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馬祖南竿島をスクーターで一周④ 「仁愛村」で島一番の夕日を拝む - アート・軍事施設・自然が共存する南部エリア

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前回は馬祖酒廠や八八坑道、介壽村を巡り、南竿26據點から港を見下ろした。今回は引き続き南竿島を駆け回る。

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今回はさらに西方面、滞在中何度も立ち寄った仁愛村での絶景夕日と、その道中の見所を紹介していく。

山隴排練場:アートが宿る旧軍施設

介壽村のすぐ近く、山隴排練場に立ち寄ってみた。もともと国軍の演習場として使われていたこの施設が、馬祖国際芸術島の会場として生まれ変わっている。

馬祖国際芸術島とは、馬祖列島で毎年秋に開催される国際アートフェスティバルで、南竿・北竿・莒光・東引の四つの島を会場に、軍事遺構や歴史的建造物をアート空間として活用するのが特徴だ。第3回となる2025年は10月から11月にかけて開催され、50点以上の作品が各所に展示された。

私が訪れた1月はすでに開催期間を過ぎていたが、山隴排練場にはまだ作品が残っており、覗かせてもらうことができた。

展示されていたのは、日本人アーティストデュオ、米谷健&ジュリア(Ken Yonetani & Julia Yonetani)による《生命之網》。釣り糸を媒材として編み上げた大型インスタレーションで、紫外線ライトに照らされると網状の構造が光と影の変化によって流動的に浮かび上がり、まるで海の中に漂っているかのような幻想的な空間を生み出している。

もともと軍の演習場だった空間に、こういったアート作品が置かれているのは何とも不思議な感覚だ。戦地として長い歴史を持つ馬祖の空間が、芸術を通じて新たな意味を持ち始めている。秋の開催期間中であれば、南竿・北竿を合わせて多彩な作品が各所に展示されるらしい。軍事遺構や坑道を丸ごとアート空間に変えてしまう馬祖国際芸術島、秋に訪れる予定のある方はぜひ開催スケジュールを確認してみてほしい。

承鮮捷:島の生命線、大型スーパー

夜に撮影した写真のため、時系列がバラバラになってしまった

山隴排練場を後にし、島の内陸部中央へと向かう。このあたりに、承鮮捷という大型スーパーマーケットがある。

離島とは思えない規模のハイパーマーケットで、イメージとしては奄美大島のビッグ2に近い感じだ。食料品から日用品、土産物まで幅広く揃っており、まさに島の生命線といった存在。旅行者にとっても、地元の特産品や手頃なお土産を探すには打ってつけの場所だ。観光地の土産店よりもリーズナブルで種類も豊富なので、お土産の買い出しにも重宝する。

そして2階に上がると、島民のガス抜きスポットとでも言うべきゲームセンターがある。場末感漂う雰囲気がなんとも趣深い。離島のゲーセンというのは独特の哀愁があるもので、こんな島の片隅でもちゃんと人々の娯楽の場が息づいているのが、なぜか嬉しくなった。

仁愛路へ左折、北海坑道へ

道中にも様々な軍事関連の遺構が

承鮮捷を後にし、中央大道をさらに西へと進んでいく。しばらく走ると、仁愛路という脇道が左手に現れる。ここを左折すると、南竿島の見どころが次々と待ち構えている。

まず目指すは北海坑道だ。南竿島随一の観光スポットで、海水が引き込まれた巨大な坑道内を小舟で巡ることができる。その規模と迫力は南竿随一で、訪れる価値は十分にある。詳しくはまた別記事でじっくり紹介したい。

仁愛村の静かな村の風景

北海坑道を後にし、仁愛路をさらに西へと歩を進めると、仁愛村という小さな聚落に辿り着く。

ここはかつて「鉄板」と呼ばれた地区で、行政機関も集中していたのだそう。今や政治経済の中心地ではなくなったが、閩東式の石家屋が織りなす景観は他の聚落とも異なる風情を放ち、味わい深い観光地として密かに人気を集めている。

馬頭牆が立派な典型的な閩東建築

村の入口には、石獅子を従えた重厚な石造りの牌楼が出迎えてくれる。「天后宮」の文字が刻まれた扁額が掲げられており、柱には細かな彫刻が施されている。この牌楼をくぐると、金板境天后宮の境内へと続く道が続く。

廟の本殿は落ち着いた佇まいで、軒先に吊るされた赤い提灯が南竿の青い空に映える。廟の脇には石段があり、登ると周囲に民宿や食事処も点在している小さな集落が広がる。規模は小さいながらも、どこかほどよく栄えた雰囲気があり、のどかで居心地が良い。

私が滞在していたのはこの隣の津沙村だったため、滞在中は道すがら何度もここを通り、自然と立ち寄る場所になっていた。

仁愛沙灘の夕日:波音と銃声が交錯する、唯一無二の時間

そしてこの村の最大の見どころが、仁愛沙灘から望む夕日だ。

ビーチ沿いには、釣りを楽しむ地元民がちらほら

ビーチへと続く石段を下りていくと、夕暮れの海が広がる。砂浜の端には見慣れない構造物が立っている。

竹を組み上げて編んだ、直径10メートルほどの円筒形のインスタレーションだ。馬祖国際芸術島の作品の一つで、大型の漁籠を思わせる形をしており、てっぺんには赤・黄・緑のカラフルな旗がはためいている。

この作品がとにかく写真映えする。内側から空を見上げると、竹の格子越しに青空と旗が円形に切り取られ、まるで異世界の天蓋のようだ。海側から覗き込めば、竹の隙間から沈みゆく太陽の光が差し込み、夕日を受けた海面がキラキラと輝く。

外から眺めれば、シルエットになった構造物と太陽がひとつの画面に収まり、これ以上ない構図ができあがる。

夕日そのものも、ここで見るものは格別だった。

水平線に近づくにつれて太陽は大きく、赤く染まっていく。あたりはしんと静まり返り、波が砂浜に打ち寄せる音だけが響く。

そこへ、遠くから乾いた音が届いてきた。

パン、パパン――。

銃声だ。

仁愛村のすぐ近くには軍の訓練施設がある。馬祖はいまも台湾の前線基地であり、常駐の軍人が訓練を行っている。その射撃訓練の音が、夕暮れの静寂の中に断続的に響いてくるのだ。

波音と銃声。平和と緊張が同時に存在する、この島ならではの奇妙な共鳴。

奇しくも、海岸沿いの路に残る砲は、沈んでいく夕日の方向に照準を定めていた

観光客として夕日に見惚れている自分と、今この瞬間も有事に備えて訓練を続ける兵士たちの存在が、同じ空間にある。台湾海峡の対岸には中国本土が見えるほどの距離にあるこの島で、美しい夕日を眺めながらも、この場所が背負っているものの重さを静かに突きつけられるような感覚だった。

そんな雰囲気も相まって、南竿島で見た景色の中でも、この仁愛沙灘の夕日は特別だ。何度立ち寄っても、沈む直前の光の変化から目が離せなかった。

まとめ

仁愛村は、隣の津沙村に滞在していたこともあり、この島で最も馴染みのある場所の一つになった。夕暮れ時はもちろん、朝や昼のまぶしい日差しを浴びたビーチもまた美しいので、是非寄ってみて頂きたい。

波音に混じって届く銃声。アートと軍事遺構が隣り合わせに存在する馬祖のあり様が、あの浜辺には凝縮されていた気がする。

次回は、南竿の秘境・津沙村に向かう旅の詳細をお届けする。

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