「ESTAが突然使えなくなった」「ESTA申請を拒否された」――そんな経験をした人、あるいはこれからESTAが使えなくなりそうで不安な人へ。このシリーズでは、米国の観光・商用ビザ(B1/B2ビザ)の取得フローをどこよりもわかりやすく解説します。第1回は、申請前に知っておくべき必要書類と要件から。
そもそもB1/B2ビザって何?ESTAとの違いは?
日本のパスポートを持っていれば、通常はESTA(電子渡航認証)で米国に入ることができます。費用も安く、オンラインで完結するので手軽です。ただし、ESTAが拒否された人、イランやキューバなど特定の国への渡航歴がある人、過去に米国でオーバーステイをした人などはESTAが使えません。そういった場合に必要になるのが、大使館での面接を伴うB1/B2ビザ、いわゆる米国の観光・商用ビザです。
B1はビジネス目的、B2は観光・保養目的のビザで、実際の申請では「B1/B2」としてセットで申請するのが一般的です。ESTAと比べると手間はかかりますが、取得できれば最大10年間有効(日本人の場合)で、1回の滞在で最大6ヶ月まで認められるという強みもあります。
申請前に準備するもの、一覧
細かい解説は後述しますが、まずは全体像を把握しておきましょう。DS-160(オンライン申請フォーム)の入力を始める前に、以下の情報・書類を手元に揃えておくとスムーズです。
- 有効なパスポート(残存期間の確認を)
- 過去のパスポート(米国ビザが貼ってある場合)
- 証明写真(デジタルデータ)
- 過去5年間に使用したSNSアカウントのID一覧
- 過去の米国渡航歴(渡航日・滞在期間)
- 現在・過去の勤務先情報(会社名・住所・電話番号)
- 学歴(学校名・所在地・卒業年)
- 両親・配偶者の氏名と国籍
これらをざっと確認した上で、DS-160の入力を始めるのが正解です。途中で「あの情報どこだっけ」と詰まると、かなり時間をロスします。
パスポートの残存期間、実は6ヶ月なくてもいい?
よく「パスポートの残存有効期間は6ヶ月以上必要」と言われますが、日本人の場合は特例により滞在期間中有効であればOKというルールになっています。筆者自身、6ヶ月を切った状態で通過しました。
ただし、現場の入国審査官の判断に委ねられる部分が大きく、6ヶ月を切っていると審査でもめる可能性は十分あります。できれば残存期間は6ヶ月以上あると安心です。ビザ申請のタイミングで残存期間が少ない場合は、パスポートの更新を先に済ませておくことを強くおすすめします。
なお、パスポート有効期限が切れた後は、更新したパスポートと共に、ビザが貼られた古いパスポートを提示することで、米国入国が可能となります。
ちなみに、過去のパスポートに米国ビザや入国スタンプが残っている場合は、面接時に提示を求められることがあるので、捨てずに保管しておきましょう。
DS-160とは?オンライン申請フォームの基本
観光・商用ビザの申請は、まずDS-160と呼ばれるオンライン申請フォームの入力から始まります。米国国務省のサイト(ceac.state.gov)から入力し、完了後に発行されるApplication ID(例:AA00BCDEFG)が、以後の面接予約や再開に必要になります。このIDは必ずメモして安全な場所に保管してください。60日間更新がなければデータが削除されてしまいます。
フォームは英語のみですが、途中で保存できるので一気に完成させる必要はありません。ただ、途中で詰まりがちなのが「過去の勤務先情報」「学歴」「両親の国籍」といった、意外と手元にない情報です。前述の準備リストを参考に、事前に情報を整理しておくことをおすすめします。
証明写真はスマホ撮影でもOK、ただし条件あり
DS-160にはデジタル写真のアップロードが必要です。背景は白か白に近い薄い色、正面向き、眼鏡なし、無表情が条件です(眼鏡NGは2016年以降のルール)。スマホで自撮りしてトリミングするだけでも対応できますが、審査に引っかかると再提出になるので、クオリティには気を使いましょう。
面接当日には5cm×5cmの写真を1枚持参する必要もあるため、コンビニのプリントサービスや証明写真機でプリントしておくのが無難です。
SNSアカウントは正直に全部申告する
DS-160の中で多くの人が戸惑うのがSNS欄です。過去5年間に使用したFacebook、Instagram、X(旧Twitter)、YouTubeなどのアカウントIDを申告する必要があります。「バレないだろう」と思って省略するのは絶対にNGです。虚偽申告は後々のビザ取得・入国に深刻な影響を及ぼします。
ブログを運営している場合は「その他のウェブサイト・アプリ」の欄への記載も検討してください。複数のSNSやブログを持っている場合は、「Add Another」ボタンで追加していきます。
MRV Fee(ビザ申請料)の支払いを忘れずに
DS-160の提出とは別に、MRV Feeと呼ばれる申請料185ドルの支払いが必要です。日本ではゆうちょ銀行などでの銀行振込、またはオンライン決済で支払えます。支払い後に発行されるレシートIDは面接予約時に必要になるので、こちらも大切に保管してください。
領収書の有効期間は1年間。つまり支払いから1年以内に面接を受ける必要があります。大使館の面接予約は混雑していることが多いので、支払いと予約はなるべく早めに動くのが正解です。
申請からビザ取得まで、どれくらいかかる?
ESTAと違って、観光・商用ビザの取得にはそれなりの時間がかかります。「来月アメリカに行きたい」と思い立ってから申請しても、まず間に合いません。これから申請を考えている人は、渡航予定日の半年前、できれば余裕を持って6〜8ヶ月前には動き始めることを強くおすすめします。
おおまかなタイムラインはこうなります。
DS-160の入力とMRV Feeの支払いは、集中して取り組めば1日で終わります。問題はその後の面接予約です。東京の大使館は予約枠が非常に混んでおり、筆者が確認した時点では3ヶ月先まで空きがない状態でした。つまり、申請を始めてから面接を受けるまでに3〜4ヶ月待ちというのが現実的な目安です。
面接が終わってビザが承認されれば、パスポートの返送まではおおむね数日から1週間程度。窓口受取を選べばもう少し早く手元に届く場合もあります。
全体をまとめると、申請開始からビザ受け取りまでトータルで4〜5ヶ月はかかると思っておいた方が無難です。渡航が決まったら、航空券やホテルを押さえる前にまずビザ申請の準備を始めるのが鉄則。ビザが下りてから旅の計画を本格化させましょう。
ビザ申請料185ドル、ESTAと比べて実際に高い?
観光・商用ビザの申請料は185ドル(約2万8千円)。一方、ESTAは21ドル(約3千円)です。単純に比べると約9倍の差があり、確かに安くはありません。
ただ、ビザは最大10年間有効で、その間は何度でも渡航できます。つまり、渡航回数が増えるほど1回あたりのコストは下がっていきます。
ESTAは2年ごとに21ドルの更新が必要なので、10年間で単純計算すると5回更新で105ドル。対してビザは185ドルの1回払い。
ESTAとビザの申請料だけで比較すると、差額は約80ドル(約1万2千円)。渡航回数(更新回数)が増えれば増えるほどビザがお得になりますが、正直なところコスト面だけでビザを選ぶ理由にはなりません。
ビザの真のメリットは、ESTAが使えない状況でも米国に行けること、そして一度取得すれば10年間安心して渡航できること。費用対効果というより、渡航の選択肢を守るための投資と考えるのが正しい見方です。年に複数回米国を訪れるヘビーユーザーであれば、長期的にはESTAより割安になる可能性もあります。
次回は、DS-160の入力の流れと、大使館面接の予約方法をステップごとに詳しく解説します。

