
ウズベキスタンはムスリムが人口の大多数を占める国だ。「じゃあお酒は飲めないんじゃないか」と思う人も多いだろう。しかし答えはノーで、ウズベキスタンではアルコールは合法だ。専門の酒屋やビール専売キオスクが街中に存在し、レストランでも酒を出す店は多い。
とはいえ、敬虔なムスリムはアルコールを口にしない。ウズベキスタンのイスラムは比較的ゆるやかな面もあるが、飲む人と飲まない人がはっきり分かれているのが実態に近い。果たしてどんな飲み屋文化が根付いているのか。サマルカンドで実際に調査してみた。
サマルカンドにパブストリートがある

サマルカンドの新市街に、正式に「パブストリート」と名付けられたエリアがある。
このストリートが飲み屋街として機能している背景には、ウズベキスタンを代表するビールブランド「PULSAR」の存在がある。PULSARの工場がこのストリートのつき当たりに位置していることから、工場で作ったばかりのフレッシュなビールがストリート近辺の飲み屋に運ばれてくる——そんな噂が広まり、ここがサマルカンド随一の飲み屋街になったとも言われている。

ここで少しウズベキスタンのビール事情を整理しておこう。国内で見かける主なブランドは3つだ。Sarbast(サルバスト)は地元の人が日常的に飲む庶民派ラガーで、ウズベキスタン全体でみると圧倒的シェアを誇る。一方、サマルカンドを本拠地とするPULSAR(プルサル)はサマルカンドでのシェアは随一。また、旧ソ連時代から続くЖигулёвское(ジグリョフスコエ)は旧ソ連圏に広く普及する定番銘柄で、バーのタップにも並ぶことが多い。そしてパブストリートではこれらを中心に、PULSARが特に幅を利かせている。
パブストリートを練り歩く

さて、とある夜。パブストリートの中でも、PULSAR直営店との噂があるBochkaという店へまず向かった。ロシア語で「樽」を意味する店名の通り、入口横には大きな木樽がどんと置かれており、ブルワリーらしい雰囲気がある。
しかし、Googleマップでは営業中のはずなのに、扉は閉まっている。直営店だけに期待していたのだが、不定期営業なのか、単なる運の悪さか。理由は分からないまま、仕方なくストリートを歩いて別の店を探すことにした。

パブストリートと聞いて想像していたのは、店の前に人がわんさかと立ち飲みし、あちこちから笑い声が聞こえてくるような、ヨーロッパの旧市街の飲み屋街みたいな光景だった。しかし実際に歩いてみると、ストリートはかなりシーンとしている。

確かに両脇に飲食店が並んではいるが、閉まっている店舗が目立つ。歩いていると「Bar Legend」という店が目に入った。建物の壁面には木製の荷車を描いた大きな壁画が施されており、入口の前にはPULSARブランドのビールキオスクが設置されている。ここでテイクアウトもできる仕組みになっているらしい。ウズベキスタンらしい、なかなか面白い光景だったが、肝心の店内は営業していなかったようで、利用を諦めた。
Green Bear Barへ——念願のPULSARを飲む
開いている店を探しながら歩き、「Green Bear Bar」に入ることにした。

中に入ると内装の作り込みに驚く。むき出しのレンガ壁、太い木の梁を組んだ高い天井、燭台風のシャンデリア——まるでヨーロッパの中世風醸造所を模したような空間だ。奥の壁には熊が描かれた大きな壁画があり、店名の由来はここにあるのだろう。客席にはゆったりとしたソファが並び、スタンディングでわいわいするというよりは、腰を落ち着けてしっぽりと飲む雰囲気だ。席はほぼ埋まっており、客層は地元の人と外国人観光客がおよそ半々といった印象だった。

バーカウンターに腰を下ろした。カウンターの奥にはタップが3本並んでいる。PULSARが2系統(フィルタードとアンフィルタード)、もう1本はジグリョフスコエだ。

まずフィルタード(シルバー)から試してみると、すっきりとしたピルスナー系の味わいで、日本人にもなじみやすいタイプだ。続いてアンフィルタードを飲むと、こちらはより濁りのある色合いで、麦の風味がしっかりと出ている。どちらも悪くないが、飲み比べるとアンフィルタードのほうが個性があって面白い。
たまたま隣に座っていたのも日本からの旅行者だった。すでにサマルカンドに数日滞在し、飲み屋を渡り歩いているとのことで、情報交換をした。

話を聞くと、やはりサマルカンドの酒シーンは思ったほど盛り上がっていないという。合法ではあるものの、あくまで一部の人たちの嗜好品という位置付けで、多くのムスリムが敬遠する傾向があるのは確かなようだ。ただ個人的には、パリピ的な騒がしさが苦手なので、むしろこのくらいの温度感でしっぽりと飲めるのは悪くないと思った。旅先でひとり静かにビールを飲みながら、見知らぬ旅行者と話が弾む——そういう時間の使い方ができる場所だ。

何杯か飲んだ後、レシートを確認すると、プルサル・シルバーとアンフィルタードを合わせて3杯(各0.5L・12,000スムずつ)、ピスタチオが20,000スム。そこにサービス料15%が加算されて、合計64,400スム——日本円でおよそ840円だ(10,000スム=約130円換算)。ビール1杯あたり約160円という計算になる!安の昨今でこの金額は驚きだ。これだとついつい飲みすぎてしまいそうになる。
まとめ——期待値を調整して行けば、悪くない
サマルカンドのパブストリートは、賑やかな飲み屋街を期待していくと肩透かしを食らうかもしれない。今回は平日かつ雨の夜という条件だったので、週末や祝日はまた雰囲気が違う可能性もある。
それでも、PUB STREETのアーチをくぐり、PULSARの醸造所を横目に歩き、パブホッピングをしながらフレッシュなビールを飲む——この流れは、「ウズベキスタンでお酒を飲む」という体験としてかなり完成度が高い。価格はほぼ信じられない水準の安さで、内装のクオリティも高い。「ウズベキスタンで一杯やりたい」という人は、ぜひパブストリートに足を運んでみてほしい