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お酒っぽい?謎に包まれたモルディブのご当地ドリンク「Ruku Raa(ルクラー)」を飲んでみた《前編》

モルディブの田舎で入手した「お酒っぽい」飲みもの

厳格なイスラム国家であるモルディブでは、リゾート島を除きほぼ全域でアルコール飲料の消費が禁止されているのは有名な話だろう。そのため、モルディブではリゾートやフローティングバー(船上バー)以外の場所でお酒を入手することがほぼ不可能であると言って良い。だが、実はそんなモルディブでも、「お酒っぽい」ドリンクであれば、リゾート以外でも入手することができる、ということをご存知だろうか。

より正確に言うならば、その「お酒っぽい」ドリンクはむしろリゾートでは入手困難であり、今やごく一部のローカル島でのみお目に掛かれる希少な伝統ドリンクである。元来謎酒ハンターとして暗躍する我々も、そんな謎ドリンクにすっかり興味が引き付けられてしまった。本記事では、実際に我々がモルディブのローカルアイランドで「お酒っぽい」ドリンクに出会い、実際に味わう中で得た・学んだ文化的気づきをシェアしていく。

繰り返し断っておくが、本記事で紹介するのはあくまで「お酒っぽい」伝統飲料である。しかし(詳細は後述するが)扱いを間違えれば「お酒」になってしまいかねない、ある種危険なドリンクでもある。一定のアルコールを含んだ「お酒」の消費・持ち込みはモルディブ居住エリアにおいては固く禁止されている。私自身、モルディブ国内での違法な飲酒にはあくまで断固反対をさせて頂く所存である。本記事の中はその姿勢を明確にした上で、絶滅しつつある現地伝統文化をシェアするとともに、伝統飲料の正しい扱い方について解きたいと思う。

モルディブの伝統ドリンク「Ruku Raa」

今回現地で出会ったのは「Ruku Raa(ルクラー)」というモルディブの伝統飲料。敢えてわかりやすく言うならば、ココナッツウォーターでも呼ぶべきか。だが、ココナッツウォーターと聞いて日本人がイメージする飲料とは、原料も製法も、そして風味も大きく異なる。

10ルフィア札に描かれる伝統職業Raa Veriyaa(ラー・ヴェリヤー)

Ruku RaaはRaa Veriyaa(ラー・ヴェリヤー)と呼ばれる専門の職人によってつくられる。彼らはヤシの木に登り、木のてっぺん近くでRuku Raaの原料を採取する。高所作業であるのに加え、高度な技術が要されることから、年々技術者の数は減少しており、いまや絶滅危惧種の伝統産業とも言われている。

ちなみに、ヤシの木自体はローカルアイランドで多く自生しているし、ヤシの木の周りにはヤシの実がゴロゴロと落ちている。それなのに、なぜわざわざ木に登って原料を採取する必要があるのだろうか。

モルディブでよく見るココヤシは、ハワイやポリネシア地域のものとは異なり、オレンジ色がかったカカオのような見た目をしている

こちらは別種類のヤシの木から。モルディブ国内には複数種のヤシの木が自生している。

Ruku Raaの正体はココヤシの樹液

実は、Ruku Raaの正体はココナツの実ではなく、ココヤシの茎の部分から採れる樹液。だからこそ、木の先端付近まで登って樹液を採取する必要があるし、そして味も一般的なココナッツウォーターと大きく異なるわけである。

 
 
 
 
 
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樹液採取の際には、ココナツの実で作った容器をヤシの木の茎の根元に取り付け、ナタを使って花の根元を傷つける。そこから滴る樹液を、容器で集めることによってRuku Raaが得られるわけである。毛皮よりも固いと評されるヤシの肌を、足元不安定な高所で削って樹液を集めるのは至難の業であり、なるほど後継者不足にも悩むわけである。

ちなみに、海外記事によってはヤシの「花」として紹介しているケースもあるが、筆者的にはあまりピンと来なかったので「茎」として紹介させていただいている(植物学的に不正確かもしれず、申し訳ない)。要するに、ヤシの葉っぱが伸びている根元、ココナッツが生っているあたりの箇所だとざっくりとらえて頂けると幸いだ。

ちなみにこうして得られた樹液、そしてそれを加工して作られたお酒などのことを、英語圏では「Toddy」と呼ぶ。Ruku Raaは現地ディベヒ語での言葉なので、外国人スタッフに説明するときは「Toddy」「Toddy Water」等という言葉を使う方が良いだろう。

ローカルアイランドにて、Ruku Raaを入手

1.5Lペットボトルになみなみと注がれたRuku Raa

そしてこの度の取材で、ついにRuku Raaに対面した。実は前回モルディブ訪問時にもRuku Raaに対する関心は既に高まっていたものの、事前注文が必要だったらしく入手には至らなかった。人手不足の伝統産業であるがゆえ、仕方のないことであろう。今回はその反省を生かし、滞在先ゲストハウスに協力いただき数週間前に注文を入れていたため、念願のRuku Raaを難なく入手することができた。

ちなみにこのペットボトルは、モルディブ国内で一般的にみられる飲料水のボトルである。Ruku Raaはとにかく新鮮さが売りで、採ったその日から味がどんどん変化していくので、パッケージ化してスーパーなどで販売することが困難なのである。今回提供いただいたRuku Raaも、この日採れたての新鮮なRuku Raaであり、一番フレッシュな状態で頂くことが叶った。

いかがでしたでしょうか?

今回は、謎に包まれたモルディブのご当地ドリンク「Ruku Raa(ルクラー)」について紹介をしてきました。次回は実際に飲んでみた感想、そして数日寝かせた結果の驚きの変化について詳細を執筆して参ります。

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