私たちが愛してやまない空の旅。世界中の美しい景色や文化を体験できる、かけがえのない手段です。しかし、その歴史の中には、忘れてはならない悲しい出来事もありました。今回は、民間航空の歴史上、最も凄惨だった事故の中から5選をご紹介します。
これらの事故を振り返ることで、現在の航空安全技術の進歩や、私たちが安心して空の旅を楽しめる理由を、より深く理解できるでしょう。また、犠牲となられた方々への追悼の気持ちも込めて、この記事をお届けします。
1. テネリフェ空港事故(1977年3月27日)
歴史上最悪の民間航空事故として知られるのが、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ空港で起きた、2機のボーイング747型機の衝突事故です。
この日、グランカナリア空港で爆破事件が発生したため、多くの航空機がテネリフェ空港に迂回しました。その中に、KLMオランダ航空4805便とパンアメリカン航空1736便がありました。
濃霧による視界不良の中、KLM機が離陸滑走を開始。しかし、滑走路上にはまだパンアメリカン機が存在していました。KLM機のパイロットは管制官の指示を誤解し、許可が下りる前に離陸を始めてしまったのです。
結果、2機は滑走路上で激突。583名もの尊い命が失われました。この事故を機に、パイロットと管制官のコミュニケーション方法が大幅に見直され、現在の厳格な手順が確立されました。
2. 日本航空123便墜落事故(1985年8月12日)
単一の航空機事故としては、犠牲者数が最多となったのが、この日本航空123便墜落事故です。
ボーイング747SR型機で運航されていた日本航空123便は、羽田空港を離陸後、約12分で機体後部の圧力隔壁が破壊。これにより油圧系統が完全に失われ、操縦不能に陥りました。
パイロットたちは必死の操縦を続けましたが、約30分後、群馬県上野村の御巣鷹山に墜落。520名の乗客乗員のうち、生存者はわずか4名でした。
この事故の原因は、7年前に起きた尾部着陸事故の修理不良にありました。これを受けて、航空機の整備点検体制が世界的に見直され、より厳格になりました。
3. サウジアラビア航空763便・カザフスタン航空1907便空中衝突事故(1996年11月12日)
インド・チャルキー近郊の上空で起きた、サウジアラビア航空763便とカザフスタン航空1907便の空中衝突事故。2機のジャンボジェット機が空中で衝突するという、極めて稀な事故でした。
サウジアラビア航空のボーイング747型機は、デリーからダーラーンに向かう途中でした。一方、カザフスタン航空のイリューシン76型機は、シムケントからデリーに向かっていました。
カザフスタン機が指定高度を無視して降下を続けたため、2機は高度4,000メートル付近で衝突。両機とも墜落し、乗客乗員合わせて349名全員が犠牲となりました。
この事故後、航空管制システムの改善や、衝突防止装置の搭載が義務付けられるなど、空中衝突を防ぐための対策が強化されました。
4. エールフランス447便墜落事故(2009年6月1日)
比較的最近の事故として、エールフランス447便墜落事故が挙げられます。
リオデジャネイロからパリに向かっていたエアバスA330型機は、大西洋上空で突如レーダーから姿を消しました。当初、原因の特定に時間がかかりましたが、2年後に海底から回収されたフライトレコーダーにより、真相が明らかになりました。
機体が乱気流に遭遇し、機首の検出装置(ピトー管)が氷結。これにより速度計が誤作動を起こし、オートパイロットが解除されました。パイロットたちは混乱し、適切な対応ができないまま、機体は失速。大西洋に墜落し、228名全員が亡くなりました。
この事故を受けて、悪天候時のパイロットトレーニングが強化され、ピトー管の改良も行われました。
5. マレーシア航空17便撃墜事件(2014年7月17日)
最後に紹介するのは、マレーシア航空17便撃墜事件です。これは事故というよりも、紛争に巻き込まれた悲劇と言えるでしょう。
アムステルダムからクアラルンプールに向かっていたボーイング777型機は、ウクライナ東部の上空を飛行中、地対空ミサイルに撃墜されました。乗客乗員298名全員が犠牲となりました。
当時、この地域ではウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が続いており、民間機が巻き込まれる形となりました。この事件を機に、紛争地域上空の飛行ルート設定に関する国際的な議論が活発化しました。
結びに:安全な空の旅のために
これらの悲惨な事故は、多くの尊い命を奪いました。しかし、各事故の徹底的な調査と検証により、航空安全技術は飛躍的に向上しました。
今回紹介した事故以外にも、多くの人命が奪われた飛行機事故は多数あります。現在、私たちが安心して空の旅を楽しめるのは、こういった事故を背景に、安全強化がされてきたからこそ成り立っているとも考えられます。旅行好きの皆さまには、次に空の旅に出る際、改めて航空安全の重要性を感じていただければと思います。
そして、事故の犠牲となられた方々に、心からの追悼の意を表したいと思います。
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