中東に行けないのは、もう知っています。ヨーロッパ行きが遠回りになったのも、知っています。でも今、この危機はそこから先へ進み始めている、ということは知らない方もまだまだ多いのではないでしょうか。
中東から遠く離れたニュージーランドで1,100便が欠航し、ベトナムでは4月以降の燃料確保すら見通せない——「中東の話」は静かに、「海外旅行そのものの話」に変わりつつあります。
航空燃料が年初比で約3倍に
すべての起点は、燃料価格の急騰です。
ホルムズ海峡危機を発端に、航空燃料の国際指標であるシンガポール市場の価格は、年初の80〜90ドル台から3月初旬には一時230ドルを超える水準まで急騰しました。現在も160〜170ドル前後で高止まりしており、平時と比べて約3倍の水準です。
航空会社にとって燃料費は通常、運航コスト全体の30〜40%を占める最大の固定費です。それが3倍になったということは、コスト構造が根本から変わったことを意味します。ベトナム民間航空局の試算では運営コスト全体が60〜70%増まで押し上げられているとされており、赤字路線が急増しているのは想像に難くありません。
ベトナム:4月以降の燃料確保が見通せない
ベトナムは国内で消費する航空燃料の約70%を輸入に頼っており、その多くをタイや中国など近隣諸国から調達しています。3月末までの分はなんとか確保しているものの、4月以降の調達については見通しが立っていません。供給国側が自国の需要を優先して輸出制限を強化する動きを見せており、不可抗力条項が適用されるリスクも高まっています。
ベトナム航空局は政府に対し、燃料税の減税や航空運賃上限設定の柔軟化といった緊急支援を求めています。4月以降、ベトナム系航空会社による路線の見直しや大幅な減便が現実になる可能性があります。バンコク・ホーチミン・ハノイ経由で旅程を組んでいる方は、この動向を注視する必要があります。
ニュージーランド航空:1,100便欠航、4万4,000人に影響
より具体的な数字として出てきたのがニュージーランド航空です。同社は5月初旬までに約1,100便を欠航させる見込みであることを発表し、約4万4,000人の旅行計画に影響が出るとしています。
同社CEOは燃料価格について、数日前まで1バレル85〜90ドルだったものが現在150〜200ドルにまで跳ね上がったと説明し、「前例のない事態」という言葉を使っています。欠航の中心は国内線のオフピーク便で、特定路線の完全廃止はしないとしていますが、すでに今週月曜から運賃の値上げを実施しています。国内線は10ドル、短距離国際線は20ドル、長距離国際線は90ドルの引き上げです。
カンタスも値上げ、「オセアニアは関係ない」では済まない
同じくオセアニアのカンタス航空も、ジェット燃料価格の急騰を受けて国際線運賃を平均5%値上げすると発表しています。中東から地理的に遠い地域であっても、燃料市場はグローバルにつながっており、影響を免れることはできません。
今起きていることを整理するとこうなります。中東・欧州路線は運休・迂回で値上がり。東南アジア系は燃料確保リスクで減便の可能性。オセアニア系はすでに値上げを実施。つまり、どの方向に飛ぼうとしても、何らかの影響を受ける構造になりつつあります。
日本発の旅行者への影響
日本から海外へ飛ぶ便への直接的な影響は、現時点ではまだ表面化していません。しかし燃料費の高騰は時間差で航空運賃に反映されます。コロナ後に高止まりが続いていた国際線運賃がさらに上昇するリスクは十分にあります。
卒業旅行・春休み・ゴールデンウィークと、これから旅行需要が高まる時期に向かって、この燃料高騰がどこまで続くかが焦点です。中東・ヨーロッパに限らず、海外旅行に行きたいと考えている方は、可能な限り早く航空便を抑えることを強く推奨します。
まとめ
中東の衝突が引き起こした燃料価格の高騰は、ベトナムやニュージーランドといった遠く離れた国の航空会社にまで波及し始めています。ニュージーランド航空は5月初旬までに1,100便の欠航を発表、ベトナムは4月以降の燃料確保すら不透明。カンタスはすでに値上げを実施しました。
中東に行けないだけではありません。どこへ行くにも、飛行機が減り、運賃が上がる——そんな局面が、足音を立てて近づいています。気づいたときには、もう海外に行くことなど到底できる状況ではないかもしれない。
旅行を計画している方は、運賃の値上がりと減便リスクを織り込んだ上で、早めに動くことを強くお勧めします。
この記事は2026年3月12日時点の情報に基づいています。燃料価格・運航状況は随時変化します。
