「海外旅行に行きたいけど、まとまった休みが取れない...」
そんな悩みを抱える日本のサラリーマンは多いのではないだろうか。有給休暇の取得率は上がってきているとはいえ、繁忙期や人手不足で、なかなか長期休暇を申請しづらい職場環境は依然として存在する。
かつて一部で流行した「エクストリーム出社」を覚えているだろうか。早朝から観光地を巡ったり、遠出をしたりして、そのまま会社に出社するという、遊び心と体力勝負の取り組みだ。この発想を海外旅行に応用すれば、実は週末だけで海外に行って、月曜朝には何事もなかったかのように出社することも十分可能なのである。
「本当にそんなことできるの?」と思われるかもしれない。しかし、深夜便や早朝便を駆使し、時差をうまく利用すれば、金曜の終業後に日本を出発し、土日をフルに海外で過ごし、月曜の朝には通常通り出社するという離れ業が実現できる。
本記事では、そんな究極のエクストリーム旅行を可能にする理想的な渡航先とフライトを厳選してご紹介する。
前提条件:今回のエクストリーム旅行の定義
まず、本記事で紹介する「エクストリーム旅行」の前提条件を明確にしておこう。
出発・帰着の条件
出発地点は東京駅周辺のオフィスを想定し、金曜日18時に退社、月曜日9時までにオフィスに到着することを条件とした。成田空港までは約1時間30分、羽田空港までは約1時間程度で到着できる前提だ。なお、今回は東京起点で考えているため、関西方面については別の機会に紹介する。
時間効率を最重視
エクストリーム旅行の核心は「限られた時間を最大限に活用する」こと。土曜の昼間や夕方に出発する便、日曜の昼頃に現地を出発する便は、貴重な週末の時間を無駄にしてしまうため対象外とした。また、月曜の昼以降に日本到着する便は、そもそも出社に遅刻してしまうため論外だ。
理想的なのは、金曜深夜〜土曜未明に出発して土曜早朝に現地到着、日曜深夜〜月曜早朝に現地を出発して月曜早朝に日本到着というパターン。このパターンなら、土曜日の朝から日曜日の夜まで、ほぼ丸2日間を現地で過ごせる。
コストパフォーマンスも重視
たった2日間の滞在で往復10万円もかかっては、費用対効果が悪すぎる。そこで今回は往復航空券が概ね5万円以内(時期により変動あり)で利用できる旅程に絞った。LCC(格安航空会社)を中心に選定しているが、OTA(オンライン旅行代理店)を活用すればさらに安く入手できることもある。セール時期を狙えば、さらにお得に予約できる可能性もあるだろう。
あくまで理論値重視
今回紹介する旅程は、とにかく海外滞在時間を最大化することに焦点を当てている。遅延リスクやバッファなどは度外視し、体力面についても考慮していない。また、深夜着便における空港から市内への移動手段についても今回は考慮していない。現実には深夜の公共交通機関が限られるケースも多いが、空港で夜を明かすも良し、エアポートホテルで一旦休むも良し、あるいは体力重視で朝便を選ぶも良し。そこは読者の判断に委ねたい。
実際に旅程を組む際には、フライトの遅延可能性や乗り継ぎの余裕、自身の体力、現地の交通事情などを十分に考慮した上で、現実的なプランを立てることを強くお勧めする。
それでは、これらの条件を満たす理想的な5つの渡航先を詳しく見ていこう。
1. 台湾(台北):エクストリーム旅行の王道
総合評価:★★★★★
台湾は、エクストリーム週末旅行において最も理想的な渡航先と言っても過言ではない。フライト時間が約4時間と短く、時差も1時間しかないため、時差ボケの心配もほとんどない。さらに、LCCの便数が豊富で選択肢が多いのも大きな魅力だ。また、深夜に台北に到着して、早速グルメやアクティビティを楽しめるので、時間的ロスも少ない。
フライト詳細
往路(金曜深夜発)
ジェットスター GK11便
成田空港 22:25発 → 台湾桃園国際空港 01:30+1着
飛行時間:4時間5分
機材:Airbus A321neo
復路(月曜早朝発)
ジェットスター GK12便
台湾桃園国際空港 02:30発 → 成田空港 06:35着
飛行時間:3時間5分
機材:Airbus A321neo
滞在時間と費用
現地滞在可能時間:約49時間(土曜01:30着〜月曜02:30発)
航空券費用:往復20,000円〜35,000円(時期により変動、セール時は15,000円程度も。OTAを活用すればさらに安く入手できることもある)
その他の選択肢
ジェットスター以外にも、ピーチ(Peach)、タイガーエア台湾、スクートなどが同様の時間帯でフライトを運航している。便数が多いため、スケジュールの柔軟性が高いのも台湾の大きなメリットだ。
2. 上海:中国旅行のゲートウェイ
総合評価:★★★★☆
上海も台湾と同様、深夜便が充実しておりエクストリーム旅行に適した渡航先だ。飛行時間は約4時間弱と台湾とほぼ同等。さらに、上海を起点に中国国内の他都市や第三国へトランジットする旅程も組みやすい。
フライト詳細
往路(金曜深夜発)
ジェットスター GK35便
成田空港 22:20発 → 上海浦東国際空港 01:10+1着
飛行時間:3時間50分
機材:Airbus A320
復路(月曜早朝発)
ジェットスター GK36便
上海浦東国際空港 02:20発 → 成田空港 06:20着
飛行時間:3時間
機材:Airbus A320
滞在時間と費用
現地滞在可能時間:約49時間(土曜01:10着〜月曜02:20発)
航空券費用:往復25,000円〜45,000円(ジェットスター、春秋航空など。OTAを活用すればさらに安く入手できることもある)
その他の選択肢
春秋航空・春秋航空日本なら最安値を狙える。セール時は往復2万円台も可能だ。他にも吉祥航空、中国東方航空などの選択肢がある。
重要な注意事項
2026年以降、トランジット目的でない入国にはビザが必要となる可能性が高い。2025年末まで実施されていた日本人向けのビザ免除措置が延長されるか不透明なため、渡航前に必ず最新の入国要件を確認しよう。
3. 香港:羽田発着で都心からのアクセス抜群
総合評価:★★★★☆
香港エクスプレス(HKエクスプレス)の深夜便充実により、香港もエクストリーム旅行の有力候補となった。最大の利点は羽田空港発着であること。都心のオフィスから約1時間でアクセスできるため、金曜夜のスケジュールに余裕が生まれる。
フライト詳細
往路(金曜深夜発)
香港エクスプレス UO623便
羽田空港 23:55発 → 香港国際空港 04:15+1着
飛行時間:5時間20分
機材:Airbus A321neo
復路(日曜深夜発)
香港エクスプレス UO624便
香港国際空港 23:55発 → 羽田空港 04:45+1着
飛行時間:3時間50分
機材:Airbus A321neo
滞在時間と費用
現地滞在可能時間:約44時間(土曜04:15着〜日曜23:55発)
航空券費用:往復30,000円〜50,000円(時期により変動大。OTAを活用すればさらに安く入手できることもある)
羽田発着のメリット
羽田空港は成田空港より都心に近いため、金曜の退社後に余裕を持って空港に到着でき、月曜の帰国後もオフィスまでの移動時間が短縮される。なお、香港到着後は空港から市内へのアクセスについて言及すると、深夜着の場合は公共交通機関が限られ、タクシーなどを使っても時間がかかるケースがある点は留意しておきたい。
ちなみに、羽田空港から東京都内へ深夜・早朝移動するには、乗り合いタクシーの「ニアミー」がコスパ良。
4. ホーチミン:東南アジアへのエクストリーム挑戦
総合評価:★★★☆☆
「中華圏ばかりじゃないか」と思われた方、お待たせした。東南アジアへのエクストリーム旅行も、ベトジェット(VietJet Air)の深夜便を活用すれば実現可能だ。良くも悪くも話題の航空会社だが、エクストリーム旅行においては非常に有能な選択肢となる。
フライト詳細
往路(土曜早朝発)
ベトジェット VJ821便
羽田空港 02:30発 → タンソンニャット国際空港 07:20着
飛行時間:6時間50分
機材:Airbus A321
復路(日曜夕方発)
ベトジェット VJ820便
タンソンニャット国際空港 17:20発 → 羽田空港 01:00+1着
飛行時間:5時間40分
機材:Airbus A321
滞在時間と費用
現地滞在可能時間:約34時間(土曜07:20着〜日曜17:20発)
航空券費用:往復20,000円〜50,000円(時期による変動が大きい。セール時は往復20,000円〜30,000円、通常時は往復35,000円〜50,000円。OTAを活用すればさらに安く入手できることもある)
ベトジェットは頻繁にセールを実施しており、タイミングが合えば往復2万円台で予約できることも。メールマガジンやアプリで情報をキャッチしよう。
エクストリーム度はやや低め
復路が日曜の夕方発のため、他の選択肢と比べると「エクストリーム度」は若干低い。日曜日を丸一日使えないのは惜しいが、その分体力的な負担が少なく、月曜早朝の到着後に少し仮眠を取る余裕もある。初めてのエクストリーム旅行にはちょうど良い難易度かもしれない。
5. マニラ:フィリピン航空で実現する穴場ルート
総合評価:★★★☆☆
最後に紹介するのは、少し意外な選択肢かもしれないマニラ。観光地としてのイメージはやや薄いかもしれないが、フィリピン航空の深夜便・早朝便を使えば、エクストリーム旅行が実現可能だ。航空券が安く予約できたときには、コスパの良い選択肢となる。
フライト詳細
往路(土曜早朝発)
フィリピン航空 PR423便
羽田空港 01:45発 → ニノイ・アキノ国際空港 05:50着
飛行時間:5時間5分
機材:Airbus A321
復路(日曜夜発)
フィリピン航空 PR424便
ニノイ・アキノ国際空港 19:00発 → 羽田空港 00:20+1着
飛行時間:4時間20分
機材:Airbus A321
滞在時間と費用
現地滞在可能時間:約37時間(土曜05:50着〜日曜19:00発)
航空券費用:往復45,000円〜50,000円程度(フィリピン航空。OTAを活用すればさらに安く入手できることもある)
フィリピン航空はFSC(フルサービスキャリア)なので、LCCよりは若干高めだが、機内食や預け荷物が含まれている分、トータルではお得になることも。
マニラの特徴
マニラは台湾や香港のような「ザ・観光地」ではないが、物価が安くコスパが良い。スペイン統治時代の歴史的建造物(イントラムロス)、近代的なショッピングモール文化、フィリピン料理やシーフードグルメ、格安のマッサージやスパなど、魅力は多い。
フィリピンは英語が公用語の一つなので、言葉の壁が低いのも利点だ。ただし、マニラは東南アジアの中でも治安面で注意が必要な都市。夜間の一人歩きは避け、タクシーは配車アプリ(Grab)を使うなど、基本的な安全対策を怠らないように。
まとめ:あなたに合ったエクストリーム旅行先は?
最後に、各渡航先の特徴を簡単にまとめておこう。
初めてのエクストリーム旅行なら:台湾
飛行時間が短く、便数が多く、比較的安全で旅行しやすい。
コスパ重視なら:台湾 or ホーチミン
航空券がセール時に激安。現地の物価も安く、少ない予算で充実した旅行が可能。
都心からのアクセス重視なら:香港・ホーチミン・マニラ
すべて羽田発なので、都心から近く、金曜夜・月曜朝ともに移動が楽。
滞在時間を最大化するなら:台湾 or 上海
約49時間の現地滞在が可能で、丸2日間をフルに使える。
穴場を狙うなら:マニラ
観光客が少なく、ディープな東南アジア体験ができる。英語が通じやすいのも魅力。
おわりに:エクストリーム旅行で人生を豊かに
「休みが取れないから海外旅行は無理」と諦めていたあなたも、この記事を読んで「週末だけでも行けるんだ!」と思っていただけたのではないだろうか。
もちろん、体力的にはハードな旅程であることは間違いない。しかし、金曜の夜に日本を飛び出し、週末を海外で過ごし、月曜の朝には何事もなかったかのように出社する...そんな非日常体験は、きっとあなたの人生を豊かにしてくれるはずだ。
「次の連休まで待てない」「今すぐ海外に行きたい」と思ったら、ぜひこの記事で紹介したエクストリーム旅行にチャレンジしてみてほしい。
さあ、あなたの次の週末は、どこの国で過ごす?
注意事項
本記事の航空券価格や運航スケジュールは執筆時点の情報です。実際の予約時には必ず各航空会社の公式サイトで最新情報をご確認ください。ビザや入国要件は変更される可能性があります。渡航前に必ず外務省や各国大使館の情報を確認してください。エクストリーム旅行は体力を要します。無理のない範囲で楽しんでください。海外旅行保険への加入を強く推奨します。
