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ヒヴァの特等席レストラン②|ライトアップされた塔を見上げて――イスラーム・ホジャの真下のルーフトップ「Caravan」

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前回の①では、西門近くの屋上テラス「Terrassa」から、昼のイチャン・カラを見下ろす特等席を紹介した。塔も城壁もドームも一枚の絵になる、あの俯瞰の眺め。あれはあれで最高だった。

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でも、ヒヴァには「見下ろす」のとは正反対の特等席もある。今回②で紹介するのは、ヒヴァで一番高い塔——イスラーム・ホジャ・ミナレットを、真下から見上げる屋上レストラン「Caravan(キャラバン)」だ。しかも、狙うべきは夜。日が落ちてライトアップが灯る、あの時間帯にこそ、この店の本領がある。

ヒヴァで一番高い塔の、足元に立つ店

まず、立地を説明したい。

イチャン・カラの中でひときわ高くそびえる塔がある。イスラーム・ホジャ・ミナレット。高さおよそ57メートル、ヒヴァで最も高い建造物だ。カルタ・ミナルが「途中で建設が止まった、太くて短い塔」なら、こちらは「天まで届けとばかりに細くまっすぐ伸びた塔」。

ミナレットの上、「ヒヴァで最も高い場所」から見下ろす景色はスリリング。また別記事で詳しく紹介します。

上に向かってすぼまっていくシルエットと、青とテラコッタの帯が幾重にも巻かれた装飾が美しい、ヒヴァのランドマークだ。

「Caravan」は、そのミナレットのほぼ真下にある。屋上のテラス席に上がると、塔が視界いっぱいに、下から上へと突き抜けていく。Terrassaが「街全体を少し離れて眺める」店だとすれば、こちらは「一本の塔と全力で向き合う」店だ。同じヒヴァの屋上レストランでも、体験の方向性がまるで違う。

ノウルーズには地元&観光客が一緒になって盛り上がる文化発信地として一役買っていた。

そして実は、この店とはちょっとした縁がある。初めて訪れたのは、ちょうどペルシャ新年ノウルーズ(春分の祭り)の日。店の前の路地では大鍋でスマラクが炊かれ、音楽が爆音で流れ、人々が踊り出す——そんな祝祭のど真ん中にあったのがこの店だった。店の青年と意気投合し、夜には「スマラクを食べに来なよ」と誘われて再訪。深夜まで一家と語り合うことになった。あの一日の顛末は別記事(ノウルーズ体験レポート)に詳しく書いたが、今回はその店を、あらためて「特等席レストラン」として腰を据えて紹介したい。

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日が暮れてからが本番

昼のヒヴァも美しい。日干しレンガが夕日に染まる時間帯も捨てがたい。でも、この店に関して言えば、断然おすすめは夕方〜夜だ。

日が完全に落ちると、イスラーム・ホジャ・ミナレットにライトが灯る。塔全体がぼうっと下から照らし出され、青いタイルの装飾が闇の中に浮かび上がる。昼間は青空を背景にくっきり見えていた塔が、夜は黒い空をバックにして、まるで自ら発光しているかのように立ち上がる。

屋上テラスには電球を連ねたイルミネーションが渡され、あたたかいオレンジの光がテーブルを照らす。この、暖色の灯りと、ライトアップされた巨大な塔のコントラストがたまらない。

席に座って塔を見上げると、首が痛くなるくらいの角度で、57メートルの塔が夜空へ伸びていく。手すり越しには、パフラヴァン・マフムード廟の緑のドームも見える。金色の頂を乗せたあのドームが、ライトを浴びて夜の旧市街に静かに浮かんでいる。塔とドーム、ヒヴァを代表する二つのシルエットを、夜の闇の中で同時に眺められる。この構図は、昼間とはまったく別物の贅沢さだ。

罪悪感を胸に、ビール

ここで、ウズベキスタン旅の密かな楽しみを白状しておきたい。ビールである。

ムスリムが多数を占めるウズベキスタンだが、アルコールは合法だ。街には酒屋もあるし、酒を出すレストランも多い。敬虔な人は飲まないので、飲む人と飲まない人がはっきり分かれてはいるものの、旅行者が一杯やるのに困ることはまずない。そして個人的には、暑い土地を一日歩き回ったあとのキンキンに冷えたビールほど、旅の疲れを溶かしてくれるものはないと思っている。

この店の屋上で、ライトアップされたイスラーム・ホジャ・ミナレットを見上げながら、グラスを傾ける。細長いグラスになみなみと注がれた黄金色のビールに、テラスの電球の光がきらきらと反射する。塔を背景にグラスを掲げれば、それだけで旅の記念写真が一枚完成してしまう。乾杯の相手は、目の前にそびえる57メートルの塔だ。

名物、緑のシヴィト・オシュ

ビールのお供に頼んだのが、この地方の名物「シヴィト・オシュ(Shivit oshi)」。写真を見てもらうと分かるが、鮮やかすぎるほどの緑色をした麺料理だ。

初めて見ると、正直ぎょっとする。抹茶でもここまで緑ではないだろう、というくらいの深い緑。これはディル(イノンド、シヴィト)というハーブを練り込んで打った麺で、ホラズム地方——つまりヒヴァ周辺だけで食べられる郷土料理だ。ウズベキスタンの他の街ではまずお目にかかれない。

麺の上には、じゃがいもやニンジン、肉をトマトベースで煮込んだシチュー状のソース(カイナトマ)がどっさりとかかり、皿の縁にはヨーグルトやサワークリームが添えられている。食べ方としては、この麺とソース、そしてクリームをよく絡めていただく。ディルの爽やかな香りが練り込まれた麺は、見た目のインパクトに反して味は意外とやさしい。もちもちとした食感に、トマト煮込みの酸味とコク、そしてクリームのまろやかさが重なって、するすると食べ進められる。ディルの風味が好きな人にはたまらない一皿だと思う。

こういう「その土地でしか食べられないもの」に出会えると、旅をしている実感が一気に増す。プロフはウズベキスタンのどこでも食べられるが、シヴィト・オシュはここホラズムの味だ。ヒヴァに来たなら、ぜひ一度は試してほしい。

訪れるときのコツ

いくつか、実際に行って気づいたことを。

まず、狙うのは日没後。ライトアップが灯ってからが、この店の本番だ。できれば日が沈む少し前に席に着いて、空が藍色から黒へと変わり、塔にライトが灯る瞬間を見届けるのがいい。マジックアワーから夜への移り変わりを、塔を眺めながら過ごせる。

次に、席は当然、屋上テラスの塔が見える側を。塔とドームが両方視界に入る位置がベストだ。夜は冷え込むこともあるので、羽織るものが一枚あると安心して長居できる。

そして、料理はシヴィト・オシュのような郷土色の強いものを頼むのがおすすめ。せっかくホラズムまで来たのだから、ここでしか食べられない緑の麺を、この眺めと一緒に味わってほしい。ビール一杯だけでも、粘って夜景を楽しむ価値は十分にある。

まとめ――見下ろすヒヴァ、見上げるヒヴァ

ノウルーズという特別な日に、部外者の私を暖かく迎えてくれたSultanのファミリーたちには感謝しきれない。

①のTerrassaで街を見下ろし、②のCaravanで塔を見上げる。この二軒を昼と夜で巡れば、ヒヴァという街を上からも、真下からも、まるごと味わい尽くせる。同じイチャン・カラが、視点と時間帯を変えるだけで、これほど違う表情を見せてくれる。それがヒヴァのおもしろさだと思う。

ヒヴァの夜、まだ宿に戻るには早いなと思ったら、ぜひこの屋上に上がってみてほしい。ライトアップされた57メートルの塔に向かって、静かに乾杯を。それはきっと、ヒヴァ滞在のいちばん贅沢な締めくくりになるはずだ。

店情報メモ
  • 店名:Caravan(キャラバン)
  • 場所:イチャン・カラ内、イスラーム・ホジャ・ミナレットのほぼ真下
  • 特徴:屋上テラスから塔とパフラヴァン・マフムード廟の緑ドームを一望。夜のライトアップが白眉
  • おすすめ:日没後の時間帯・塔が見える屋上席・名物シヴィト・オシュ(緑のディル麺)とビール

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