レギスタンのすぐ裏手に、こんな宿があった
サマルカンドの宿選びで迷ったら、立地を最優先にすることをお勧めしたい。観光の核心であるレギスタン広場まで徒歩3分——このひと言に尽きる。
Tilyakori Hotelは、レギスタン広場の裏手の路地に面した小規模なブティックホテルだ。看板を頼りに細い路地を進むと突然現れるこの宿は、外観からは想像できないほど手の込んだ内装を持っている。ソビエト時代のラーダが路上に停まっているような下町の路地の奥に、こんな宿が潜んでいるとは——初めて中に入ったときは少し驚いた。
チェックインは深夜1時——それでも温かく迎えてくれた

この日、ホテルに到着したのは深夜1時頃だった。タシュケントからの移動やら鉄道の遅延やらで予想以上に時間がかかってしまい、さすがに申し訳ない気持ちでドアを開けた。
しかし迎えてくれたのは、にこやかなおじちゃんスタッフ(オーナーだろうか)。深夜にもかかわらず嫌な顔ひとつせず、部屋まで案内してくれた。疲れ切った体には、この温かい対応がじんわりと染みた。旅先でのホスピタリティって、金額以上に記憶に残るものだと改めて思う。
基本情報と料金
今回、Booking.comで予約した。朝食付き・デラックスツインルームで1泊あたりUS$29.08(VAT込み)。別途ツーリズムフィーが1人1泊$3かかるが、それを足しても1泊30ドル台だ。レギスタン徒歩3分・朝食付き・バスタブ付きでこの価格は、正直かなり安い。ウズベキスタンの物価水準とはいえ、これだけの条件が揃ってこの金額というのは、旅行者として素直に嬉しい。
ホテルの内装——路地の奥に広がる木工の世界

フロントに入った瞬間、テンションが上がった。両側の壁に大きなスザニ刺繍が飾られ、天井は木製の格子張り。シャンデリアが柔らかく灯るロビーは、こじんまりとしているが丁寧に作り込まれた空間だ。こういうブティックホテルならではの凝った内装は、チェーンホテルにはない独特のワクワク感がある。疲れて到着したはずなのに、思わずスマホを取り出して写真を撮ってしまった。

さらに奥に進むと、このホテルの真骨頂が現れる。吹き抜けの中庭を囲む木製バルコニーで、精巧な彫刻が施された柱が1階から2階まで伸びている。中央には太い彫刻柱が一本どんと立ち、上部はガラス張りの天窓になっている。ウズベキスタンの伝統建築様式を現代的にアレンジした、職人の手仕事が随所に感じられる空間だ。廊下に出るたびにこの吹き抜けを見下ろすことになるのだが、朝の光が天窓から差し込む時間帯は特に美しく、毎回立ち止まってしまった。
客室——バスタブがあると、旅が変わる

デラックスツインルームはツインベッドが2台、シルバー系の壁紙が落ち着いた雰囲気を作っている。テレビ・エアコン・暖房も完備で、収納はしっかりした木製のワードローブ。設備面での不満は特にない。

特筆したいのがバスルームだ。コーナー型のバスタブが付いている。これが地味に嬉しい。ウズベキスタンに限らず、旅先のホテルでバスタブ付きの部屋というのは意外と少ない。シャワーだけの部屋がほとんどの中、バスタブがあると旅の疲れの落ち方がまるで違う。1日歩き回ってくたくたになった夜、湯船に浸かれるというのは、それだけで宿を選ぶ理由になり得る。清潔感もあり、ドライヤーも完備。実用面でも十分満足できる内容だった。
朝食前にレギスタンへ——観光客ゼロの絶景を独り占め

朝食は8時から10時。起きてすぐ身支度を整え、まずはふらっとレギスタン広場へ向かった。ホテルから歩いて3分。
早朝のレギスタンは、昼間とはまるで別の顔をしている。観光客がほとんどいない。地元の人がぽつぽつと通り過ぎるだけで、あの荘厳な広場がしんと静まり返っている。青いドームが朝の光を静かに受け、空気がひんやりと澄んでいる。

昼間のレギスタンは、世界中から集まった観光客でにぎわっている。それはそれで活気があっていいのだが、人混みの中ではどうしても落ち着いて眺めることができない。カメラを向けても人が映り込む。じっくりと建築の細部を眺める余裕もなくなってくる。ところが早朝であれば、その広場を事実上独り占めにできる。世界遺産を、自分だけのものにできる瞬間がある——これは、近くに泊まっているからこそ味わえる特権だ。
レギスタンは朝・昼・夜でまったく異なる表情を見せる。今回の滞在では時間帯を変えて何度も足を運んだが、その変化についてはまた別の記事で詳しくレポートしようと思う。とにかく、徒歩3分の距離にいると「また行こう」というハードルが限りなく低くなる。これが観光地のすぐそばに泊まることの、一番の価値だと感じた。
家庭的な朝食

散策を終えてホテルに戻り、朝食へ。ウズベク模様の青白い皿に、サラミ・チーズ・バター・パン・ドライフルーツ・ナッツ・菓子類が並ぶ。派手なビュッフェではないが、家庭的な温かさのある朝食で、フルーツも添えられており内容としては十分だ。
この日の朝食会場でたまたま同じ日に宿泊していた日本人旅行者と隣り合い、しばらく情報交換をした。ウズベキスタンに来る日本人旅行者は決して多くないが、こういう小規模な宿で出会うとなんとなく親近感が湧くものだ。旅先での偶然の出会いも、旅の醍醐味のひとつだと思う。

まとめ——この立地でこの価格は、正直反則級
Tilyakori Hotelは、価格・立地・内装・ホスピタリティのすべてがバランスよく揃った宿だ。1泊30ドル台で、レギスタン徒歩3分・朝食付き・バスタブ付き・ブティックホテルらしい凝った内装——この条件を並べると、改めてコスパのよさを実感する。深夜チェックインでも温かく迎えてくれるスタッフの対応も、長い旅の疲れをほぐしてくれた。
早朝のレギスタンを観光客ゼロで独り占めできる体験は、近くに泊まっているからこそ実現できるものだ。サマルカンドで宿を探しているなら、ぜひ候補に入れてみてほしい。