ドバイ国際空港が閉鎖。アブダビのザーイド国際空港も停止。そこで旅慣れた人なら思うはずです。「そういえば、ドバイのすぐ隣にもう一つ空港があったよな」と。
シャールジャ国際空港(SHJ)。そしてそこを拠点とするエアアラビア(Air Arabia)。知名度は低いけれど、コスパ旅行者の間では以前から「穴場」として知られてきた存在です。
果たして今回の事態において、シャールジャは本当に「抜け道」になり得るのか。実際に乗ったことがある身として、掘り下げてみます。
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シャールジャって、どこにあるの?
まず地理的な話から。シャールジャ首長国はドバイ首長国のすぐ北隣に位置します。シャールジャ国際空港とドバイ国際空港の直線距離はわずか15〜20km。東京で言えば、羽田〜品川くらいの感覚です。
「それなら、ドバイが使えなくてもシャールジャに行けばいいじゃないか」——その発想は自然ですこの二つの空港は別々の首長国に属しており、直通の公共交通機関が存在しない、という何点こそありますが、タクシー移動を駆使すれば、確かに代替空港として置き換え・乗り継ぎが可能であることを、このブログでも過去に実証しました。
ただし今回の文脈では、「ドバイからシャールジャへ乗り継ぐ」話ではなく、「最初からシャールジャ発着で旅程を組む」という発想です。それなら話は変わってきます。
エアアラビアとは何者か

ところで、シャールジャを拠点とするエアアラビア(Air Arabia)は、2003年設立の中東最大規模のLCCの一つです。中東・北アフリカ・アジア・欧州の170以上の都市に就航しており、フルサービス系が飛ばないようなニッチな路線も抑えています。
私はかつてエアアラビアに実際に乗ったことがあります。シャールジャからイランのシーラーズへの往復で、搭乗レポートもブログに書きました。
その時の率直な感想——「思ったより全然まとも」でした。
A320型機の機内は清潔で、赤と灰色の座席が整然と並ぶ。チェックインも搭乗もテキパキしていて、むしろ手際の良さが印象的でした。機内食や機内エンタメはLCCらしくなし。でも「飛んで着く」という基本機能は十分。フライト時間1時間半のシーラーズへのアプローチでは、シーラーズ空港名物の急旋回着陸という予想外の体験もできました。
LCCへの不安を良い意味で裏切ってくれた航空会社という印象が今も残っています。

シャールジャ空港自体は年間約1,300万人が利用する中規模空港で、ドバイの9,200万人と比べれば小さい。しかし独自の役割を果たしており、特に中東・北アフリカ路線への窓口として機能してきました。
では今、実際どうなっているのか
しかしながら、現在の中東情勢を考えると、残念ながら現実は甘くありませんでした。
2月28日、シャールジャ空港局は全フライトの運航を「追って通知があるまで停止する」と正式発表しました。「現在実施中の予防措置の一環」という理由で、乗客に対して空港に向かわないよう呼びかけています。エアアラビアも同日、運航停止を発表しました。
エミレーツ、エティハド、そしてエアアラビア——UAE三つの主要航空会社が同時に止まった。ドバイもアブダビもシャールジャも、今この瞬間は等しく機能していません。
「抜け道」という期待は、今この瞬間においては叶いません。
なぜシャールジャも停止したのか
イランの報復攻撃は、UAEを「首長国ごとに別個のターゲット」として扱いませんでした。アル・ダフラ空軍基地(アブダビ)へのミサイル攻撃、ドバイ国際空港ターミナルの損傷、そしてUAE全域への領空閉鎖。シャールジャがドバイと15kmしか離れていない以上、「シャールジャだけ安全」という状況にはなりません。
ドバイとシャールジャは別の首長国ですが、イランのミサイルは首長国境界を気にしません。
本当の穴場タイミングは「復旧直後」にある
ここからが核心です。
停戦が実現し、UAE領空が再開されたとしましょう。その瞬間、何が起きるか。
世界中で足止めされていた旅客が、こぞってドバイとアブダビに殺到します。中東経由で欧州やアフリカに向かいたい人々、キャンセルされた旅程を組み直したい人々、ビジネスで移動できなかった人々——その数は積み上がっています。エミレーツとエティハドの予約サイトはアクセス集中でつながりにくくなるかもしれない。残席はあっという間に埋まり、運賃が急騰する可能性は十分あります。
そのとき、シャールジャとエアアラビアはどうなっているか。
同じUAEの空港として同時に再開するはずですが、エアアラビアに殺到する人の数はエミレーツの比ではありません。知名度の差がそのまま混雑の差になります。エアアラビアのサイトはまだつながる。席も残っている。しかも元々LCCなので運賃が安い——この構図が「復旧直後の穴場」として機能する可能性があります。

特にエアアラビアが強みを持つ中東・北アフリカ域内の路線、たとえばモロッコやエジプト方面への便を急ぎ確保したい方には、エアアラビアとシャールジャを真っ先に確認することをお勧めします。復旧のニュースが流れたら、エミレーツの予約サイトと同時にエアアラビアも開いてみてください。
ただし一点だけ注意が必要です。日本から欧州へのメインのトランジットハブとしてシャールジャを使うのは現実的ではありません。路線網の規模でドバイやドーハに及ばず、日本発着の便はありません。エアアラビアが真価を発揮するのはあくまでも中東・ヨーロッパ・北アフリカ域内の移動です。
エアアラビアの経営は大丈夫か
ちなみに、再開後を見据えて、経営の安定性も触れておきます。
エアアラビアはシャールジャ首長国政府が筆頭株主ですが、その財政規模はドバイやアブダビほど大きくありません。ただし2003年以来ほぼ一貫して黒字経営を続けてきた実績があり、エティハドが大規模な経営危機を経験したこととは対照的です。過度な拡張をせず、身の丈に合った経営を続けてきた堅実さが、こういう局面での底力になります。
まとめ
今この瞬間、シャールジャは抜け道ではありません。UAE全域が停止中です。
しかし「復旧直後」というタイミングに限れば、エアアラビアとシャールジャ空港は本物の穴場になり得ます。エミレーツの混雑と値上がりを横目に、格安でさっさと代替便を確保できる可能性がある。コスパトラベルらしく正直に言えば、このシナリオは十分に現実的です。
停戦と運航再開のニュースが出たら、エミレーツと並行してエアアラビアのサイトも確認することを強くお勧めします。
状況が動き次第、更新します。
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この記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています。運航状況は随時変化しています。各航空会社の公式サイトおよび外務省海外安全情報を必ずご確認ください。