中国のオンラインサービスを利用する際、必ずと言っていいほど直面するのが「中国の携帯番号による認証」という壁です。今回は、WeChat内のミニプログラムを使って+86から始まる中国の電話番号を取得できる「易博通(eSender)」について解説します。
易博通(eSender)とは?
易博通は海外在住者でも中国国内の電話番号を取得できるサービスです。従来は専用のウェブサイトやアプリが必要でしたが、現在はWeChatのミニプログラムとして提供されており、利用がより簡単になりました。
なおeSenderで取得した番号はSMS認証のみ利用可能です。音声通話はもちろん、中国のアプリによくある「電話での音声認証」には対応していません。例えば、百度Webmasterなど、音声通話による認証を要求するサービスでは利用できないので注意が必要です。
それでも、このサービスを利用することで、物理的に中国にいなくても中国の携帯電話番号を取得し、SMS認証を受け取ることが可能になるというのは大きなメリット。ただし、あくまで非公式な手法であり、サービスの継続性や安定性は保証されないことに注意が必要です。
なぜ中国の電話番号が必要なのか?
中国では実名登録制が徹底されており、ほとんどのオンラインサービスで中国の電話番号による認証が必須となっています。これは単なる本人確認の手段ではなく、法的な要件として定められているケースが多く、外国の電話番号では代替できません。
具体的には、地図アプリ、配車アプリ、宿泊予約サイト、各種政府サービス、そしてドローン登録システムなど、中国で生活や旅行をする上で欠かせないサービスの多くで中国の電話番号が要求されます。
WeChatミニプログラム版の利用手順
ステップ1:ミニプログラムへのアクセス
まず、WeChatアプリ内で「易博通eSender」のミニプログラムを見つける必要があります。
WeChatの検索機能で「eSender」「易博通」などと検索してもミニプログラムを探しましょう。
ステップ2:番号タイプの選択
eSenderでは複数の地域の番号を選択できます。中国本土での利用が目的の場合は「Mainland China Number」を選択します。
新規利用の場合は「A brand new Number Registration」(全く新しい番号の登録)を選択します。
ステップ3:個人情報の入力
実名登録のフォームでは、性別、顧客名、連絡先電話番号、書類の種類、書類番号などの基本情報の入力が必要です。
書類については、「Mainland Travel Permit for HK & Macau Residents」が通常選択されますが、外国人の場合パスポート情報での登録も可能です。Document No.の欄には、指定されたフォーマットに従って番号を入力する必要があります。例えばH123456789の場合はH12345678のように入力します。
ステップ4:番号の選択と料金
情報入力が完了すると、利用可能な電話番号の一覧が表示されます。番号は地域コードと期間が併記されており、例えば「861712XXXXXXX(HKD98, for 180 days)」のような形式で表示されます。98香港ドルということは、半年間の利用で約2000円ということになりますね。
希望の番号を選択し、次に進みます。
ステップ5:支払い手続き
支払い方法としてWeChat Pay(微信支付)、Alipay(支付宝)、Alipay HK、UnionPay(银联在线支付)、PayPalなど多様なオプションが提供されています。
Alipayを選択する場合は特別な注意が必要です。WeChatのミニプログラム内から直接Alipayの決済画面に遷移できないため、指定されたURLを長押ししてブラウザにコピーして支払いを完了する必要があります。WeChat決済にカードを既に登録している方であれば、WeChatを選択するのが無難でしょう。
ステップ6:利用規約への同意
支払い前に、Multibyte Info Technology Limited(運営会社)の利用規約と個人情報の取り扱いに関する同意が必要です。ダイレクトマーケティングサービスでの個人データ使用に同意するか、香港でのサービス提供に限定した個人データ使用に同意するか、または個人データの宣伝目的での使用に不同意とするか、適切な選択肢を選んでください。
ステップ7:実名認証の完了
支払い完了後、一旦先ほどの電話番号が付与されて手続きが完了となりますが、ここから追加で実名認証(Real Name Registration | 实名认证)の手続きが必要になります。この段階でパスポートなどの身分証明書のアップロードを求められます。
認証が完了すると、「You have successfully passed the real name authentication」というメッセージが表示され、サービスの利用が開始されます。認証は通常数時間以内に完了しますが、場合によっては1-2営業日かかることがあります。
料金プランと継続利用
eSenderの料金体系は180日間(約6ヶ月)でHKD98(約1,900円)となっています。これは年間プランではなく、半年間のプランであることに注意が必要です。
継続利用や料金支払いの手続きは、ミニプログラム内で完了できます。多様な支払い方法に対応しており、WeChat Pay、Alipay、PayPalなどが利用可能です。
支払い完了後は、サービス状況画面で番号タイプ(Mainland China)、取得したeSender番号(+86から始まる中国の電話番号)、残高、サービス状況(Active)、開通日時、有効期限などの情報を確認できます。
ちなみに半年の期限が近づくと、WeChatメッセージ上で、プランの継続希望を問う通知が届きます。継続して同じ番号を使用したい場合は、次の半年分も課金を行う必要があります。
SMS受信の仕組み
eSenderで取得した番号宛にSMSが送信されると、WeChat内のミニプログラムに通知が届きます。SMSの内容はミニプログラム内で確認でき、認証コードなどの重要な情報をリアルタイムで受け取ることができます。
通知の受信には多少のタイムラグがある場合があるため、SMS認証を行った後は数分待ってからミニプログラムを確認することをお勧めします。
トラブルシューティング
SMSが届かない場合:
まず、利用したいサービス側で正しい電話番号を入力しているか確認してください。次に、eSenderのミニプログラムを更新して、SMS受信状況を確認してください。
実名認証でつまずいた場合:
パスポートのアップロードで問題が発生した場合は、必ずカスタマーサービスに連絡してください。多くの場合、技術的な問題であり、サポートスタッフが代替手段を提供してくれます。
そのほかの良くあるエラー:
海外からアクセスする場合エラーが発生するケースがあるそうです。その場合、VPNや位置情報アプリの設定を変更するなどして、エラーを突破する必要があります。
まとめ
WeChat内のミニプログラム版eSenderは、海外在住者が中国の電話番号を取得する裏ワザ的な方法の一つです。初期設定には多少の工夫が必要ですが、一度設定してしまえば様々な中国サービス(SMS認証対応のもの)を利用できるようになります。
特に中国への旅行や出張を予定している方、中国のオンラインサービスを利用したい方にとっては有用な情報となり得ますが、上記のリスクを十分理解した上で慎重に判断してください。
免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、必ずしも利用を推奨するものではありません。eSenderのようなサービスは裏ワザ的手法であり、利用目的によっては、現地法律や各種サービスの利用規約に抵触する可能性があります。利用は完全に自己責任でお願いします。
サービス内容、料金、利用方法は予告なく変更・停止される可能性があります。また、アカウント停止や法的リスクなど、予期しない問題が発生する可能性もあります。これらのリスクを十分理解した上で、慎重に判断してください。
本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。利用前には最新の情報と関連法規を必ずご確認ください。