
張家界といえば、映画「アバター」のモデルになったとも言われる武陵源の絶景が有名だ。しかし、張家界にはもう一つ、訪れるべき名所がある。それが天門山国家森林公園、そして天門山のシンボルとも言える999級天梯(999段の階段)だ。
全長約300メートル、垂直落差150メートル、平均斜度45度。天門洞へと続くこの階段は、見た目以上に過酷で、多くの観光客が途中で息を切らせながら登っている。その険しさから「雲端険梯」「量産車禁区」とも呼ばれ、極限スポーツの舞台にもなってきた。
今回、健脚の男子2名で実際にこの999段に挑戦してきた。果たしてどれほどきついのか、冬に登るメリットは何か、そしてエスカレーターという選択肢はありなのか。実体験をもとに、天門山999級天梯の全てをレポートする。
天門山へのアクセス:ロープウェイで一気に上空へ

天門山へは、市街地からロープウェイで向かう。全長7455メートル、所要時間約30分という世界最長級のロープウェイは、それだけでも一つのアトラクションだ。眼下には張家界の街並みが広がり、やがて切り立った奇岩の山々が迫ってくる。ロープウェイから見える武陵源の奇岩群は、まさに絶景だ。

ロープウェイを降りると、そこはすでに標高1000メートル以上の山の中腹。ここから天門洞を目指す道が始まる。観光マップを見ると、天門山の複雑な地形と、そこに張り巡らされた遊歩道が描かれている。そしてマップの中央に、ひときわ目立つ存在として描かれているのが、あの999段の階段だ。
登る前の腹ごしらえは必須

999段に挑む前に、まずは腹ごしらえ。これは絶対に必須だ。今回、中国の友達が手ぶらで食べられるインスタント飯を持ってきてくれた。蓋を開けるだけで食べられるタイプの自加热米饭(自己発熱式ご飯)だ。
具材を混ぜ、同封の水を注いで数分待つと、化学反応で温まる仕組み。山の上で温かいご飯が食べられるのは、想像以上にありがたい。冬の張家界は気温が低いので、体を温めるためにも、エネルギー補給のためにも、温かい食事は重要だ。
遠くから見た999段:スケール感に圧倒される

天門洞広場に到着すると、まず目に飛び込んでくるのが、遥か上空に穿たれた巨大な穴だ。天門洞。高さ131.5メートル、幅57メートルという、自然が作り出した奇跡の造形。そして、その天門洞へと続く階段が、山肌に張り付くように延びている。

遠くから見ると、階段は5列に分かれている。両脇に手すりがあり、真ん中で2つの登り道に分かれているのだ。この5列構造のおかげで、遠目には縦横比的にそれほど長く感じない。しかし、よく見ると、階段の上を歩く人々が米粒のように小さい。
流石、中国スケール。実際には、とてつもない長さなのだ。
いざ、999段へ:最初の一歩

広場から階段へと向かう。階段の入口には、天門山のシンボルである双塔が立っている。ここから999段が始まる。
最初は比較的緩やかだ。周りを見渡すと、観光客たちが次々と登り始めている。中には軽装の若者もいれば、年配の方もいる。みんな、この999段に挑戦するためにここまで来たのだ。

今回、私たちは健脚の男子2名で999段に挑戦した。日頃から運動しているし、まあ大丈夫だろうと軽い気持ちで臨んだのだが、これが大きな間違いだった。
登り始めて5分もすると、すでに息が上がってくる。平均斜度45度というのは、数字で見るより遥かにきつい。しかも、階段は狭く、足元に集中しなければならない。登っても登っても、まだ上が見える。そして、遥か上空には天門洞が見えているのだが、一向に近づいている気がしない。

途中、何度も立ち止まって休憩を挟んだ。手すりに掴まりながら、息を整える。周りを見渡せば、同じように息を切らせている観光客たち。中には途中の踊り場に座り込んで、しばらく動けない様子の人も。それでも、みんな少しずつ上へ、上へと進んでいく。

階段の途中で振り返ると、眼下には広大な天門洞広場が広がっている。そして、その奥には張家界の街並みが霞んで見える。この景色だけでも、登る価値がある。しかし、まだ半分も登っていない。
階段の脇には、ところどころに休憩スペースがある。そこでベンチに座り、水分補給をしながら、また登り始める。

ところで、私たちが訪れたのは12月。冬の張家界は、気温が低く、空気が澄んでいる。それでもこのきつさだ。夏の暑さの中でこの階段を登るとなれば、おそらくもっと過酷だっただろう。
熱中症のリスクも高まるし、体力の消耗も激しい。冬でもこれだけ息が上がるのだから、夏に挑戦する人は相当な覚悟が必要だ。水分補給をしっかりと準備し、休憩を多めに取る必要がある。
ついに天門洞へ
そして、ついに999段を登り切った。天門洞の入口に立った瞬間、疲れが一気に吹き飛んだ。

目の前には、巨大な天然のアーチが広がっている。自然が作り出したとは思えないほど、美しく、そして圧倒的な存在感。洞窟の向こうには、青空が見える。まるで天への扉のようだ。
登ってきた999段の階段を振り返ると、遥か下に天門洞広場が見える。あそこから、ここまで登ってきたのかと思うと、信じられない気持ちになる。そして同時に、大きな達成感が込み上げてくる。
しかし、天門山の旅はここで終わりではない。天門洞は、あくまで天門山観光の入口。ここから先には、断崖絶壁に張り付くように設置されたガラスの遊歩道、山頂からの360度パノラマ、そして数々の絶景ポイントが待っている。
999段を登り切った達成感に浸りながら、これから始まる天門山の本番に期待が高まる。その様子は、次回以降の記事で詳しくレポートする予定だ。
ちなみにエスカレーターでも登れる

実は、999段を登らなくても天門洞へ行く方法はある。穿山電梯(山を貫くエスカレーター)を使えば、楽々と天門洞まで到達できる。体力に自信がない人や、時間が限られている人は、こちらを選ぶのも賢い選択だ。
エスカレーターは山の内部をくり抜いて作られており、一番下から上まで登り切ると15分ほど掛かる。ある種の名物とも言え、それだけでも一見の価値がある。乗っている間は景色が見えないが、快適に天門洞まで到達できる。
しかし、あえて言いたい。死にながら登ってこそ、記憶に残る。
エスカレーターで楽に登った景色と、999段を自分の足で登り切った後に見る景色では、感動の重みが違う。息を切らし、足がガクガクになりながらも、一段一段踏みしめて登った先にある達成感。それは、旅の中でも特別な思い出になるはずだ。
まとめ:とてつもなくしんどいが、挑戦する価値、あり
天門山999級天梯は、確かにきつい。でも、その分、登り切った時の達成感は格別。
張家界を訪れるなら、武陵源だけでなく、ぜひ天門山にも足を運んでほしい。そして、体力に自信があるなら、999段にチャレンジしてみてほしい。