、この堰を滑り降りる瞬間こそ遇龙河体験の醍醐味。しかし堰は、上から滑り降りるだけのものではありません。その上に立ち、川の流れを間近に感じながら360度の景色を楽しむ——これもまた格別な体験なのです。

堰にはいくつかのタイプがあります。コンクリート製の段差状のものが最も一般的ですが、中には緑色のゲート式昇降機が設置されているものもあります。これは主に往復ルート用の構造で、筏が上流に戻る際にこの昇降機を使って持ち上げられるそうです。実に中国らしい合理的な仕組みです。

竹筏から見える堰の上の人々は、決して観光客ではなく地元の人々が多いようでした。朝から釣り竿を垂らし、時には収穫した野菜を洗い、日常の一部として堰を利用している。この光景を見て、自分も堰に立ってみたいという気持ちが強くなりました。
南岸ルートで隠れスポットを探す
遇龙河周辺の観光地は主に北岸に集中しています。十里画廊のメインロード、レンタサイクル店、レストランやカフェ——ほとんどが北岸です。多くの観光客も北岸を中心に動いています。
北岸からもいくつかの堰にはアクセスできます。例えば、後述する朝阳坝などは北岸からも堰に登ることができます。ただし、水量が多い時は横断できない場合もあります。
しかし、地元の人しか知らないような静かな堰を探すなら、南岸ルートが断然おすすめです。南岸には細い農道が走っており、そこから人知れず堰へと降りる道が複数あります。地図にも載っていない、まさに隠れスポットです。

私はレンタルしていた電動スクーターで南岸の農道を走りました。このエリアの散策には、電動スクーターが不可欠です。徒歩やレンタサイクルでは距離がありすぎますし、複数の堰を巡るとなればなおさら。電動スクーターなら田園風景の中を気持ちよく走りながら、気になる堰に気軽に立ち寄ることができます。
南岸の農道は、北岸のメインロードとは全く雰囲気が違います。観光客はほとんどおらず、農作業をする地元の人々や、学校帰りの子どもたちとすれ違う程度。のどかな田園風景の中をのんびり走る時間そのものが、すでに贅沢な体験でした。
道なき道を進む——名もなき堰へ
いくつかの堰を横目に見ながら走り、私が最初に選んだのは朝阳坝の少し上流にある名もなき堰です。特に名前がついているわけではなく、地元の人しか知らないような静かな場所。地図にも載っていない、まさに隠れた宝石のような場所でした。

農道から堰へ降りる入り口を見つけ、電動スクーターを停めます。そこから先は、農地の側溝のような細い道を歩いていきます。コンクリートの溝の上を、バランスを取りながら慎重に進む——まさに道なき道です。
周囲には白い小花が咲く畑が広がり、遠くにはカルスト山が連なっています。この細い道を進むこと自体が、ちょっとした冒険のようで楽しい。観光地化された場所では絶対に味わえない、ローカルな世界に足を踏み入れている感覚です。

数十メートル歩くと、目の前に堰が現れました。誰もいない。静寂に包まれた、私だけの特等席です。
そして堰に降り立った瞬間——気持ちいい。

川の中央に立っているという感覚は、岸から眺めるのとも、竹筏に乗っているのとも全く違います。足元を水が勢いよく流れていき、その音が心地よい。周りを見渡せば、360度カルスト山に囲まれています。この目線でも景色は本当に美しい。
竹筏からは見上げる角度でしか見られなかった山々を、今度は同じ高さで見渡すことができます。水面も近く、鏡のように山を映し出している様子がよく分かります。風が吹くと水面が揺れ、映り込んだ山々が歪む——その瞬間瞬間の変化を楽しめるのも、堰の上ならではです。
筏下りの人々との遭遇

堰の上でぼんやりと景色を眺めていると、時々、竹筏下りの人々が横を通過していきます。彼らは堰を滑り降りる直前か直後で、水しぶきを浴びながら歓声を上げています。
そして私と目が合うと、不思議そうな表情をするのです。どうやって降りたんだ、とでも言いたげな顔。確かに、竹筏に乗っている側からすれば、堰の上に人が立っているのは不思議な光景でしょう。観光客らしき格好をした人間が、ローカルの人々に混じって堰の上でくつろいでいる——きっと彼らには奇妙に見えたはずです。

こちらから手を振ると、筏の上の人たちも笑顔で手を振り返してくれます。同じ遇龙河を、違う角度から楽しんでいる者同士の、ちょっとした交流です。
船頭さんの中には、私に向かって何か声をかけてくれる人もいました。何を言っているのか正確には聞き取れませんでしたが、おそらく景色はどうだとか、そういった類の声かけだったのでしょう。こうしたやり取りも、堰の上に立つからこそ楽しめる体験です。

川の中には、赤白ストライプのポールが立っています。これは筏の航路を示すマーカーで、船頭さんたちはこれを目印に安全なルートを進んでいくのです。堰の上から見ると、筏がこのマーカーに沿って流れていく様子がよく分かります。
網紅スポット・朝阳坝との対比
名もなき堰で40分ほど過ごした後、少し下流にある朝阳坝にも足を伸ばしてみました。こちらは骥马码头の近くにある有名な堰で、S字型の形状から網紅(インフルエンサー)の撮影スポットとして人気だそうです。

朝阳坝に着くと、先ほどの静かな堰とは打って変わって賑やかな雰囲気でした。北岸には多くの観光客が集まり、堰を眺めたり写真を撮ったりしています。堰の近くでは、カラフルな傘を差した人々が筏に乗って釣りを楽しんでいる姿も見えます。そして竹筏が堰を越える瞬間を撮影する観光客——ここは完全に観光地化されています。
朝阳坝は北岸からも堰に登ることができます。ただし、水量が多い時は横断できない場合もあるので注意が必要です。
確かにS字型の堰は独特の美しさがあり、カルスト山を背景に撮影すれば絵になります。多くの人がSNS映えを狙って訪れる理由が分かりました。堰の上で水遊びをする人々、竹筏が堰を越える様子——朝阳坝は遇龙河の代表的な光景の一つと言えるでしょう。
しかし、静かに景色を楽しみたいなら、やはり名もなき隠れスポットの方が断然おすすめかもしれません。
注意点とマナー
堰に立つ際、いくつか注意点があります。

まず、足元は滑りやすいということ。堰は常に水が流れているため、表面が濡れています。サンダルやスニーカーなど、滑りにくい靴を履いていくことをおすすめします。特にコンクリート製の堰は、苔が生えている部分もあり、想像以上に滑ります。
次に、地元の人々の邪魔にならないよう配慮すること。堰は観光施設ではなく、地元の人々の生活の一部です。釣りをしている人の近くで大声を出したり、野菜を洗っている場所を占拠したりしないよう気をつけましょう。特に朝阳坝のような人気スポット以外では、静かに過ごすことを心がけてください。
そして、ゴミは必ず持ち帰ること。美しい遇龙河を守るのは、訪れる私たち一人一人の責任です。

最後に、天候と水位に十分注意してください。堰に立てられている看板には、増水時の危険について警告が書かれていました。「暴雨水势过大、请勿在水坝上游玩」(豪雨で水勢が強い時は水坝で遊ばないこと)という注意書きです。2020年以降、増水による事故も発生しているとのこと。
雨の日や雨上がりは、堰がさらに滑りやすくなります。また、増水している時は危険なので、無理に堰に降りないようにしましょう。特に夏の暴雨シーズンは、水勢が非常に強くなることがあるそうです。
また、南岸の隠れスポットへのアクセスは、農地の側溝のような細い道を通ることもあります。農作物を踏まないよう、また溝から落ちないよう、十分に注意して進んでください。
まとめ:地図にない遇龙河の楽しみ方
竹筏下りは素晴らしい体験ですが、それだけで終わらせるのはもったいない。堰に立って川の真ん中から景色を眺める、地元の人々の日常に触れる——こうした体験を加えることで、遇龙河の旅はより深みを増します。
電動スクーターで南岸の農道を走り、道なき道を進んで隠れスポットを探す。竹筏が横を通過するのを眺めながら、カルスト山に囲まれた静かな時間を過ごす。足元を流れる水の音を聞きながら、ただぼんやりと景色を楽しむ——そんな時間を、ぜひ体験してみてください。きっと新しい遇龙河の魅力に出会えるはずです。