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ウイグルに行くなら絶対知っておきたい「新疆時間」とは?北京標準時との2時間のズレが旅行者を混乱させる理由

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新疆ウイグル自治区を旅していると、ある不思議な現象に遭遇することがある。レストランに入ろうとしたらランチタイムにも関わらず「まだ準備中」と言われる。夜の8時なのに外はまだ明るい。朝10時に太陽がようやく地平線から顔を出す。

これは錯覚でも時差ぼけでもない。新疆には、事実上2つの時間が並行して存在しているのだ。

中国は広すぎて、1つの時間帯に収まらない

まず前提として、中国本土はアメリカ大陸とほぼ同じ東西の広さを持ちながら、公式には時間帯はひとつしかない。「北京時間(UTC+8)」がすべての公式時刻として全国に適用されている。

これはもともと、毛沢東が建国後に「国家の統一」を象徴する意味で全土を単一時間帯にまとめたことによる。アメリカが4つの時間帯を使っているのとは対照的だ。

問題は、新疆が地理的に北京から3000キロ以上西に位置しているという事実だ。太陽の動きに照らし合わせると、北京が朝7時のとき、新疆ではまだ夜明け前の暗闇の中にいる。それでも時計の針は「7時」を指している。

新疆時間(ウルムチ時間)とは何か

新疆ウイグル自治区の首府、ウルムチ市

こうした地理的な矛盾を補うために、新疆では北京時間より2時間遅い「新疆時間(UTC+6)」が非公式に使われている。ウルムチ時間とも呼ばれる。

北京時間が正午なら、新疆時間は午前10時。北京時間の午後6時は、新疆時間では午後4時になる。

この新疆時間は1986年に中国政府が公式に認めたものの、あくまでも民間での使用を認めた形にとどまり、鉄道・航空・公式の役所などは引き続き北京時間で動くとされた。結果として、2つの時間が同じ街の中で並行して使われるという、世界的にも珍しい状況が生まれている。

誰がどちらの時間を使っているのか

おおまかに言えば、民族によって使う時間が異なる。

ウイグル族をはじめとする少数民族の多い地域では新疆時間が使われることが多い。日の出・日の入りの自然なリズムに合わせた生活を送るためだ。一方、漢族の多い地域・コミュニティでは北京時間が主流になる。

ウルムチの街を例にとると、ウイグル系の商店や市場では新疆時間で動いていることが多く、「12時に来て」と言われたら新疆時間の12時、つまり北京時間の午後2時を指していることがある。同じ街の中でも、エリアによって2時間のズレが生じているわけだ。

かつてのウルムチでは「二道橋子(エルダオチャオズ)」のようなウイグル系の商業エリアでは新疆時間、「大十字(ダーシーズ)」など漢族エリアでは北京時間、という具合に、歩いて数分の距離に2時間の差が存在していたともいう。

旅行者が実際に困ること

これが旅行者にとってどういう問題を引き起こすか、具体的に考えてみよう。

まず、鉄道と航空券は必ず北京時間で表示されている。チケットに「10:00発」と書いてあれば、それは北京時間の10時だ。新疆時間の8時に相当する。うっかり新疆時間で動いていると、2時間遅れで駅に着くことになる。

次に、レストランの営業時間がズレて見える問題がある。ウイグル系の食堂が「昼12時オープン」と言っても、それは新疆時間の12時であることが多い。北京時間では午後2時だ。「なんで閉まってるんだ」と思ったら、まだ彼らの時間では午前中だったりする。

ホテルのチェックイン・チェックアウトも確認が必要だ。特に個人経営の小さな宿では、どちらの時間を使っているか事前に確認しておいたほうがいい。

現地でアラームをセットするときにも注意が必要だ。なんと、iPhoneは2014年のアップデートで新疆ウイグル自治区内では自動的にウルムチ時間(UTC+6)を設定するよう変更された経緯がある。このアップデートが事前の告知なしに行われたため、北京時間でアラームをセットしていた現地住民が2時間遅れで起きるという混乱が起きた。旅行者も同様の問題が起きる可能性があるため、時刻の確認は複数端末を使用するなど慎重にしたい。

現地での混乱を避けるための実践的なアドバイス

交通機関はすべて北京時間で動く、と覚えておくのが最初のポイントだ。飛行機・鉄道・長距離バスのチケットに書かれた時刻は例外なく北京時間なので、これだけは絶対に混同しないこと。

現地の人に待ち合わせや約束をするときは、「北京時間で?新疆時間で?」と一言確認する習慣をつけると安心だ。中国語では「北京时间还是新疆时间?(北京時間?それとも新疆時間?)」と聞けば通じる。

食事の時間感覚についても、現地の感覚に慣れておいたほうがいい。ウイグル系のレストランでは、北京時間の夜9時や10時でも普通に夕食の時間帯だったりする。逆に言えば、遅い時間まで飲み食いできる場所が多いということでもあるし、早起きして朝活をしようとしても街はゴーストタウンと化しているかもしれない。

日が沈む時間も、北京時間では非常に遅い。夏場のウルムチでは、北京時間の夜10時を過ぎてもまだ空が明るいことがある。体感的には夕方なのに、時計では深夜になりかけている。この感覚のズレは最初のうち戸惑うが、慣れれば夜遅くまで屋外を楽しめるという意味でもある。

まとめ:2時間のズレを頭に入れておくだけで旅がスムーズになる

新疆旅行で「時間」について最低限押さえておくべきことをまとめると、次の通りだ。

交通機関(鉄道・航空・バス)はすべて北京時間(UTC+8)で動いている。ウイグル系の商店・飲食店・市場では新疆時間(UTC+6、北京時間より2時間遅い)が使われていることが多い。現地の人との約束では、どちらの時間か確認するのが基本。スマートフォンの時刻設定と実際の運用がズレている可能性があるため、出発前に確認しておく。

ウルムチや喀什(カシュガル)を訪れる予定があるなら、この2時間のズレを念頭に置いておくだけで、無駄な混乱をかなり防ぐことができるだろう。