前回の記事では、街電(街电)のAlipayミニプログラムを使ったモバイルバッテリーレンタルの流れを紹介した。Alipayに国際クレジットカードを登録しておけば、外国人でも比較的スムーズに借りられる。実際に使ってみた手応えとしても、借りる部分については思っていたよりずっと簡単だった。
ただし、だ。
使ってみて初めてわかったことがある。このサービス、本当の難所は返却にある。今回はその顛末を包み隠さずお伝えしたい。これから中国でレンタルモバイルバッテリーを使おうと考えている人には、ぜひ先に読んでおいてほしい内容だ。
バッテリーが切れた。さあ返そう――が、ステーションが見つからない
街を歩いていると、あちこちの店先やビルの入口に充電宝のステーションが目に入る。これだけ普及しているなら、返すときも困らないだろうと思っていた。

いざ返却しようとアプリを開き、地図で近くの街電ステーションを確認する。いくつかアイコンが出てくる。一番近いところに向かってみると……それらしきものが見当たらない。別のアイコンに向かってみると、今度はスロットが全部埋まっていて返却できない。
実際に街を歩いた感覚では、ステーションは確かにそこらじゅうにある。しかしよく見ると、美団だったり、倍電だったり、来電だったり、会社がばらばらだ。街電のステーションとなると、見た目の「多さ」ほど実際の数はない。この事実に、返却しようとして初めて気がついた。
「別会社のステーションでも返せるのでは?」という発想

焦りながらも、ふと思い当たることがあった。そういえば街を歩いていて、街電のステーションに明らかに別のブランドの充電宝が挿さっているのを見た覚えがある。ということは、会社が違っても返却できるのでは?
物理的に合わなければ刺さらないだろうし、エラーになれば弾き出されるだろう。そんな軽い気持ちで、近くにあった倍電(倍电)のステーションに、街電の充電宝を差し込んでみた。

カチッとはまった。
バッテリーのランプが光り始める。お、これはもしかして互換性があるのか!と思わず顔がほころぶ。
しかしアプリを確認すると、まだ「充電中」のまま。料金のカウンターも止まっていない。
まずい。抜き出そうとすると、ロックがかかって抜けない。さっきまで軽い気持ちでいたのが、一気に血の気が引く感覚に変わった。料金はじわじわと加算され続けている。
両社へのチャット問い合わせ
とにかく街電のカスタマーサポートにチャットで連絡した。当然ながら中国語のみの対応だ。状況をなんとか伝えると、返ってきた答えは「当社側では対処できないため、ステーション管理者側に問い合わせてほしい」というものだった。
……たらい回しの予感が漂い始める。
気を取り直し、今度は倍電にも連絡を入れてトラブルシューティングを依頼した。すると先方から「今、ステーションの目の前にいるか?」と確認が入った。現場にいなければ対応できないとのことだ。このとき、その場を離れていたら完全にアウトだったと思うとぞっとする。幸いまだ現場にいた。
指示に従い、ステーション周辺の写真を何枚か撮影して送信する。待つこと数分。オペレーターによる遠隔操作によって、誤って差し込んでいた充電宝がぴょこっと排出された。「これで出てきたか?」と確認が来て、無事に回収できた旨を伝える。ありがとう、本当に助かった。その後無事、別の場所で正規のステーションに返却をすることができた。
わりとよくあるミスらしい
振り返ってみると、対応してくれたオペレーターの手際が妙に手慣れていた。おそらく日常的に同じトラブルが舞い込んでいるのだろう。そう考えると、街電のステーションに他社の充電宝が挿さっている光景を見かけるのも納得がいく。みんな同じ過ちを繰り返しているのだ。筆者もそのひとりになってしまったわけだが。
帰国後、中国の友人にこの話を笑い話として伝えてみたところ「だよね、だから自分はレンタルモバイルバッテリーをほとんど使わないんだよ」と苦笑いしながら教えてくれた。その友人の知り合いも、返却できなくて自宅に持ち帰ったことがあるという。
日本では共有充電宝のサービス会社はごく限られているが、中国では非常に多くの事業者が市場に参入し、それぞれが独自のステーションを展開している。一見するとどこでも返せそうに見えて、実際にはサービスごとの縄張りが厳然として存在する。物理的な互換性があっても、システム上は別物として扱われる。この混乱は現地人の間でも日常的に起きているようで、ある意味では中国の共有充電宝サービスが抱える構造的な問題ともいえるかもしれない。
正規のステーションへの返却も、一筋縄ではいかない
では正しいステーション、つまり街電のステーションに返せばいいじゃないかという話になるが、それもそれで苦労がある。
地図上に表示されたオフィスビルのステーションに向かったところ、どこにも見当たらない。建物の係員に聞いてみても「わからない」とのことだった。おそらくビル内のテナントスペースに置いてあるのだろうが、そうなると部外者は入れない。飲食店や雑貨店に置いてあるケースも多く、営業時間外で閉まっていれば当然返却できない。地図上の位置情報が実際とずれていることも少なくなく、せっかく辿り着いてもスロットが全部埋まっていたり、機種が違って物理的に返却できなかったりする。
場所によってはステーションの設置密度が低く、次の返却スポットを探して5分以上歩く羽目になることもある。バッテリー残量ゼロの充電宝を手に持ちながら、充電先を探して歩き回るという、なんとも本末転倒な状況だ。
まとめ:返却を制する者が、レンタルを制する
今回の経験を踏まえて、これだけは守ってほしいことがある。
異なるサービスのステーションには絶対に返却しないこと。物理的にはまったとしても、システム上は返却扱いにならないうえにロックがかかって抜き出せなくなる。現場を離れた後では対処もできなくなる。
そして返却先の確保は、借りる前から意識しておくべきだ。借りた後に慌てて探すのでは遅い。アプリの地図で複数の返却スポットを把握しておき、実際に入れる場所かどうかも事前に確認しておくとよい。
時間に余裕があればある程度は対処できるが、出国直前など時間が切迫している場面では洒落にならない。最悪の場合、未返却のまま帰国することになっても料金は99元で上限が止まるとはいえ、旅行者としてそういう粗相は避けたいものだ。
一回失敗したおかげで、その後は要領がつかめてうまく付き合えるようになった。共有充電宝は、使いこなせれば間違いなく中国旅行の頼もしい味方だ。常に返却先を複数把握しながら使う――それだけ意識しておけば、旅の「スマホ生命線」を守り続けることができるはずだ。