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チベット高原が生んだ伝統の醸造酒「青稞酒」とは?比較実飲レポート

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世界各地の珍しい酒を求めて旅をする私にとって、チベット文化圏の伝統酒「青稞酒(チンカ酒)」の存在を知ったのは、旅の大きな収穫だった。謎酒ハンターとして、この酒を味わわないわけにはいかない。

中国の酒といえば、白酒(バイジウ)の強烈なアルコール度数を思い浮かべる。50度超えは当たり前、下手をすれば60度を超える銘柄もある。青稞酒も同じく高アルコールなのだろうか。それとも、チベット高原ならではの独特な味わいを持つのだろうか。

そんな期待を胸に、私は青海省の旅の中で、様々な場所で青稞酒を探し求めることになった。

青稞酒とは:チベット高原が育んだ伝統の醸造

青稞酒は、青藏高原で栽培される青稞(大麦の一種)を主原料とし、雪山から湧き出る鉱泉水を使って醸造される伝統的な酒だ。主に青海省、西藏(チベット)、四川省雲南省甘粛省などに分布している。

藏文では「羌(qiang)」と呼ばれる。高度酒(アルコール度数が高いもの)と低度酒(アルコール度数が低いもの)の2種類に大別され、浸泡、蒸煮、発酵などの工程を経て醸造される。黄酒の醸造工芸を採用しており、清香型に分類される酒だ。

その歴史は古く、唐代の文成公主チベットに入った時期まで遡ると言われ、明清時代には、青海省の互助県などで完整な工芸体系が確立された。高原の原料と独特な環境によって、「飲後頭不痛、口不渇(飲んだ後、頭が痛くならず、喉も渇かない)」という特質を持つとされている。

青藏人民の生活において、青稞酒は最も重要な伝統飲品の一つだ。節慶、婚育、迎賓などの場合には欠かせない存在である。

西寧のチベタンバーで初体験:期待を裏切る優しさ

最初に青稞酒を口にしたのは、西寧のチベタンバー「诺尔布」だった。ここの自酿青稞酒は、黄色ベースのチベタン柄が描かれた陶器のグラスに入れられていた。中に注がれた酒は清らかで透明だ。

強烈なアルコールを覚悟していたが、一口飲んでみると拍子抜けするほど飲みやすかった。生々しい発酵の香りは確かにあるが、アルコール自体は柔らかい。酸味と甘みがあって、見た目の透明さに反して、どこか濁りを感じる複雑な味わい。飲み進めると、ほんのりと青稞の穀物感が口の中に広がる。体感では7%程度だろうか。

中国の酒は容赦ないという先入観があったが、この青稞酒は違った。ゆっくりと味わいながら楽しめる、優しい酒だった。

気づけば、ほとんど青稞酒を飲み干してしまった。同席していた現地の若者が、持参していた白酒を取り出し、残りの青稞酒に少量混ぜてくれた。アルコールが弱いから、この方が美味しいはずとのこと。確かにこれにより、いかにも中国のアルコールという感じになった。青稞酒のまろやかな甘みと、白酒のパンチが絶妙に融合している。

しかし、酒飲みの筆者としては正直、ちょっとソフトすぎる味わい。謎酒ハンターとしては、もっと強烈な青稞酒を味わいたい。そう思った私は、後日、より強力なチンカ酒を求めてスーパーマーケットへ向かうことを決意した。

ちなみに、この西寧のチベタンバーでの夜は、店内に雰囲気も相まって私にとって忘れられない思い出となった。チベット文化に包まれた空間で、現地の人々と交流しながら過ごした時間は、旅のハイライトの一つだ。

海南蔵族自治州のスーパーで物色:ディープな青稞酒を求めて

諾尔布での体験から数日後、私は青海省海南蔵族自治州を訪れた。ここで、よりディープな青稞酒を探すべく、地元のスーパーマーケットへ向かった。

スーパーの酒類コーナーには、驚くほど多種多様な青稞酒が並んでいた。安いものは10%強程度のアルコール度数で、値段も手頃。一方、高級なものは1ボトル50元ほどする銘柄もある。パッケージにはチベット文字がしっかりと描かれており、ローカル感たっぷりだ。


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私が選んだのは、黄色いパッケージの「青稞酒」。チベット文字と漢字で「青稞酒」と大きく書かれたラベルには、「日奔(RIBEN)」という商標も見える。原料は山泉水、青稞、豌豆(エンドウ豆)、食用酒精と記載されている。アルコール度数は15%volで、このスーパー最安値の青稞酒だ。

この青稞酒の特徴は、ボトルの底に大麦(青稞)の粒が数粒沈殿していたことだ。なかなか生々しいタイプのチンカ酒である。アルコール度数は低めだが、これこそ、私が求めていたディープな青稞酒ではなかろうか。

スーパーで物色していると、地元の人々が日常的に青稞酒を購入している様子が見られた。チベット文化圏において、この酒がいかに生活に根ざしているかを実感した瞬間だった。

穏やかな酔いが旅を彩る

海南蔵族自治州のスーパーで購入した青稞酒は、その後の旅で何度も活躍することになる。

まず、西寧から敦煌へ向かう夜行列車の中。夜の河西回廊を眺めながら、ちびちびと青稞酒を味わった。スーパーで購入した青稞酒は、確かに諾尔布で飲んだものとは違った。より力強く、それでいてまろやかな味わい。ボトルの底に沈殿していた青稞の粒が、この酒の生々しさを物語っている。

アルコール度数15%という絶妙な強さが、青稞酒の魅力だ。白酒のように一気に酔いが回ることもなく、かといって物足りなさを感じることもない。ゆっくりと時間をかけて楽しめる、ちょうど良い塩梅なのだ。中国の寝台列車での旅は、それ自体が特別な体験だったが、青稞酒は、そんな列車旅の完璧な相棒となった。

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そして、敦煌に到着してからも、この青稞酒は活躍した。砂漠キャンプに滞在していた夜、深夜0時を回る頃に月牙泉や敦煌夜市から戻った私は、青稞酒の残りを持って真夜中の砂丘へと出かけた。

砂丘に登り、仰向けに寝転がりながら、満天の星空を眺める。ここで青稞酒を飲むのは、実に理にかなっていた。もしこれが白酒だったら、砂漠で寝転がりながら飲むには強烈すぎる。かといって、ビールでは物足りない。青稞酒の穏やかな酔い心地は、星空を眺めながらゆっくりと酔いに身を任せるのに、まさに最適だったのだ。

青稞酒をあおって程よく酩酊していると、砂漠の夜に没入していく。優しく体に染み渡る感覚。チベット高原で生まれたこの酒は、高原の厳しさと優しさを同時に宿しているようだった。

青稞酒が「飲後頭不痛、口不渇(飲んだ後、頭が痛くならず、喉も渇かない)」と言われる所以を、この砂漠の夜に理解した。翌朝、二日酔いもなく、すっきりと目覚めることができたのだ。

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余談:青稞白啤(青稞ホワイトビール)

青海省には、青稞酒以外にも、青稞を使った様々な酒類が存在する。その一つが青稞白啤(青稞ホワイトビール)だ。

スーパーで青稞酒を購入した際、この青稞白啤も一緒に買ってみた。夜行列車の中で開けてみたが、味は普通のホワイトビールに近い。青稞の風味がほんのりと感じられる程度で、青稞酒ほどのインパクトはない。ただ、これはこれで飲みやすく、旅の疲れを癒してくれた。

青稞白啤は、青稞酒よりもライトで飲みやすいため、アルコールに強くない人や、青稞酒の独特な風味が苦手な人には、こちらの方が向いているかもしれない。青海省を旅する際には、青稞酒と青稞白啤の両方を試してみるのも面白いだろう。

まとめ:青稞酒の魅力と楽しみ方

青稞酒は、チベット高原が生んだ伝統の醸造酒だ。中国の白酒のような強烈さではなく、優しく穏やかな味わいが特徴である。

ただし、バーで提供されるものと、地元のスーパーで売られているものでは、味わいに大きな差がある場合もある。リアルな青稞酒を味わいたいなら、バーでの一杯とともに、現地のスーパーマーケットで購入することをおすすめしたい。

青稞酒は、単なる酒ではない。チベット高原の歴史と文化、そして人々の暮らしが詰まった、液体の宝物なのだ。

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