前回記事では、サントリーニでのバギー(ATV/クアッド)がいかに怖かったか、そして「移動は大変でもバスがおすすめ」という結論を、実体験をもとに正直に書いた。
そのうえで、この後編は「前編を読んでもなお、自分は借りる」と決めた人に向けた実務ガイドだ。散々脅しておいてなんだが、借りると決めたなら、少しでも安全に、そして無駄なく手続きを済ませてほしい。
借りる前に知っておくべき前提知識
いちばん大事な大前提:初バギーでサントリーニは絶対に無理

しつこくて申し訳ないが、具体的な話に入る前に、どうしても最初に言っておきたいことがある。バギーに一度も乗ったことがない人が、サントリーニでデビューするのは絶対に現実的でない。これは断言する。
前編で書いた通り、自分はまだ以前にチュニジアの砂漠でATVに乗った経験があったから、なんとか対応できた。それでもあの怖さだ。もし今回が完全な初バギーだったら、間違いなくどこかで事故っていたと思う。
勘違いしてほしくないのは、普通自動車やバイクの運転にどれだけ慣れていても、この話は別問題だということ。車の運転歴が長かろうと、海外レンタカーの経験が豊富だろうと、バギーの操作感はまったくの別物だ。ハンドルの挙動も、車体の不安定さも、車の常識が通用しない。「運転には自信があるから大丈夫」——その油断がいちばん危ない。サントリーニの混雑した坂道と幹線道路は、バギー初心者が操作を覚えながら走れるような優しい環境では、断じてない。
もしバギー自体が初めてなら、サントリーニ以外の、もっと安全な場所(広い私有地やツアーのオフロードコースなど)で経験を積んでからにするか、この島ではきっぱり諦めてほしい。これが体験者としての一番の忠告だ。
免許は「普通自動車免許+国外運転免許証(IDP)」でOK
借りるにあたっての免許要件は、日本人の場合、普通自動車免許と国外運転免許証(IDP:International Driving Permit)の組み合わせで対応できた。バイクの免許は必須ではなく、車の免許で借りられるのはハードルが低くて助かる点だ。
予約時にはドライバーの年齢と、免許の発行国(国籍)を申告するよう求められた。業者が保険や適法性を確認するための必須事項なので、正確に伝える。IDPは日本国内の運転免許センターなどで出発前に取得しておく必要があるので、忘れずに準備しておくこと。現地では取得できない。
料金の相場感——ハイシーズンはレンタカーと大差ない

気になる料金だが、結論から言うとハイシーズンはそれなりに高く、おおむね普通のレンタカーと同程度になる。「バギーは安いから」という理由で選ぶと、思ったほどの価格メリットはないかもしれない。
今回は2日間のレンタルで総額112ユーロだった。内訳は、車両本体(ATVクアッド)が2日で88ユーロ、これに任意保険を2種類——追加CDW(車両損害補償、1日6ユーロ)とフルカバー追加料金(同6ユーロ)で計24ユーロ——を付けた金額だ。
これを高いと見るか安いと見るかは、比較対象次第だ。同じ日数でコンパクトなレンタカーを借りても、ハイシーズンなら似たような金額になることが多い。「小回りが利く」というバギーの利点と、「屋根があって安全・快適」というレンタカーの利点、そのどちらを取るかという一長一短であって、価格で明確に優劣がつくわけではない。ここは冷静に天秤にかけたほうがいい。
なお、保険はケチらないことを強くおすすめする。この乗り物は本当に事故リスクが高い。数十ユーロの差で補償が手厚くなるなら、迷わず手厚いほうを選ぶべきだ。安心料として考えれば安い。
車両サイズは「大きめ」を選ぶべき
車種選びで意外と重要なのがエンジンの排気量・車格だ。結論として、ある程度大型(300Cc以上)のものを選んだほうがいい。

理由はシンプルで、サントリーニは坂道が多いから。小さくて非力な車両だと、馬力が足りず坂道を登りきれない、というケースがある。安さにつられて小型を選ぶと、肝心なところでパワー不足に泣くことになりかねない。今回借りたCFMOTOの「CForce 450」は4×4のそこそこ大きいクラスで、坂道でパワーに困る場面はなかった。
ちなみにこのクラスは2人乗りが可能だった。同行者を後ろに乗せられるが、当然ながら2人ぶんの重量がかかるぶん挙動はよりシビアになる。ヘルメットは運転者・同乗者ともに着用必須だ。
走行にはルールがある
見落としがちだが、バギーには走行条件(ルール)がある。今回いちばん明確だったのが、オフロード走行の禁止だ。ビーチや未舗装の荒れ地に乗り入れて遊ぶ、といった使い方は禁じられている。

さらに業者からは、詳細な地図を渡された。「この道は走ってOK」「この道はダメ」といった、走行可能ルートが具体的に示されたものだ。サントリーニには狭すぎる道や、バギーの通行が想定されていない区間もあるため、こうした指定は必ず守る。ルールを破って事故れば保険が下りない。渡された地図やルール説明には、受け取り時にしっかり目を通しておくこと。
ガソリンは「空港近くで満タン」が鉄則
地味だが超重要なのが給油の計画だ。サントリーニはガソリンスタンドがかなり少ない。とくにイア(Oia)方面には全然ないので、島の北側を目指すなら要注意だ。
鉄則は、空港近く(=島の中心部寄り)で給油を済ませておくこと。うっかり燃料残量を気にせず北へ向かうと、スタンドが見つからずヒヤヒヤすることになる。出発前と、遠出の前には必ず残量を確認し、早め早めの給油を心がけたい。返却時の燃料条件(満タン返しかどうか)も、受け取り時に確認しておこう。
予約から返却までの当日の実務
予約から受け取りまでの流れ
今回はオンラインで事前予約した。サイトから車種・レンタル日数・受け取り/返却場所を指定して申し込む形で、日本にいるうちに手配を済ませられる。ハイシーズンは車両が埋まりやすいので、乗ると決めているなら早めに押さえておくのが無難だ。

受け取りは空港でお願いした。到着ゲートを出たところにあるカフェの前で、名前を書いたボードを持ったスタッフが待っていてくれて、そのまま近くの駐車場で車両を受け取る、という流れ。深夜・早朝の時間帯でも柔軟に対応してくれたのはありがたかった。フライトが遅延しそうな場合は、早めに業者へ連絡を入れておくとスムーズだ。今回も「遅れそうなら随時連絡します」と伝えておいたら、快く応じてくれた。
受け取り時のレクチャーは、前編でも触れた通りかなりあっさりしている。基本操作と、前段で書いた走行ルール(禁止区間の地図など)を一通り確認したら、あとは公道へ、という感じだ。不安な操作があればこの場で遠慮なく質問しておくべきだ。走り出してからでは遅い。

支払い方法——前払い+現地払いの2段階
支払いは前払いの予約金と、現地での残額払いの2段階だった。今回は予約確定のために先に52ユーロを送金し、残りの60ユーロを現地で支払う形。
前払いぶんはWiseを用いた海外送金(銀行振込)で対応した。海外送金は着金までにタイムラグがあるので、余裕をもって手続きしておきたい。
現地での残額は、カードでも現金でもOKだった。このあたりは業者次第なので、ユーロの現金を用意しておくと安心だろう。
ヘルメット——被るのは義務、でも過信は禁物
ヘルメットは必ず着用する。既に触れた通り運転者・同乗者ともに必須で、これは安全のためだけでなく、ギリシャではヘルメット未着用が取り締まり・罰金の対象になるからだ。サントリーニは警察の取り締まりが厳しいので、「面倒だから」で被らないのは論外だ。
荷物——リアボックスの容量を過信しない
意外と悩ましいのが荷物の積載だ。今回は35Lのバックパックが2つという荷物量だったが、これが結果的にリアボックスぎりぎりのサイズ感だった。

はみ出したぶんは、ボックスの蓋の上にストラップ(ゴム製のネット/コード)で縛りつけて固定した。今回は業者がストラップを用意してくれたので事なきを得たが、これがないと大きい荷物はそもそも積みようがない。予約時に「荷物がどれくらいあるか」「固定具を貸してもらえるか」を確認しておくと、当日慌てずに済む。
そして、固定は念入りにやること。走行中の振動は想像以上で、固定が甘いと荷物が飛ぶ。後ろで荷物がガタつくと、それだけで注意力が削られ、運転の余裕が失われるだろう。
なお、小さめのバックパックなら背負ったまま乗れなくもないが、背中に荷重があると運転の不安定さが増すので、できるだけボックスに預けたほうが安全だった。大きなスーツケースの場合は、そもそもバギーでの運搬は現実的でないと考え、宿や空港で預ける代替策も検討したほうがいい。
まとめ
実務情報を並べてきたが、前編の結論は変わらない。基本的にはバスなどの別手段をおすすめする。
それでもバギーを選ぶなら、最低限今回述べた点だけはしっかり押さえておいてほしい。
自由と引き換えに背負うリスクの大きさを理解したうえでの選択なら、止めはしない。サントリーニの絶景は、無事に帰れてこそ楽しめる。良い旅を。
今回利用したレンタカー屋:
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