前回の記事ではYandex Goのスクーターサービスの概要と使い方を紹介した。
今回は実際に乗り回してわかったことをレポートする。走ったのはタシュケント、サマルカンド、ブハラの3都市だ。なお、ヒヴァには残念ながらスクーターサービスは展開されていないので、その点は事前に頭に入れておいてほしい。
車両の乗り心地と使用感

最高時速は20km。街なかの移動手段としては十分な速度で、自転車よりやや速い程度のイメージだ。今回乗った機体はバッテリーも概ね十分で、走行中に突然止まるようなトラブルはなかった。車体のコンディションも概ね良好だった。
ただ前回の記事でも触れた通り、アクセルがかかりっぱなしになる機体に当たることがある。スタート直後に想定外の勢いで飛び出してヒヤッとする場面もあった。初めて乗る人は必ず人通りの少ない場所で感触を確かめてから走り出してほしい。
日本でLuupなどのシェアスクーターを使い慣れている人なら、操作感自体はそれほど戸惑わないはずだ。ただし後述の通り、日本の整備された路面とはまるで事情が違うので、それは別途覚悟が必要になる。
サマルカンド——乗り入れ禁止が多く、使い所に悩む

サマルカンドでは新市街や西北の墓地方面、グーリーアミールからシヨブバザール周辺を走った。グーリーアミールの青いドームを正面に見ながらハンドルを握る瞬間は、旅の記憶に刻まれる景色だった。

ただサマルカンドは3都市の中で最もスクーターの使い所に悩んだ街だ。旧市街エリアには乗り入れ禁止区域が多く設定されており、レギスタン広場をはじめとする観光の核心部ではそもそもスクーターで走れない。また道路脇には自転車やスクーターの走行を明示的に禁止する標識が立っている場面もある。アプリの地図上で禁止エリアを確認するだけでなく、現地の標識も走りながら注意深く見ておく必要がある。
それでも新市街エリアや旧市街の周縁部では快適に走れた。人の少ない路地に入り込むと、観光地的な雰囲気とはまったく違うローカルな住宅街の景色が広がる。砂と泥が混じった路地を抜けていくと、窓から顔を出した子どもたちと目が合う——そういう瞬間はスクーターならではの体験だ。
ブハラ——3都市で最も大活躍

ブハラでは旧市街エリア周辺からチャルミナル周辺まで、日中から夜にかけて幅広く走り回った。3都市の中でスクーターが最も活躍したのがこのブハラだ。
ブハラの旧市街は東西にかなり長く広がっており、アルク城からカラン・ミナレット周辺、チャルミナルまでをすべて徒歩でカバーしようとすると相当な体力を消耗する。スクーターがあれば、気分に任せてこれらのスポットを何度も行き来できる。特に、早朝のアルク城前広場に差し込む朝日を浴びながら走る感覚は、なんとも言えない充実感があった。

カラン・ミナレット周辺は禁止エリアに指定されているため直接乗り入れることはできないが、その手前まで走ってスクーターを降り、徒歩で向かえばいい。スクーターと徒歩をうまく組み合わせることで、効率よく旧市街を探索できる。旧市街の中でも走れる場所と走れない場所をしっかり把握しながら動くことが、ブハラを快適にスクーターで楽しむコツだ。

観光客向けに整備されたメインストリートから一本奥に入ると、子どもたちが走り回り、老人が軒先に腰かけているローカルな路地が現れる。そういう場所にふらりと入り込んでいけるのも、スクーターの機動力があってこそだ。
タシュケント——公共交通の隙間を埋める
タシュケントではハズラティイマーム広場周辺から新市街南部にかけて走った。夜のタシュケントは都会の活気に満ちており、イルミネーションに彩られた並木道や広場をスクーターで走り抜けるのは気持ちよかった。

ただ大都市ならではの難しさもある。スクーター用に設定されたレーンや歩道が、歩行者で埋め尽くされて走れないような場面も出てくる。人をかき分けながらゆっくり進む羽目になることもあった。
それでもスクーターの便利さは本物だ。タシュケントはバスや地下鉄が発達した大都市だが、経路によっては乗り換えを何度もこなさなければならなかったり、路線の空白地帯に出くわしたりすることがある。かといってタクシーは渋滞に巻き込まれがちで、思ったように進まない場面も多い。スクーターはそのどちらの弱点も補ってくれる存在で、渋滞をすり抜けながら目的地まで自分のルートで移動できた。
走ってわかった路面事情
乗ってみて強く感じるのが、路面の状態が想定より悪いということだ。アスファルトの目が粗かったり、石畳になっていたり、クラックや段差、ボコボコした箇所が随所に現れる。ブハラの旧市街周辺では整備された石畳の道も多いが、それはそれでタイヤへの振動が大きく、長時間走ると手や足に疲労がたまってくる。サマルカンドの住宅地に入ると、砂や泥が混じった未舗装気味の路地もあり、雨上がりはさらに難易度が上がる。

小径タイヤのスクーターにとってこうした路面は相当な試練で、段差を越えるたびに車体がガクッと揺れる。それなりの体幹がないと、道によっては転倒リスクも出てくる。無理な速度で荒れた道に突っ込まないよう、常に路面の状態を先読みしながら走ることが大切だ。
一方でこの悪路が副産物をもたらしてくれた。メインストリートから一本入った路地では、観光客向けの洗練された雰囲気とは一線を画したローカルな暮らしの断片が見えてくる。表通りの喧騒が嘘のように静かな路地を、風を感じながらするすると抜けていく感覚は、徒歩でもタクシーでも味わえないものだ。
注意しておきたいこと
エリア外に出ると動かなくなる。うっかり対応外エリアに踏み込むと速度が落ちてスクーターが止まり、重い車体を引きずって対応エリア内まで戻らなければならない。地図上の境界線は事前にしっかり確認しておこう。
意外と料金がかさむ。気分よく乗り続けていると、気づいたらタクシーより高くついていたということがある。時間課金で乗る場合は特に注意で、ある程度まとまった距離を移動するつもりならパックプランを積極的に活用したい。
返却ポイントの判定が少し厳しい。指定駐車スポットに停めても、位置が少しずれると判定されないことがある。その間も料金は加算され続けるので、返却時は焦らずアプリの地図と照らし合わせながら正確な位置に合わせよう。

人が多い場所では徐行を。バザール周辺など人の往来が激しいエリアでは、歩行者との接触に細心の注意が必要だ。海外での交通事故は対応が非常に煩雑になる。スピードを落として、常に周囲の状況を確認しながら走ってほしい。
まとめ
注意点はあれこれあるものの、総じてスクーターでの移動体験は満足度が高かった。同じようにスクーターで走る地元の若者ライダーと会釈を交わしながら、生の風を感じて街を駆け抜ける——そんな移動がこんなに気持ちいいとは思っていなかった。
今回走った3都市で、外国人観光客がスクーターを利用している姿はほとんど見かけなかった。それだけまだ「旅行者向けのサービス」という認識が広まっていないのかもしれない。しかし使いこなせれば、観光の幅が確実に広がる。タクシーでは素通りしてしまうような路地の奥に、この街の本当の顔が隠れている。それを見つけに行く手段として、スクーターはこれ以上ない相棒になってくれた。