
格安OTA(オンライン旅行代理店)を使った航空券予約のレビューは、ネット上にそれなりの数が存在する。ところが大半は「〇〇で買ってみた」「△△で予約したら搭乗できた」という一件完結型の体験談で、複数回・複数サービスにわたって使い続けた上での評価というものがほとんど見当たらない。それもそのはずで、普通の旅行者がOTAを使う頻度は年に数回程度、しかもトラブルがあれば懲りてやめてしまうし、うまくいけばわざわざ記事にしないことも多い。結果として世に出てくる情報は成功体験か失敗体験かのどちらかに偏りがちで、「実際のところ何件中何件がうまくいくのか」という母数のある評価はほぼ存在しない。
このブログでも、これまでGotoGate、SEISHIN SPIRIT、Kiwi.com、eDreams、Trip.comといったサービスを使った体験を一件一件ケーススタディとして紹介してきました。するとコメント欄に寄せられるのが決まってこんな声です。「それは単に運が良かっただけでは?」「サンプルが少なすぎて参考にならない」「一回成功しても次が安全とは限らない」——おっしゃる通りです。単発レビューの限界は、書いている私自身も常々感じていました。
そこで今回、コロナ禍明け以降に私自身がOTAを使って予約した航空券のデータをすべて集計しました。件数は51件。使ったサービスはSEISHIN SPIRIT、Ly.com(現SEISHIN SPIRIT)、GotoGate、Flight Network、MyTrip、Kiwi.com、eDreams、Agoda、HopeGoo、TeaFlight、Trip.com、Bravofly——計12サービスです。
区間は成田-新千歳などの国内線から、シャルジャ-シラーズ、チュニス-マルセイユといった中東・アフリカ路線まで幅広く、搭乗時期も2023年から2026年にわたります。同一人物が同一基準で記録し続けた51件というデータは、少なくとも日本語圏の個人ブログとしては前例がないと思います。「運が良かっただけ」という指摘への、私なりの答えを、ここに提示したいと思います。
結論:51件中43件は問題なし、そして「OTA起因で搭乗を阻まれた」は0件
先に数字を出します。51件のうち、問題なく搭乗または発券できた(○)のは43件、成功率にして84%でした。残る8件の内訳は、▲(不可抗力的・軽微な問題あり)が5件、×(OTAまたは予約プロセスに起因するトラブル)が3件です。

ただし、ここで最も強調したいことがあります。51件を通じて、OTAや発券プロセスそのものの問題によって搭乗を阻まれたケースは0件です。▲や×とカウントしたケースも、実態はフライトキャンセル・時刻変更によるイレギュラー、自己都合のキャンセル、あるいは手荷物の登録エラーやチェックイン時の本人確認問題、予約不成立といったものです。
×の3件はOTA起因のトラブルでしたが、最終的には搭乗するか返金を受けるかという形で着地しており、「予約したはずの航空券が完全に無効だった」「空港で何の補償もなく追い返された」という事態には至っていません。「OTAで買ったら席がなかった」という類の致命的なケースは、51件を通じてゼロでした。
84%という成功率を低いと見るか高いと見るかは人それぞれですが、「OTA固有のトラブル」に限定すれば実態はさらに小さい。8件のトラブルのうちOTA側に明確な原因があると言えるのは3件だけで、残りは航空会社側の運航判断、フライトイレギュラー、あるいは自分自身の都合です。その分解は後述します。
サービス別の顔ぶれ——傾向はそれぞれ違う

各サービスの件数と結果はグラフの通りです。最も使用件数が多いのはSEISHIN SPIRIT(旧Ly.com)の16件、次いでeDreamsの10件、Kiwi.comの7件と続きます。
SEISHIN SPIRITとLy.comは同一プラットフォームの改名前後の名称であり、まとめて評価しました。Ly.comという名称でサービスを開始し、その後SEISHIN SPIRIT(誠信スピリット)、一時期はTravelGoなどと名を変えていますが、私はLy.com時代から継続して使っており、バックエンドの仕組みは変わっていないと認識しています。
16件中15件が問題なし、1件が×という実績です。その×が、Ly.com時代の羽田-福岡区間で起きたトラブルです。国内線のチケットを購入したにもかかわらず、実態は国際線特典航空券として発券されていたため、空港カウンターでの本人確認プロセスが通常と異なり、チェックインが難航するという事態に陥りました。これは計51件の中で最も危危機的な事例で、一歩間違えれば乗れなかったケースでした。詳細は過去記事をご参照ください。
なおシャルジャ-シラーズ、ソウル-タシケント、ウルゲンチ-タシケント、リヤド-ダンマーム、ジェッダ-リヤドなど中東・中央アジアを含む幅広い路線での使用実績があり、一見リスクが高そうに見えるマイナー区間でも問題なく機能しています。
その他、利用回数の多かったSEISHIN SPIRITについては別記事で詳しいレポートを綴っていますので、合わせてご参照ください。
eDreamsは10件中1件が▲、1件が×。▲は自己都合によるキャンセルで一部返金を受けたケース、×は羽田-福岡区間で予約が不成立となったケースです(決済日翌日にすぐ不成立通知が届いたので、直前に狼狽するような事態には至りませんでした)。残り8件は問題なく、羽田-台北往復や上海線など日本発着のアジア路線で安定した実績があります。
GotoGate系(Flight NetworkおよびMyTripを含む)は6件中5件が問題なし。MyTripでの成田-厦門1件が▲となっていますが、自己都合のキャンセルで一部返金を受けたものであり、その際多少コミュニケーションに難を感じたものの、基本的にはOTA側に起因する問題ではありません。ロンドン-チュニス往復や成田-ドバイ往復、関西-蘭州といった長距離・マイナー路線での実績もあります。
Kiwi.comは7件中1件が▲。敦煌-上海(蘭州経由)の旅程で、出発前に蘭州-上海便の時刻変更が発生し、乗り継ぎ時間がわずか1時間20分まで圧縮されるというイレギュラーが起きました。Kiwi.comのサポートと複数回やりとりして問題なく乗り切りましたが、ノミナル接続特有のリスクが顕在化したケースです。残り6件は問題なし。
HopeGooは4件すべて問題なし。国内線(千歳-羽田、那覇-羽田など)での使用が中心で、最安値近辺の価格で安定して発券されます。Agodaも2件問題なし。TeaFlightは中国系の新興サービスで情報が少なく半信半疑で試しましたが、1件問題なく搭乗できました。
Trip.comは4件中2件が▲。長沙-上海と上海-長沙の便がフライトキャンセルとなりました。ただしこれはTrip.comの問題ではなく航空会社側の運航判断であり、公式サイトで買っていたとしても同じ状況になっていたはずです。
Bravoflyは1件×。2023年の成田-奄美大島往復で、復路の受託手荷物がシステム上正しく登録されておらず、搭乗当日の空港カウンターでトラブルになりました。後日ピーチ側から返金を受け、Bravofly側からも誠実な対応のメールが届いたことで着地はしましたが、精神的にも金銭的にも消耗したケースでした。詳細は過去記事をご参照ください。
各サービスの詳細な評価については、それぞれの個別記事で改めて取り上げていきます。傾向として言えることがあるとすれば、国内線や大手キャリアではOTA経由特有の落とし穴(国際線扱いによる本人確認問題など)に注意が必要で、中国系サービスは中国路線との相性がよい一方でフライトキャンセル時の対応スピードに差があります。
トラブルの原因を分解すると
8件のトラブルを原因別に整理します。
OTAのシステムや処理に原因があると言えるのはBravofly、Ly.com、eDreamsの各1件ずつ計3件で、手荷物登録のシステムエラー、国際線特典航空券扱いによる本人確認問題、予約不成立がそれぞれ該当します。航空会社側の運航判断に起因するのがTrip.comの2件(フライトキャンセル)とKiwi.comの1件(時刻変更によるイレギュラー)。残るeDreamsとMyTripの自己都合キャンセル2件は私自身の事情です。
「OTAを使ったことで被ったトラブル」と断言できるのは51件中3件、6%です。
私が毎回やっていること
86%という成功率は、何も考えずに使って得られた数字ではありません。予約後に必ず航空会社の公式サイトでPNRを確認すること、確認メールに記載された搭乗者名・便名・手荷物規定をすべて照合すること、JALやANAを使う国内線ではOTAの利用自体を慎重に判断すること——この習慣が、トラブルを未然に防いでいる面は確実にあります。Ly.comのチェックイントラブルも、Bravoflyの手荷物エラーも、事前確認さえしていれば余裕をもって対処できた可能性がありました。
まとめ
51件を通じた私の評価は、当初と変わりません。格安OTAは、使い方を理解した上で使えば十分に実用的なコスト削減手段です。51件でOTA起因により搭乗を阻まれた事態はゼロ、OTA固有のトラブルは6%——そして計51件のOTA利用によって節約できた金額は十数万円にのぼります。この数字が、単発レビューの積み重ねでは見えてこなかった実態だと思っています。
ただし前提があります。予約後の確認作業を省かないこと、英語でのサポート交渉が最低限できること、万一のリカバリーコストを許容できる旅程設計をしておくこと。この三つが揃わない状態でOTAを使うのは確かにリスクが高い。安さはリスクの対価ではなく、正しく使うための手間の対価だと私は思っています。
最後に一点お断りしておくと、51件といえど個人の使用記録である以上、サービスによってはわずか1〜2件しか実績がないものもあります。件数が少ないサービスについては傾向の判断材料としては心許なく、あくまで「私の場合はこうだった」という一例として受け取っていただければ幸いです。OTAの評価は使う区間や時期、航空会社との組み合わせによっても大きく変わりうるため、本記事のデータをもって安全性を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。


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