前回は福澳港から出発し、急坂に苦戦しながらも島の北端部、南竿12據點まで到達した。荒々しい波と崖の絶景を堪能した後、スクーターを走らせて5分程度、次の目的地である復興村・牛角聚落エリアへと向かう。
美しいビーチと伝統的な廟、そしてランチ難民となった私を救ってくれた地元の人々との出会いを紹介する。
復興村・牛角聚落について
集落に入ると、赤い提灯が連なる道が出迎えてくれる。建設中の建物もあり、島の発展と伝統が共存している様子が見て取れる。道端には猫注意の看板もあり、この島では猫がのんびり暮らしているようだ。当有猫出没、請減速慢行という黄色い看板が、なんとも微笑ましい。

観光地化された南竿市街地とは違い、ここは地元の人々の暮らしが息づくエリア。のんびりとした時間が流れ、訪れる観光客も少ない。だからこそ、本当の馬祖の姿を感じることができる場所でもある。
牛角のビーチと牛峰境五靈公廟

復興村エリアに入り、海岸線に沿って走っていくと、美しいビーチが見えてくる。スクーターをビーチの近くに停め、少し歩いてみることにした。
この集落のトレードマークは、綺麗なビーチ、ビーチに面した桟橋、そして海を見下ろすように建つ牛峰境五靈公廟だ。

ビーチは小さいながらも美しく、透き通った海水が穏やかに波打っている。砂浜にはほとんど人影がなく、プライベートビーチのよう。斜面に家々が立ち並ぶ集落を背景に、静かな海岸線が広がる。

そして海に面した岩場の上に建つのが、牛峰境五霊公。鮮やかな赤と金色、白に彩られた廟で、遠くからでもよく目立つ。赤い提灯が連なり、集落を守る守護神として、地元の人々に大切にされているのだろう。
牛峰境五靈公廟へ

せっかくなので、牛峰境五霊公廟へ向かってみることにした。石段を上がり、廟に近づくと、その装飾の美しさに目を奪われる。赤地に白い幾何学模様が施され、円形の窓が特徴的なデザイン。屋根には精巧な彫刻が施され、色鮮やかな装飾が施されている。

この廟は2008年に完成した新廟で、閩東式封火山牆という伝統的な建築様式を採用している。幅18メートル、奥行き25メートル、高さ約15メートルで、馬祖では珍しい中庭を持つ廟だ。
廟頂の飛簷には、馬祖の固有種である黒嘴端鳳頭燕鷗が、山牆の出水獣(排水口)には馬祖名物の黄魚が取り入れられているなど、馬祖の特色が随所に表現されている。

新廟の手前には、1975年に建てられた旧廟も残っている。こちらも閩東式封火山牆で、正面は赤い双開きの木製扉。旧廟は現在も残されており、別の神像を祀っているという。

中には三つの祭壇があり、金色の布が掛けられ、お供え物が並ぶ。小さな建物だが、丁寧に手入れされており、地元の人々の信仰の深さを感じる。壁には色鮮やかな壁画が描かれており、中国の伝統的な物語が描かれているようだ。

ランチ難民、そして救いの手
牛峰境五霊公一帯を後にし、そろそろお腹も空いてきた。昼食を取ろうと、集落内でレストランを探してみる。
しかし、すでに昼遅い時間だったため、どこもかしこも休んでいた。数軒回ってみたが、どこも扉が閉まっている。完全にランチ難民だ。困ったなと思いながら集落を歩いていると、Google Mapには載っていないお店を発見した。

ダメ元で覗いてみたところ、中は地元の人たちで和気藹々と盛り上がっていた。ランチ難民な様子の私に気づいたのか、中から遠慮しないで入りなよと声をかけてくれた。
店名は中南58。カフェ兼レストランで、ほっこりした可愛くお洒落なお店だ。伝統的な石造りの建物をリノベーションしており、木のぬくもりを感じるインテリアで、壁には地元のアートや写真が飾られている。
優しい味の野菜カレーと鶏肉料理
おすすめされるがままに、野菜カレーと鶏肉料理を注文した。

運ばれてきた料理は、どちらも優しい味で美味しい。カレーは野菜がたっぷり入っていて、スパイスも効いているが辛すぎず、体に染み渡る味。
鶏肉料理は、串に刺された鶏肉がパリッと焼かれており、柔らかくジューシー。麹で味付けをしたのだろうか、シンプルながら疲れた体に染み渡る味だ。空腹も相まって、本当に美味しく感じた。
このお店は、お酒類、特に馬祖名物の老酒もいいものを揃えているとのこと。しかし生憎、スクーター運転中なので残念ながら飲めない。次回は泊まりで来て、ゆっくり老酒を楽しみたいものだ。
地元の人々との会話

このお店の店員さんはもちろん、お客さんも素敵で優しい人ばかりだった。
南竿では、どこもかしこもご飯の営業時間が短いから、こんな時間にうろついてもどこもやってないよ、とほほ笑む。昼に限らず、夜も結構早くお店が閉まるらしい。
万が一食いっぱぐれた時のために、コンビニで非常食としてチョコレートでも買っておきなよ、とアドバイスしてくれる。なるほど、確かにその通りだ。
また別のお客さんからは、どこどこの海岸が綺麗だよ、夕日を見るならここだね、といったスポット情報から、息子が働いているケーキ屋がオススメだよ、そこで息子に訪ねたら、いい老酒の情報を聞けるよ、といった地元ならではの情報まで、色々と教えてもらった。
どうやらこの島では、Google Mapは宛にならないらしい。マップに載っていないお店が多くあるみたいだ。この中南58もそうだった。そんな中、住民の口コミは命綱。地元の人々との会話から得られる情報こそが、本当に価値のあるものなのだ。
この日、教えてもらったケーキ屋さんに後で寄ってみることにした。
まとめ
復興村・牛角聚落では、美しいビーチと牛峰境五霊公を訪れ、そしてランチ難民となったところを地元の人々に救われた。
中南58での食事と会話は、この旅のハイライトの一つとなった。美味しい料理もさることながら、地元の人々の温かさに触れられたことが何よりも嬉しかった。
旅は計画通りにいかないことも多いが、そんな時こそ思わぬ出会いがある。Google Mapに載っていないお店、営業時間外に開いているお店、そして温かく迎えてくれる人々。これこそが、旅の醍醐味なのかもしれない。
次回記事はこちらから:

