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【ディープ台湾紀行】台北の作業服オヤジが屋台で飲んでいた、真っ赤な謎酒を追いかけて【台湾グルメ・謎酒】

とある夏の台北

私は二泊三日の仲間との弾丸グルメ旅行に出かけていた。丁度その日は大稻埕慈聖宮のそびえ立つガジュマルの木の陰で、少し遅い朝食として魯肉飯を堪能していた。大稻埕慈聖宮の廟の前で、フレッシュな木漏れ日を浴びながら頂く魯肉飯は格別で、屋台の並ぶローカルな雰囲気も相まって、旅行欲を満たすにはもってこいのロケーションである。そんなことを考えながら仲間との談笑に耽っていると、すぐ近くのテーブルで、ブルーカラーの現地オヤジ達が何やら妙なお酒を盛り合っている光景が目に留まった。

謎酒の瓶

ラベルのない酒瓶から注がれる謎めいた赤い液体。朝の光を受け、作業着に身を包んだオヤジたちが何やら世間話に花を咲かせながら、その赤いお酒をちびちびと嗜んでいる。これまで台湾を幾度となく訪れてきたが、この妙なお酒には初めて遭遇した。未知のお酒との出会いが胸を躍らせる。これまで、エチオピアウガンダ等世界の未知なる「謎酒」を追ってきた自称謎酒ハンターである私は、咄嗟にそのお酒の正体を知りたいという衝動にかられた。好奇心に背中を押されオヤジ達に近づき、身振り手振りでその謎めいた酒の名前を尋ねようとした。しかし、オヤジ達は私を疑念の目で見つめ、露骨な拒否反応を見せた。きっと私を不審者か何かだと疑ってしまったのだろうか。それはそうだ、急に知らない外国人にお酒の名前を尋ねられるなんて、不審以外の何事でもないだろう。結果的に彼らの朝の楽しみを妨げてしまったことを悔いつつも、私はどうしても諦めきれず、台北中を巡りその赤い謎酒の正体を探る旅に出かけることを決意した。

早速、台北市内の商店を周り、謎酒を捜索した

コンビニエンスストアやスーパーマーケット、地元のローカル商店などを巡り、赤い謎酒を探した。しかし探せど探せど、残念ながら例の酒に出会うことは無かった。そもそも、仮に何らかの赤い酒に出会ったところで、オヤジたちが飲んでいたお酒と同一のものである、という答え合わせをする術はない。手がかりを掴めぬまま、二泊三日の弾丸旅は敢無くタイムアップとなり、一時帰国をせざるを得なくなってしまった。

日本に帰国するや否や、次なる一手を模索した

現地の台湾人の知人に対してコンタクトを取ったり、SNS上での台湾人コミュニティに対し、写真とともに「赤い謎酒の情報を求む」とポストをしたりして、しばし反応を待った。遠くから撮影した不鮮明な写真ではあるものの、ローカル民ならば何らかの手掛かりを与えてくれるだろう、と確信したためだ。ところが、知人からは「全く見当がつかない」との答えが返ってきた。というのも、若者世代とオヤジ世代ではお酒の嗜好が異なるため、60代~70代のオヤジが路上で好んで飲むようなお酒については全く知識がない、とのことでる。一方で、SNS上での台湾人コミュニティにも続々と反応が集まってきたが、同様に見当がつかないとのコメントか、或いは「ワインと焼酎を混ぜたものではないか」「ワインを水で薄めたものではないか」と言った内容だった。焼酎のワイン割り、或いはワインの水割り・・・確かに、オヤジ達が自ら瓶にワインを詰め、焼酎や水などと混合して持参した、という考えもあながち有り得なくはないだろう。とは言え、未知の酒ではなくただのオリジナルワインカクテルだとすると、少し期待外れである。それに、オヤジ達が作業着を着たまま路上で、ワインなんて小洒落たものを飲むだろうか。何となく納得がいかない。もう少し、別の可能性を探ることにした。

暫く経って、一つ目を引くコメントが入った

今回SNS上にポストした「台北の作業着オヤジ達が飲んでいる赤い謎酒の正体は何か」というトピックは一種の注目を浴び、結果的に数十人の現地台湾人を巻き込み、さながら討論会かのように盛り上がっていた。そんな中、とある現地台湾人より「台北のオヤジ世代が好んで飲む赤いお酒を知っているよ」というコメントが入ったことで、流れが一変する。彼女いわく、台湾現地の薬局で売られている「維士比(ウィスビー)」という酒である可能性が低いのではないか、とのことである。

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維士比/Whisbihは、台湾で人気の薬用酒です。1974年に三洋薬品工業によって発売されました。アルコール度数は6%、赤みがかった色をしています。

維士比は、主に漢方薬麦芽エキスを原料としています。漢方薬には、疲労回復や滋養強壮に効果があるとされる成分が含まれています。そのため、台湾では、肉体労働者や運転手などの間で、疲労回復や体力補給のために飲まれることが多いです。

維士比は、そのまま飲むだけでなく、さまざまな飲み物と組み合わせて飲まれることもあります。よく飲まれる組み合わせとしては、椰子汁、果汁、ビール、米酒、高粱酒、コーヒー、烏龍茶、緑茶などがあります。これらの組み合わせは、台湾では「工地雞尾酒」(コンティーカクテル)と呼ばれ、台湾の労働現場では定番の飲み物となっています。

維士比のCMには、よく香港の俳優、周潤發(チョウ・ユンファ)が出演しています。周潤發は、1987年から2000年代にかけて、維士比のCMに出演し続け、維士比の知名度を高めました。

これに違いない。赤色のお酒であるということ、肉体労働者に人気のお酒だということ。あらゆる特徴が、まさに私が見た赤い謎酒に合致している。それにしても、滋養強壮用の薬用酒とは盲点だった。日本で言うところの養命酒のようなポジションだろうか。どうりで若者世代に聞いても皆目見当がつかないわけである。

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すぐさま私は荷物をまとめ、真相を確かめるべく再び台湾行きのチケットを抑えた。謎酒ハンターとして、維士比の味を直接味わわずには居られない。ちなみに余談だが、維士比の競合商品として、保力達Bというお酒もあり、こちらも維士比と同じく漢方薬麦芽エキスを原料とする薬用酒である。アルコール度数は5%、色は茶色で、台湾北部で人気の維士比に対し、南部でのシェアが大きいとのこと。

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再び渡台し、遂にドラッグストアで維士比を入手した

台北のドラッグストアで「維士比」を入手

生憎手軽なサイズのものがなく、600mlの大きな瓶のものしか手に入らなかったが、遂に現地のドラッグストアで維士比にお目にかかることができた。薬用酒ということもあってか、日本で言うところの「第二類医薬品」のような位置づけに当たるらしく、医療従事者の勤めるドラッグストアでないと市場では入手困難らしい。どうりで一般の商店やスーパーマーケットには置いていないわけである。

成分を見てみると中々パワフルそうな内容

念願の赤い謎酒。作業服オヤジ達の真似をし、公園でおもむろに路上飲みを敢行しよう。生憎コップを持ち合わせていないので、男のラッパ飲みだ。

良い感じの木陰を探し、路上で謎酒を喰らう

むむ!!何だこの味は!!予想の上を行くエキゾチックさである。薬用酒と聞いてある程度のスパイシーな風味を覚悟していたものの、あまりにも強すぎる漢方の香りが酒の甘みと化学反応を起こし、えも言えぬ絶妙な味わいを生み出していた。入り口には甘い糖漿と木の皮の微妙な苦味を感じつつ、次第に口の中で、少量のビタミンBの独特の味(少しリポビタンDのような)を覚える。謎酒ハンター的には、未知の味との遭遇にこの上ない喜びに浸ることができたものの、これは決して一般ウケするものではないだろう。或いは、ソーダやコーラ等で割れば、この強烈な風味も薄まり程よい味に落ち着くのかもしれない。それにしても、滋養強壮効果が期待できそうなパワフルな味である。

しかしここでふと疑問に思う

あの朝作業服オヤジ達は、こんな強烈なお酒を飄々と飲んでいたのだろうか。お酒の名前を尋ねようと彼らに接近したとき、こんなパワフルな香りは微塵も感じなかった。ひょっとすると、彼らが飲んでいたのは維士比でも無いのではないか。

維士比を手にすることで、ようやく真実にたどり着けると思っていた謎酒探求の旅。しかし、維士比を実際に味わったことで、あの日見た謎酒が、維士比と異なるものであるということを直感的に理解する形となった。ここに来て、手がかりを全て失い、振出しに戻ってしまった。維士比の大瓶を片手に、私はしばし呆然と立ち尽くすのみであった。

その晩は廣州街観光夜市で一人反省会をした

謎酒を捜索するための手がかりを失い出発地点に立ってしまったことを受け、これからの作戦を練るべく屋台飯を食べながら一人反省会をすることにした。そんな中、奇跡的な出会いを果たすことになる。

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なんと、たまたま通りかかった屋台に、赤いお酒の入ったボトルが陳列されていたのである。しかも、ボトルの形やラベルがあの日作業服オヤジ達が持っていたものに完全一致している。謎酒の正体はこれに違いない!

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すぐさま一瓶購入し、コップに注いでみた。この赤い色は見覚えがある。間違いなくあの謎酒だ。反省会が一転し、謎酒を祝杯として頂く華やかな晩酌となった。無名の屋台店からゲットした魯肉飯も、達成感がスパイスとなり心なしか格別の味わいに感じた。

ちなみに製造会社の三洋維士比集團は維士比以外にも多くのドリンクを販売している。いきなり維士比に挑戦するのが不安な方は、エナジードリンクタイプのものやソフトドリンクタイプのものからトライしてみて頂きたい。

いよいよ暴かれた、赤い謎酒の正体は

さて、屋台で遂にであった赤い謎酒であるが、その正体は「紅標米酒」という米酒であることがわかった。紅標米酒は、台湾で最も有名な米酒の銘柄の一つとして知られ、台湾菸酒公司によって1953年に発売された。アルコール度数は19.5度で、色は透明色と赤色とがある(それぞれ「紅標」、「白標」という愛称で呼ぶこともある)。主に米を原料とし、米麹と酵母を使って発酵させた後、蒸留して製造される。少し日本酒にも味が近く、米の風味と香りが豊かで、飲み口はまろやかなのが特徴的だ。

調味料コーナーに参列される紅標米酒

紅標米酒はそのまま飲むだけでなく、ビールと混ぜて飲むのも人気である。また、飲料として消費するだけでなく、台湾料理の調味料としてもよく使われ、特に肉や魚の臭みを消したり、コクを加えたりするのに効果的とされる。実際にその後改めてスーパーマーケットで捜索をしたところ、お酒コーナーではなく調味料コーナーで無事発見することができた。

日本でも購入可能な白標

ちなみに透明色の紅標米酒、通称「白標」は、現在は日本でも輸入品として販売されている。通販サイトなどで購入が可能だ。謎酒ハンターは、是非一口トライしてみて頂きたい。

赤色のほうの「赤標」は、まだ日本国内に進出していないので、強い興味を持った方は是非台湾で賞味いただきたい。日本酒より強いが、甘みが特徴的かつキャッチ―で、程よいエキゾチックさが貴方の謎酒欲を満たしてくれること、間違いない。

世界の謎酒は面白い

さて、今回は台湾の赤い謎酒「紅標米酒」と、ついでに「維士比」というアクの強い謎酒について紹介してきた。海外で出会う謎酒は、日本では味わえないような風味、のど越し、テクスチャーに満ちた、驚きとロマンとスリルが溢れるドリンクばかりである。本ブログでは、これまでにも世界の謎酒を紹介しているので、世界の変わったグルメが好きな方は、ぜひブックマークしてみていただきたい。今度とも、皆様と謎酒の魅力をシェアしていけるよう、謎酒ハンターとしての活動をより一層邁進していく所存だ。

www.kosupatravel.com

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