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肇興侗寨の絶景カフェ「全景咖啡」——鼓楼と瓦屋根を見下ろす270度のパノラマ【貴州省】

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貴州の山あいに、こんな場所があるとは知らなかった。

民家の路地を抜け、石段を上り、半信半疑で進んでいった先に、村全体を見下ろす絶景カフェがある。鼓楼の尖塔が瓦屋根の海から突き出し、背後には緑深い山が迫る——肇興侗寨の全景が、目の前に広がる。小紅書で偶然見かけた一枚の写真が気になって足を運んだだけだったが、実際にその場所に立ってみると、想像をはるかに上回る景色が待っていた。

肇興侗寨とはどんな場所か

貴州省黎平県に位置する肇興侗寨は、中国最大規模の侗族集落として知られる村だ。侗族は中国南部の少数民族で、独自の建築文化や音楽、染色技術を持つ。中でも「鼓楼(ころう)」と呼ばれる多層式の塔型建築は侗族文化の象徴で、集落ごとにひとつずつ建てられ、村人が集まる場として使われてきた。肇興にはその鼓楼が5棟もあり、ひとつの村にこれほど多くの鼓楼が集中するのは全国的にも珍しい。

村全体は山あいの谷間に広がっており、黒灰色の瓦屋根が隙間なく連なる景観が圧巻だ。観光地化が進んでいる一方で、今も多くの侗族の人々が実際に暮らしており、生活感と観光地感が混在している。メインストリートには土産物屋や飲食店が並ぶが、一歩路地に入ると途端に生活の空気が濃くなる——そんな村だ。

その肇興の景観を、鼓楼ごと一望できる場所がある。村の東側の高台に位置する隠れ家カフェ「全景咖啡」だ。

小紅書で見かけた一枚の写真

このカフェの存在を知ったのは小紅書だった。「肇興 カフェ」で検索していたところ、屋根の上から侗族の集落と鼓楼を見下ろす圧倒的な一枚が目に入った。瓦屋根が折り重なる海の中に、鼓楼の尖塔がすっと突き出している構図——一目見た瞬間、これは行くしかないと思った。

民家の迷路を抜けていく道中

村の東側の高台エリアを目指して歩き始める。「全景珈琲」の看板が見えたら、メインストリートから脇道へ外れ、地元住民の生活エリアへと迷い込んでいく。

石畳の路地は人ひとりがやっと通れる幅で、苔むした石段が続く。両側には年季の入った民家の壁が迫り、軒先には生活用品が無造作に積まれている。石積みの壁、赤い春聯が貼られた木の扉、頭上を這う電線——観光地として整備されたエリアとは打って変わって、ここは地元の人たちが実際に暮らす路地だ。どこを切り取っても生活感にあふれていて、それ自体が肇興の裏側を垣間見るような体験になっている。

一見「本当にここを通るのか?」と戸惑うようなトリッキーなルートだが、小紅書の写真と照らし合わせながら歩けば意外とすんなりたどり着ける。地図アプリだけを頼りにするより、事前に投稿の写真をいくつか頭に入れておいたひうが吉だろう。

そんなこんなで、石段を5分ほど上がるとすんなりとカフェにたどり着いた。

店内は木造の柱と梁を活かしつつ、全体的にモダンにまとめられた空間だ。古民家の素材感を残しながらもおしゃれに仕上がっており、侗族らしい藍染めの布や装飾がさりげなくアクセントになっている。コーヒーは貴陽のローカルブランド「乔治队长(ジョージ隊長)」を使用している。

注文を済ませてから屋上へ上がる流れで、席に着いてしばらく待つとスタッフがドリンクを届けてくれる。アメリカーノはすっきりとしてクセがなく飲みやすかった。炎天下の中石段を歩いてきたが故の疲労も相まって、最初の一口から気分が上がった。

屋上スペース——鼓楼と瓦屋根を見下ろす270度の絶景

屋上に出た瞬間、視界が一気に開ける。

目の前に広がるのは、肇興侗寨の全景だ。黒灰色の瓦屋根が手前から奥へ、左から右へと途切れることなく続いていく。隙間なく敷き詰められた屋根の海の中に、鼓楼の六角形の尖塔がいくつも顔を出している。高い場所から見下ろすと、それぞれの鼓楼がどの集落に属しているかが一望でき、村の構造がはじめて立体的に見えてくる。

鼓楼を見下ろす感覚は新鮮

背後には緑深い山が迫り、斜面には茶畑が広がっている。空が晴れていれば、青空と山の緑、黒い瓦屋根のコントラストが鮮やかで、どこにカメラを向けても絵になる。高い場所に位置しているぶん俯瞰の角度が急で、村全体を「上から包む」ような感覚が強い。270度にわたって視界が開けており、これだけの規模で侗族集落を一望できる場所はそうそうない。

眼下には農作業に励む農夫の姿も

遠くには山の稜線が幾重にも重なり合い、その手前に広がる集落の密度と山の奥深さとのスケール感の対比が印象的だった。昼の光の中で屋根瓦がわずかに光を反射し、風が吹くたびに木々が揺れる——静かに眺めているだけで、時間が経つのを忘れてしまうような景色だ。

撮影のための仕掛けが充実

屋上テラスには写真撮影のための仕掛けがいくつか用意されており、それぞれ異なる構図で村の絶景を切り取ることができる。

最大のポイントは、テラスの縁が本物の瓦屋根そっくりのセット構造になっていることだ。ここに腰かけると、まるで屋根のてっぺんによじ登ったかのような写真が撮れる。足元に瓦、正面に鼓楼と村の全景——インパクトのある一枚が狙える。

写真だと崖の縁に座っているように見えてかなりスリリングだが、実際にはセーフティネットが張られており、傾斜もゆるやかで思ったより怖くない。

また別の面では、アクリルパネルの壁が設置されているため安全性は確保されつつ、写真には映り込まない設計になっているのも嬉しい。

ブランコも絶景ポイントのひとつ。村と鼓楼を見下ろしながら揺れるという、なかなか贅沢な撮影体験ができる。屋根の縁が怖いという人でも、ブランコからなら気軽に絶景写真が狙えるかも?

昼頃に行ったこともあり、これらのスポットはどれもやんわり順番待ちの状態だった。ただ殺伐とした感じはなく、お互いが自然と譲り合いながら各自のペースで撮影していた。

混雑を避けたいなら、早朝か夕方前を狙うのがよさそうだ。コーヒーを飲みながら景色を眺め、各スポットで撮影もして、滞在は1時間弱。それでも十分に満喫できた。

まとめ

民家の路地を抜けてたどり着く隠れ家感、屋上からの270度パノラマ、鼓楼を見下ろす唯一無二の構図、そして撮影のための仕掛けの数々——「全景咖啡」は景色もカフェとしての完成度も高い一軒だ。肇興侗寨を訪れるなら、ぜひ小紅書を片手に探してみてほしい。屋根の上から眺める村の景色は、きっと旅の記憶に長く残るはずだ。